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魔王軍の侵攻か!?

石が無くなった。


「こうなったら降下した所をパニックスマッシュで叩き飛ばす!……いや、ダメだ。パニックスマッシュを使うには近付かなきゃならない。赤マントに至近距離でヴァイラスの姿を見られたら、7番に乗ってるはずの俺との関係性を探られて正体まで辿り着くと消滅してしまう!どこかに石は……」


地面は草原。草だらけで石が見当たらない。アクセルビーから降りて石を探している時間は無い。


「石が無い!……うわっ!」


レッドイーターが頭の上に落ちて来た。腹部には穴が空いている。俺が投石で倒した最後のレッドイーターだ。


「ビビらせやがって……そうだ!レッドイーターを投石で投げれば当たるかもしれない!」


『説明しよう!レッドイーターは石ではないのである』


「レッドイーターが石じゃないのは知ってるよ!!……石?そうか!」


レッドイーターの胸から緑に光る魔石を取り出した。


「これなら文句ないだろ!」


レッドイーターの魔石。これは石だろ!

ダーツのように体を伸ばして急降下している最後のレッドイーターに狙いを定める。


「喰らえ!投石!」


魔石は緑の閃光となって、レッドイーターに激突した。


『ピィ……』


「直撃ぃ!」


倒した!と思った次の瞬間、無数の風の刃が現れてレッドイーターを切り刻んだ。魔石を投石で使用すると、直撃した対象を風の刃が切り刻む効果があるみたいだ。


「ま、魔石すげぇ……」


とにかく、赤マントを狙うレッドイーターは排除した。


「レッドイーターは全て倒した!振り向かずゴールを目指せ!」


「ありがとう!助かったわ!でも!」


「ん?どうした?……くそっ!あいつら!」


先頭集団が戦うのをやめて、こちらを向き横一列に並んでいる。


「私達を通さないつもりよ!」


赤マントが振り向こうとした。


「振り向くな!前だけを見ろ!」


「でも……」


「大丈夫!君を必ず1位にする!俺を信じろ!」


「分かったわ!あなたを信じる!」


とは言ったものの……困ったな……。

戦えるスキルは、投石とパニックスマッシュだけ。だが、もう石が無い。魔石も無い。これじゃあ投石は使えない。パニックスマッシュは近付かないと使えない。しかしそれだと間違いなく姿を見られる。変身を解除する瞬間を見られなくても、ヴァイラスピンクの姿で7番のアクセルビーに乗っていたのは俺だと紐付ける事はできる。その時点で俺は消滅してしまう。パニックスマッシュは使えない!しかも、そろそろ変身を解除しないといけない。観客席からも見える距離だ。……どうしよう。

先頭集団までの距離はニ百メートル。


「お前らには!ここで脱落してもらう!」


紫マントのハウラーが叫ぶ。


「ここは通さん!」


黄色マントが両手を広げた。

先頭集団は5人。チャームフォグで魅了するしかない!しかし、大勢の観客が見ている。そんな中で使っても大丈夫だろうか?……大丈夫じゃない!きっと、いや絶対に怪しまれる。森の中では見えなかったかもしれないが、ここは遮る物が何も無い草原だ。……詰んだ。自然と笑顔になる。もう諦めるしか……。


「怪我したくなければ……な、何だあれは!!?」


ハウラーの表情が変わった。顔面蒼白だ。


「た、た、大変だ!!」


黄色マントが慌てている。

何に驚いてるんだ?森の方か?……森から地響きが聞こえる。


『『『『『ドドドドドドドド』』』』』


振り向くと、木々を薙ぎ倒しモンスターの大群が森から飛び出して来た。


「げ!!魔王軍の侵攻か!?」


なんてこった!百を超えるモンスターが森から飛び出しギャリバングに向かって来ている。

緊急事態だ。


「あのモンスターの大群は何だ!」


『説明しよう!全てチャームフォグで魅了しているのである』


「え?……原因は……俺?……嘘だろ……でも、そうか!森の中で使ったチャームフォグで知らない内に魅了して、アクセルビーに言った、ゴールを目指せ!という指示が全てのモンスターに効いているのか!?」


『説明しよう!その通りである』


「どうしたの?」


「げっ!」


赤マントが振り向いてしまった。咄嗟に頭を下げてアクセルビーに密着した。


「あ、あれは何!?……た、大変!!!逃げて!」


振り向きはしたが、森から飛び出したモンスターの大群を見ている。俺の事は見えてないみたいだ。セーフ。


「に、に、……逃げろぉぉぉぉ!!」


ハウラーの悲鳴を聞き先頭集団が逃げ始めた。しかしそっちはダメだ!ゴールしてしまうじゃないか!

外壁の上もパニック状態だ。ほぼ全ての観客がモンスターの大群を見ている。我れ先にと階段へ向かっている者もいる。こちらを気にしてはいない。僥倖!!このどさくさに紛れる!


「今がチャンスだ!チャームフォグ!」


逃げるハウラー達をチャームフォグが包み込んだ。そしてそれは広がり、俺の視界も一面ピンクの靄に包まれた。見えないが、おそらく先頭集団のアクセルビーは魅了したはずだ。


「全員止まれ!!」


『『『『『『ブブブ』』』』』』


アクセルビーの羽音が静かになった。俺の指示を聞いているみたいだ。勿論、エイトも止まった。


「良いぞ!止まったな!」


次はこの霧に乗じて俺の変身を解除する。


「ナレーション変身解除だ!」


『説明しよう!変身を解除するのである』


変身が解除された。


「……消滅しない!誰にもバレてない!」


どうやら作戦は成功したみたいだ。危ないところだった。その時、風がチャームフォグを四散させた。


「うまくいった……げ!」


そこに現れたのは、停止する6匹のアクセルビーと、それに乗るテイマー達。全て魅了していた。

ハウラーの目がハートマークだ。キモい……。例外なくチャームフォグを吸った赤マントも頬を赤くして俺を見ている。


「……さ、作戦成功……」


モンスターの大群も森を飛び出した所でピタリと止まっている。俺の止まれの指示が効いているみたいだ。


「……ヴァイラスピンク恐るべし」


外壁の上の観客がザワザワと騒いでいる。皆、一様に目を丸くして森の方を見ている。誰もチャームフォグには気付いてないようだ。これも僥倖!レース続行だ。

赤マントに指示を出す。


「お前はゴールを目指して進め!」


「はい♡」


『ブィーン!ブィーン!』


「……何かごめん」


赤マントはアクセルビーの触角を捻り、鞭まで入れてゴールを目指した。次はモンスターの大群だ。


「お前達は森に帰ってくれ!」


『『『『『ドドドドドドドド』』』』』


聞こえたみたいだ。モンスターの大群は地響きと共に森へ姿を消した。


「「「「「はい♡」」」」」


『『『『『ブィーン』』』』』


「は?」


頬を赤らめるハウラー達も森へ向けて飛んで行った。


「あ〜あ……まぁ、その内、魅了が切れて戻って来るだろう。俺達はゴール目指して行くぞ!」


『ブィンブィーン!』


全て俺の作戦通りだ……。

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