良い買い物をした
キャッスリンズ♡ベアを出て、今度はジャックバッシュに教えて貰った通りを目指した。
街の中心に向かってしばらく歩くと幅広で真っ直ぐな道があり、その両側には多くの露天商が屋台を出していた。食料だけではなく雑貨のような物も並べてある。
「大人気の回復薬セットは残りわずか!早い者勝ちだよ〜!」
「精神攻撃対策に必須の耐性アクセサリー各種揃えてるよ!値段は張るが命に比べりゃ安いもんだ!」
「使わなくなった武器防具、高値で買い取ります!」
店員が声を張り上げ、客の興味を惹いている。賑やかな通りだ。
正面の最奥には教会らしき建物があり、屋根の上には巨大な鐘が見える。今朝聞こえた鐘の音はあれだろう。
肉を焼く匂いがたまらない。そろそろ昼時だ。匂いはあの店からだ。店先で肉に串を刺して焼いている。焼き鳥みたいだな。
「何の肉を焼いてるんだ?」
「これがニーボアで、こっちがレッドイーター。こいつはボトジカだ。どれにする?」
レッドイーター?ボトジカ?それは確か、街に入る前に見たモンスターだ。食えるのか?試しに3種類買ってみよう。
「一本ずつくれ」
「600ギャリーだ」
一本200ギャリーか。まぁこんなもんか。
3本の串焼きをそのまま渡された。当たり前だが、袋には入れてくれないみたいだ。
「美味そうだ」
先ずはニーボアからいただきます。
「硬い……」
昨夜、城で食べたとろける肉とは大違いだ。これが庶民の味だろう。レッドイーターの肉はサッパリしていて味気ない。
「レッドイーターはまんま鳥肉だな。塩コショウが欲しい。ボトジカは食感がモチモチしていて面白い。味は普通だ」
少し物足りない。味もそうだが、量も少ないな。
隣の店は干し肉屋だ。携帯食料として買って行こう。
「これは幾ら?」
「1枚100ギャリーだ。今なら特別!10枚で1200ギャリーだよ!」
「高くなってるじゃないか」
「おっ!にいちゃん算術持ちだったか。こりゃすまねぇ。お詫びの印に900ギャリーだ」
ぼったくるつもりだったな。算術スキルが無くても頭の中でなら計算出来るんだよ。金額を声には出せないけど。
「10枚くれ」
「まいど!」
100ギャリー安く買えた。得した。
次は水だな。直ぐ隣の店先に桶や樽が置いてある。中を覗くと水しか入ってない。
「やっぱりそうだ!おばさん、この水いくら?」
「……あんたねぇ」
しまった!おばさんはダメだったか。
「お姉さん!」
「いや、それはどっちでも良いんだけどね」
「良いのかよ!」
「あんた冒険者になったばかりだろ?水の買い方も知らないみたいだね」
「え?どう言う事?」
「はぁ……それだと樽の値段も入れて2万ギャリーだよ」
「え!?そんなに!ってか、樽は要らない」
「だろ?水が欲しいなら、水袋を持って来な」
「みずぶくろ?何だそれ?」
「水を入れる袋さ。無いならこれを買うと良い」
「皮の水筒か!」
「皮じゃないよ。これはボトジカの胃袋を加工した物さ」
「お、おお。そうか……で、いくらなんだ?」
「5千ギャリーだよ。水代はまけとくよ」
高いな。だが水は必要だ。
「ああ、助かる」
金を払うと、水袋に水を入れてくれた。
「水が無くなったら水袋を持って来な。次からは水の代金を貰うけどね」
「分かった。ありがとう」
良い買い物をした。さて、これで準備は良いだろう。
と、そこへ冒険者が水袋を買いに来た。
「水袋が壊れちまった。これをひとつくれ」
「あいよ800ギャリーだ」
ん?800ギャリー?俺と同じ水袋だ。5千ギャリーじゃないのか?何故800ギャリーなんだ?お姉さんに聞いてみるか。
「ちょっと良いか?水袋は800ギャリーか?」
「そうだよ」
「俺が買ったのは、この人が買ったのと同じだよな?」
「そうだよ」
「じゃあ、どうしてこれは5千ギャリーなんだ?」
「そうだったかねぇ?」
「なっ!?そうだったかねぇじゃねぇ!そんなのぼったくりじゃないか!金返せよ!」
「馬鹿言っちゃいけないよ。あんたも納得して買ったんだろ?今更返す道理はないね」
「ぐっ……でも!800ギャリーだなんて知らなかったんだ!」
「こっちも商売だからね」
「だけど!!」
「ハッハッハッ!お前そりゃ勉強代だな」
水袋を買った冒険者に笑われた。勉強代……嫌な予感がする。
「嘘だろ……もしかして!この干し肉は幾ら!?」
干し肉を取り出して冒険者に見せた。
「ボトジカの干し肉は1枚20ギャリーだな」
「えぇぇぇ!!」
10枚買ったら200ギャリーじゃないか!900ギャリーも払ったぞ。しかも、まけてもらったと思ってた。大損じゃないか!
「じゃ、じゃあ串肉は?」
「1本30ギャリーだ」
「か……ははは……」
笑いしか出ない。3本で90ギャリーの串肉に600ギャリーも払った。ぼったくられまくりだった。
串焼き屋と干し肉屋の店主は、ニカッと白い歯を見せサムズアップしている。
「その格好からして、お前ニュービーだな。全身新品の初心者坊主はカモって下さいって言ってるようなもんだ。気を付けろよ」
「服が汚れてればいいのか?」
「そう言う訳じゃない。とりあえず商売人は吹っ掛けてくるからな。しっかりと交渉する事だ」
損はしたが、早い段階で教えて貰えて良かった。今後気を付けよう。
「そっか。気を付けるよ」
「お?素直なニュービーだな。良い心構えだ。他に聞きたい事はあるか?」
「そうだ。ここに幻属性の魔石を売ってる店はないか?」
「あるにはあるが何に使うんだ?」
「何って……普通は何に使うんだ?」
「何にも使えねぇな。ただの観賞用だろ?」
「それだ!俺の趣味は魔石収集なんだ」
「珍しいな。魔石はこの先の露天商が出してたな」
「ありがとう!」
「しっかり交渉するんだぞ!」
親切な冒険者に礼を告げて、教えてもらった露天商の元へ向かった。




