ブィンブィンブィーン!
『プオォォォン』
角笛の音に反応したボトジカ達は、ピクリと耳を動かし草を食べるのをやめて顔を上げた。
『『『『『ブィーン』』』』』
ゲートが開き、アクセルビーは一斉に飛び出した。砂塵でゲートが見えなくなる。ボトジカは我先にと逃げ始めた。
「行けぇぇぇぇ!!」
ジャックバッシュの期待を込めた叫び声が聞こえる。
砂塵がゆっくりと風で流されて消えた。
「……アスカ?」
ジャックバッシュの落胆した声が聞こえる。
消えた砂塵の中から現れたのは、俺!
「砂塵と共に俺も消えたい……」
アクセルビーは羽を止めて地面に降り立っている。チャームフォグの効果が切れたみたいだ。
『ブブブブィーン』
次の瞬間、突然暴れ始めた。
「うおっ!」
アクセルビーの背中から放り出されてしまった。
「「「「「わははははは!」」」」」
観客達の笑い声が聞こえる。
「いてて……くそっ!チャームフォグ!!」
暴れるアクセルビーはピンクの靄を吸い込んだ。
『ブブブ』
大人しくなった。
「落ち着けよ!」
すかさず背中に飛び乗る。確か、落ちても乗れば問題無いと言っていた。棄権にはならないはずだ。
「飛んでくれ!」
『ブィーン!ブィブィーン!』
アクセルビーは、尻を浮き上げ前のめりで加速を始めた。
「良い子だ!」
マリスガンは、こいつは気性が荒いと言っていた。確かにそうだ。しかし、魅了してしまえば関係無い。そして最速と言っていた。それも本当らしい。みるみるうちにスピードを上げ、前を飛行するアクセルビーとの距離を縮める。
「このまま行けぇぇぇ!」
『ブブブ』
「んな!?」
急ブレーキだ。魅了が解けてしまった。
「ぐはっ!」
【ー1】
暴れるアクセルビーから振り落とされた。地面に落下してダメージを受ける。
「ハァハァ。これじゃ身が持たないぞ!ん?」
またしても観客達は大笑いだ。
『ブブブブィーン』
アクセルビーが、森へ向かって飛び去ろうとしている。
「おい!待ってくれ!チャームフォグ!」
『ブブブ』
魅了成功!
「危なかった」
急いで背中に飛び乗る。これを繰り返すしかない。
しかし、名前がないと不便だな。アクセルビーだからハチにするか……安直すぎるな……エイトにしよう。
「お前は今からエイトだ!行け!エイト!」
『ブィン!ブィーン!』
気に入ってくれたみたいだ。
再び急発進をし最後尾に追いついた。そして、追い抜こうとした時、緑マントのテイマーに話しかけられた。
「見ない顔だな!モランドは棄権したみたいだな?」
モランド?あの骨折したテイマーの事だな。
「本当だわ!あなたルーキーね?」
黒マントは女性だ。
「僕達は参加費だけで十分なんだ。お先にどうぞ!」
青マントは気の良さそうな青年だ。
「あ、ありがとう」
疑問に思いつつも礼を言って3人を追い越した。
「きっとテイマー達は、ゴールするだけで金が貰えるのかもしれない。頑張って1位になる必要はないんだろうな」
でもこれはチャンスだ!上位を競う数が減った。
『ブブブ』
またしても急ブレーキだ。あっという間に3人に抜かれた。
「チャームフォグ!」
『ブブブブィーン』
完全に止まる前に魅了する。
「初めからこうすれば良かった。魅了の効果時間は1分ってところか」
加速を始めた。そしてまた3人に追い付いた。
「減速したり加速したり何してるんだ?」
緑マントに言われた。
「もう追い付いたの?なかなかやるわね」
黒マントの女性にウィンクをされた。
「お先に!」
俺はそう言って追い越した。
「は〜い!またね〜!」
青マントが俺に向けて手を振った。
「これは本当にレースなのか?楽勝だな」
しばらくすると再び速度が落ちる。
『ブブブ』
「おっと!チャームフォグ!」
『ブブブブィーン』
アクセルビーが再び加速する。
「危なかった。でも急いでくれ!MPが切れる前にゴールしないと、チャームフォグが使えなくなったらそれまでだ!」
エーテルは3個ある。これが無くなる前にゴールしてやる。しかし既に、先頭集団が北の塔を通過して森の塔へと進路を変えた。
「速いな!だがこいつの方が速い!直ぐに追い付く!」
チャームフォグを繰り返し、北の塔を目指した。
MPが切れる前に、エーテルを飲み回復させた。
北の塔は目前だ。塔の上には人影が見える。ちゃんと通過しているかを彼等がチェックしているのだろう。
「左に曲がってくれ!」
北の塔を左に見て進路を変えると、森の塔が進路上に見え始めた。
「よ〜し!良いペースだ!」
本当に良いペースなのか?飛ばし過ぎかもしれない。アクセルビーのスタミナがもつのか?
それに俺のMPは足りるのか?
このコースは、スタートから北の塔まで約3Km。そしてそこから森の塔まで同じく約3Km。片道約6Km。折り返しを合わせると、合計約12Kmのコースだ。そして、アクセルビーの速度が60Kmだとすると、12分でゴールする事になる。
チャームフォグの効果時間が約1分だから、12回は使用する事になる。チャームフォグの消費MPは2で、俺の最大MPは15だから7回使用できる。エーテルは今使ったから残り2個。余裕でゴールできるな。
「心配なのはアクセルビーのスタミナだな。最終的にバテて飛べなくなったりしないよな?」
『ブィンブィーン』
アクセルビーが速度を上げた。
「分からない事を考えても仕方ない!行け!アクセルビー!!」
『ブィンブィンブィーン!』




