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行かせませんよ

「遅いじゃないですか!」


門の前で仁王立ちのシャロンに怒られた。


「ごめんなさい」


「日が暮れる前に帰って来るように言ったでしょ!何をしていたんですか!心配したでしょ!これから捜索に出る所だったのですよ!」


まるで、門限を過ぎて帰って来た子供を叱る母親だ。


「まあまあ、無事帰って来たんだから今日のところはゆっくり休ませてやろうよ?」


それをなだめる父親のようなアーヴァインの助け舟で何とかその場は収まった。

かに思えたが、シャロンの怒りは収まらず、ギルドでコッテリ絞られた。


その後、俺を待ってくれていた勇者一行、改めシャイニングダブルモフと遅めの夕食を取ることになり、シャロンの怒りが収まったところで事の経緯を話した。


「ハート草もデトキ草も何ひとつ採ってきてないのか!?」


それについては俺も忘れていた。ダンジョン攻略に必死だったからな。ただ、俺の名誉の為に、採ったが奪われたとちゃんと説明した。


「トレジャーハンターのラン?聞いた事ないな」


ジャックバッシュがそう答え、アーヴァインと目を合わせるが首を横に振っていた。ランはギャリバングの場所を知らないみたいだったから、ここには来た事が無いのだと思う。


「白馬の王子様か……まさかな」


ジャックバッシュが意味深な表情で呟いた。


「何か知ってるのか?」


「実はな、アスカが帰る少し前にギャリバング王から御達しが出されたんだが……三日後、第二王子が結婚式を挙げるそうだ。今日決まったみたいだぜ」


「めでたいじゃないか。それが何か?」


「それが何かじゃないだろ!今日決まって三日後に式なんだぞ!そんな馬鹿な話があるか!!」


言われてみればそうだ。


「そんなもんなのか?」


「そんなはずないだろ!王族が結婚するんだぞ!最低でも準備期間に一年は必要だろ!それなのにたったの三日だぞ!有り得ない話だ!準備をするにも来賓を呼ぶにも時間が無さすぎる!それに加えて相手はどこの誰かも分かっていない!絶対に裏がある!」


来賓を呼ぶって言っても、この世界にはこの大陸しかないはずだ。どこの誰を呼ぶんだろう?


「確かに何かあるのかも。でもどうしてそんなに怒ってるんだ?」


その質問には、笑いを堪えるように口元を押さえたアーヴァインが答えた。


「ジャックはね、レースで全財産をスッたんだよ」


「何っ!?レース場があるのか!?」


「そこかよ!まぁ、レース場はギャリバングの西エリアにあるから興味があるなら連れてってやるぞ。今から行くか?」


嘘だろ。レース場や闘技場、そしてカジノは金が貯まった中盤から出て来る娯楽施設だ。こんな序盤に出て来て良い場所じゃない。ゲームバランスがおかしいだろ。……でも見てみたいな。


「行ってみ……」


「行かせませんよ」


俺のセリフに低い声で被せてきたシャロンさん。目が怖い。怒ってらっしゃる。


「……たいけど、今はいいよ。お金も無いし」


「だから増やしに行くんだろ?」


ダメな人の考え方だ……。


「オークションもあるぞ」


「オ、オークションだって!?」


「ああ、行くか?」


オークションも序盤じゃない。金に余裕が出始める中盤、もしくは終盤に開催されるって相場は決まってる。

何たってオークションは、モンスターが落とすレアアイテム等を、金に物を言わせて競り落とす場所だ。だが、チュートリアルを終えたばかりの俺の所持金はたかが知れている。オークション会場に行っても何ひとつ楽しめない。ここは丁重に断ろう。


