ナイスタイミング!
走り始めて数分後、アクセルビーの群れに囲まれた。3匹投石で倒して、残りは全てパニックスマッシュで吹き飛ばした。魔石を確認したところ、緑色の風属性だった。残念。
次に出会ったのはゴブリン5匹。パニックスマッシュ。
その次は、オーク3匹。パニックスマッシュ。
その次は、グレムリン2匹。投石。魔石ゲット。
その次は、ウインドウルフ8匹。パニックスマッシュ。
その次は、トリックラット2匹。投石。魔石ゲット。
その次は、ハニーアント1匹。パニックマッシュ。
その次は、レイビ3匹。投石。魔石ゲット。
その次は、初めて見るモンスターで、顔はドーベルマンのようだが、一丁前に剣と盾を持った二足歩行の犬が現れた。身長は170センチ前後だが、猫背だから背筋を伸ばせばもっとありそうだ。犬の猫背……ややこしい。ナレーションによると、Gランクで土属性のコボルトというモンスターだそうだ。
コボルト4匹。パニックスマッシュ。
そしてそれから約1分後。警告音と【CAUTION】の黄色文字だ。
「時間か……」
10秒後、変身が解除された。
ショルダーバッグに魔石を入れて、蔦の鞭を手にした。今度はこれが、どれ程使えるのか試してみたい。
「それじゃあ始めようか」
先端を握り、残りを地面に垂らす。
「……扱うイメージが全く浮かばない」
鞭なんか使った事がないから、どうすれば良いのか分からない。とりあえず数回振ってみる。
「お!」
腕の振り方に合わせて波のようにクネクネと動く。手首を捻りスナップを効かせると、地面にピシャリと当たり砂埃が舞った。
「だいたい思い通りに動かせるみたいだ」
次は狙い通りに当たるのか確認だ。映画やゲームの知識を頼りに振ってみるか……。
「確か、カウボーイがクルクル回してたな」
腕を上げて、鞭を時計回りに動かしてみる。
「出来た!!鞭術があるから思い通りに動かせるみたいだ」
頭上で円を描くようにビュンビュンと音を立てて回っている。
「映画ではこの後、輪っかを牛に……あれ?カウボーイは鞭じゃなくて投げ縄だったっけ?」
そういえば、縄の先にある輪で牛を捕縛していたな。でもまあ、ナイフや弓矢とは違って、鞭は鞭術があるからちゃんと扱えるのが分かった。
「問題無し!攻撃はできるのか!?」
試しに目の前の木を叩いてみる。
「行くぞ!」
円を描く鞭を、タイミング良く木に向かって振り下ろしたが、手前の地面に跡が付いた。
「痛っ!!」
【ー1】
跳ね返った鞭が、自分の足に当たった。ステータスを確認すると、ウインドウに表示されたようにHPが1減っていた。大したダメージじゃない。
「難しいな」
回してから攻撃するのは難易度が高いな。回さずに軽く振って狙ってみる。するとパチンと音を立てて木に当たった。力を入れなければ、割と狙い通りの場所に当たった。
「なんとかなりそうだ」
その後も色々試してみた。
振りかぶって打ったり、地面に垂らしてアンダースローのように下から打ったり、サイドから狙ってみたりと試行錯誤した中で、一番しっくりきたのが鞭の先端を左手で持ち、右腕を大きく振りつつ左手を離す。これだと狙い通りの場所に当たってくれる。サーカスの猛獣使いをイメージした打ち方だ。ただ、木に当たった後に跳ね返り自分に当たってしまう。早く練度を上げて慣れるしかない。
「なかなか良いね!武器として使えそうだ。ステータス」
俺の声に反応して、ステータスウィンドウが表示された。攻撃力12の隣に〔+3〕とある。合わせて15。鞭を装備した事により攻撃力が上がっている。しかし、それがどれ程の強さなのかは分からない。ゴブリンナイフの時は〔+5〕だった。やはりナイフよりは弱いみたいだ。
早く試したい。ゴブリンでも出て来てくれれば……。
『ゲギャギャギャ』
音を聞いて集まったのか。それにしても……。
「ナイスタイミング!」
ゴブリンが3匹現れた。
『ゲギャギャギャゲギャ』
半身になり鞭を構える。
『ゲギャッ!ゲギャッ!』
ゴブリンが飛び跳ね始めた。挑発してるのだろう。しかし既に鞭の射程圏内だ。
「相変わらずおちょくりやがって!だが、これを喰らってもまだ余裕でいられるかな?」
鞭を振り下ろす。同時に破裂音がゴブリンを襲う。
【パチン!】
『ゲギャァァァ!』
「いたっ!」
【ー1】
胸にヒット!ゴブリンは大きくのけ反った。
戻ってきた鞭が顔に当たりHPマイナス1。
「どうだ!」
『ゲ……ゲギャギャ……ギャギャ……』
驚愕の表情で胸を抑え、息絶え絶えで体を起こしたゴブリン。胸から手を離すと、そこには……。
「無傷!?」
いや無傷ではない!胸がぷくりと腫れた。
「は!?ミミズ腫れ!?かすったのか?」
射程距離を見誤ったみたいだ。今度は外さない!一歩前に出て狙いを定める。
「喰らえ!!」
破裂音と共に右肩にヒット!
またしても戻ってきた鞭が顔に当たりHPマイナス1。たいしたダメージじゃない。
今度はゴブリンの右肩に確実に当たった。どうだ?
『ゲギャャャッ!』
持っていたナイフを落とした!
「良しっ!今度こそ……」
ゴブリンの肩が小さく膨れた。ミミズ腫れだ。
「弱っ!!」
人差し指で、ポリポリと肩を掻いている。
ダメージは無さそうだ。叫び声を上げたのは、鞭の破裂音に驚いただけのようだ。
「ナレーション!鞭は武器じゃないのか!?」
『説明しよう!武器である!ダメージが与えられないのは、単純にマスターの攻撃力が低いからである』
「俺が弱いからミミズ腫れにしかならないって事かよ!それなら強い武器を使えば良い!蔦の鞭じゃダメだ!もっと良い鞭が欲しい!」
オークションが脳裏をよぎった。




