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要はヒモって事ね

美女の後を追いつつ、気付かれないようにこっそりポーションを飲むと、みるみるうちに頬の腫れが引いた。HPがMAXまで回復した。


「俺にも効いて良かった」


ウイルスには効かないかもしれないと少し不安だったからな。ちゃんと適用されて良かった。


「この辺りで良いわね」


木々が少ない開けた場所に出た。


「何が?」


「レベル上げよ」


「モンスターもいないのに?」


「呼ぶのよ」


「呼ぶってモンスターを?」


「他に何を呼ぶのよ」


「混乱してるのか?」


「貴方に言われたくないわよ!」


「モンスターが仲間ってことは、やっぱり君はモンスターなんじゃ?」


「どうしてそうなるのよ。貴方こそまだ混乱してるのね」


拳を見せてくる。


「それはやめてくれ!正気だよ!大体モンスターを呼ぶって言われたらそう思うだろ!」


「それもそうね……でもそうなんだもの。見てなさい」


美女は握っていた拳を広げ、手のひらを上に向けた。そしてそれを口元に添えた。色っぽい。


「テンプテーション」


ふぅ〜。っと何も乗っていない手のひらに柔らかな息を吹き掛けた。益々色っぽい。


「これでよし。後は任せたわよ」


「は?何を?……ん?この音は……」


聞き覚えがある。この音は原付バイクだ。


【ブィンブィーン!】


森の奥から原付のエンジン音が聞こえて来た。


「バイクの音?この世界にもバイクがあるのか?」


「何をブツブツ言ってるの?ほら来たわよ」


ブィーンっという50CCのエンジン音が近付いて来る。その方向からは、バイクではなく蜂が向かって来ている。


「ミツバチ?」


ミツバチだ!しかし、ミツバチまでの距離は遠く離れている。それなのにこの距離から見えるのは変だ。木を縫うように飛来するそれは、こちらに近付くにつれどんどん大きくなり、目の前まで来たのは原付サイズのミツバチだった。


「げっ!デカいぞ!なんだよこいつ!」


「アクセルビーよ。弱っちい貴方でも倒せるでしょ?」


「弱っちいは余計だよっ!」


「ほら。私に見惚れてる場合じゃないわよ。さっさと倒して」


「見惚れてないよ!」


アクセルビーが美女の目の前でホバリングを始めた。攻撃される!


「危ない!投石!当たれ!」


握っていた石を投げた。


『ブィーン!』


「当たった……」


避けない。


「何やってるのよ!私が誘惑してる間は自由に操れるから平気よ。早く攻撃してよね」


美女が地面を指差すと、アクセルビーがゆっくりと着地した。バイク音はアイドリングでもしているかのように静かになった。


「誘惑?」


さっきのテンプテーションとは、チャームフォグの上位スキルか?


「……ちょっと貴方、武器を持ってないみたいだけど?」


「これだよ。投石」


おおきく振りかぶって石を投げた。また当たった。避けるそぶりはない。ダメージを受けたそぶりもないけど。


「当たったぞ!」


「遊びじゃないのよ!ふざけないで!そんなんじゃ一生かかっても倒せないわ!」


「分かってるよ!残念だがこれが俺の武器なんだよ!」


「はぁ?しっかり混乱してるじゃない」


「だからしてないって!俺には投石のスキルしかないんだ!」


「嘘でしょ?投石は気を引くだけのスキルじゃない!」


「そうなのか?でも本当なんだ」


変身時に使用すると一撃で穴が開くから攻撃スキルだと思っていた。 ヴァイラスピンクが強すぎるのか。


「全くしょうがないわね。これを貸してあげるから」


そう言って腰の剣を鞘ごと放り投げた。


「お、おい!」


顔に当たりそうな所をギリギリキャッチした。もっと優しく投げて欲しい。ダメージを受けてしまうじゃないか。

鞘から抜くと、針のように切先が尖っている。フェンシングで使う剣と似ている。


「これは……レイピアか」


「動いてる相手には技術が必要だけど、止まってるから問題無いでしょ」


問題ありだ。刺突による点の攻撃は斬撃よりも難しい。絶対に当たらない。見せた方が早いな。


「それができれば苦労はしないよっ!」


レイピアでアクセルビーを突き刺した。……つもりだった。今回も例外なくアクセルビーの直上を通過した。


「ちょっと!冗談のつもり?笑えないわ」


「俺はいたって真面目だよっ!」


今度はアクセルビーの足元の地面に突き刺さった。


「行くぞ!スピードスター!」


素早く刺突を繰り返すが、ものの見事に当たらない。


「冗談……でもなさそうね。呪われてるのかしら?……計画の修正が必要ね」


美女が手で払うような仕草をすると、アクセルビーは羽を広げ飛び上がり、再びアクセル全開で森の奥へと帰って行った。


「言う事を聞いている……凄いな」


「凄いのはあなたよ。よくもまあ、投石だけでモンスターに単身で戦いを挑もうと思ったわね」


「レベルを上げれば投石も立派な攻撃になるだろ?」


「知らないわよ。投石で戦ってる人なんて見た事ないもの」


「そうか……まあ、他のスキルを覚えるまでの辛抱だよ」


「何を呑気な事を言ってるのよ。投石じゃ倒せないのにどうやってレベルを上げるのよ」


ヴァイラスピンクで倒せるとは言えないな。


「何とかなるさ」


「全く話にならないわね。私の言う事も聞かないし」


「言う事は聞いてるだろ!ただ、スキルが無いから当たらないんだよ」


「聞いてないわよ!……本当におかしいわね……まっ、今レベル上げは無理ってことね……分かったわ。私がパーティーを組んであげる」


「へ?」


「パーティーを組めば、貴方が投石を当てたモンスターを私が倒せば、貴方にも経験値が入るでしょ」


でしょ。と言われても分からない。パチンとセクシーウィンクが飛んで来た。


「そうなのか!?パーティーを組めば、俺が攻撃さえ当てれば倒さなくても経験値が入るって事か?」


「そうね」


「何故?」


「何故ですって?それは……う〜ん……そう言うもんだからよ」


流石ゲームの世界。


「つまりパーティーでモンスターを倒した場合、仕事量に応じて経験値が配分されるって事か」


「いえ、均等に割り振られるはずよ」


「マジか!パワーレベリングができるじゃないか」


「パワーレベリング?」


この世界にはパワーレベリングの概念が無いのかもしれない。


「ああ、えっと、レベルの高いプレイヤーの力を借りてレベル上げをする事だよ」


「要はヒモって事ね」


ヒモの概念は有るのか……。


「そうなる……かな」


「良いわ。ヒモ!ついて来なさい!」


「ヒモって……」


「私はランよ。よろしくねヒモ君」


「俺の名前はア……」


「ヒモは黙ってついて来なさい」


「はい。喜んで……」

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