「興味はあるけど、さっき言った通り金が無いからやめとくよ。俺はオークションより仲間を探そうと思ってるんだ」


「仲間か。それこそ、レース場で金を稼いでオークションで奴隷を買う事だって出来るぞ」


「奴隷!?」


奴隷は序盤に出て……も良いか。そう言えば俺も奴隷経験者だった。


「奴隷か……」


両手に視線を落とすと、手枷だった金のバングルがキラリと光った。あの時の状況が鮮明に蘇る。自ずと笑顔になる。恐怖か絶望か……。

不意に、隣に座っている冒険者が床に剣を落とした。それは、南京錠が耳に嵌められた音と酷似していた。


「くっ!」


あの光景がフラッシュバックして笑顔が引きつる。耳に激痛が走った気がして、イヤーカフに触れ視線を上げるとアーヴァインと目が合った。


「何か企んでる顔をしてるね。正解だよ!ギャリバングはね、各地から貴族や豪商、そして夢見る冒険者達がお金を落としていく場所なんだよ」


何が『正解だよ』だ!ハズレだよ。勝手に笑顔になるんだから。悪巧みしてる訳じゃない。


「勝てば良いって事だろ?」


「そうだよ。でも負ければそれまで。だからギャリバング地域は、別名『灰か金』と呼ばれているんだよ」


「ハイカキンって……」


笑顔が引き攣る。恐怖か絶望か……。じゃないな。これはただ呆れてるだけだ。


「一瞬で灰になるか、それとも大金を手に入れるか。高いリスクを伴うが、チャンスを掴む事が出来れば一瞬で人生が変わる。って事だ」


違うと思う。ハイカキンって。廃課金だろ?

AIアンジュは序盤から課金させる気満々じゃないか。ゲームバランスが破綻してるだろ。


「レース場で資金を増やして、オークションでレアなアイテムや奴隷を買うのさ!」


拳を握り天井を見上げるジャックバッシュの目がGだ。それを冷ややかな目で見るシャロンの周りに冷気が集まる。激怒されてらっしゃる。


「ジャ、ジャックバッシュ!今その話はやめとこう」


チラチラとシャロンに視線を向ける。俺のアイコンタクトに気付いてくれ。


「どうしたんだ?」


どうしたんだじゃない!空気を読んで欲しい!俺の視線に気付けよ!ほら!頼む!ほら!


「出口ばかり気にしてどうした?はは〜ん。さては行きたいんだな?ったく。行きたいなら素直にそう言えよ。今から行くか?」


出口じゃない!シャロンを見てるんだ!気付いてくれ!行ける雰囲気じゃないだろ!シャロンを見てくれ!


「ん?」


やっと俺の視線に気付いてくれたが時すでに遅し……。


「行かせません」


シャロンを見たジャックバッシュの顔に霜が降りた。


「うっ!」


言わんこっちゃない。


「オークションの話で盛り上がってるところ申し訳ありませんが、そろそろ話を戻しませんか?」


そうだ!王子の話に戻そう!


「話を戻す?レース場の話かい?僕もレース場はお勧めだよ。あそこでは限定のピーチエールが飲めるんだよ」


呑兵衛勇者が!最初の結婚式の話まで戻せよ!レース場に寄り道するな!


「結婚式の話です!」


ほら……言わんこっちゃない。アーヴァインのグラスが凍った。


「あぁぁぁ……」


これはアーヴァインが悪い。


「話を戻します。ジャックバッシュ殿が言われた件ですが、それも一理あります。王族が三日後に結婚式を挙げるなど皆無」


「そ、それなら直接聞いた方が早いよね。明日、ギャリバング王に会いに行ってみる?」


「そうだな。真相はハッキリさせた方が良い」


そんな簡単に王様に会いに行けるものなの?まぁ確かに、RPGの勇者は、民家どころか王城も自由に出入りしてるよな。


「決まりだね。明日ギャリバング王に会いに行こう。アスカはごめんだけど、パーティーメンバーじゃなから一緒には行けないんだよ」


「ああ、気にしないでくれ。俺はクエストに行くよ」


仲間じゃないしな……。良いんだ!気にしてない。俺も仲間を探すから……。

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