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まるで心があるかのようだ

酸味が強いヨーグルトのようなミルクを飲み干した。

アーヴァインはこっそりエールを頼んでいたみたいで、飲む寸前でシャロンに凍らされていた。


冒険者達が集まっているクエストボードの前に移動した。様々な依頼書が貼ってある。その中でとんでもない依頼書を見つけてしまいつい声が出た。


「何っ!?」


そこには、現実世界の俺の似顔絵が描かれていた。驚愕の表情で固まる俺に、ジャックバッシュが問いかけて来た。


「アスカ!この手配書の人物を知ってるのか!?」


手配書?俺はお尋ね者になってるのか?


「い、いえ知りません。何て書いてあるんですか?」


「こいつは、女神プライマリーを冒涜した罪で指名手配されているんだ。報奨金はなんと1億ギャリーだぞ。何でも良い!知っている事があれば教えてくれ!こいつの名前はワンカラーだ!」


ワンカラーだと!?そのニックネームを知っているのは女神プライマリーだけだ。俺の生死が確認出来なかったから手配書を作ったんだな。今は若い頃の姿で助かった。


「……知りません」


「そうか。何か手掛かりを掴んだら教えてくれ!絶対だぞ!」


ジャックバッシュの目がGだ。


「はい……」


「それではクエストの説明をします。アスカ殿が受注可能なクエストはGランクになります」


「Gランクは草刈りだ」


シャロンの説明に被せ気味で、腕組みをしたジャックバッシュが得意げに言った。


「草刈り?」


「ああ、薬草や毒消し草みたいな草花の採取が主なクエストになるからな」


だから草刈りと言われてるのか。


「冒険者の基本となる回復の知識を養うためだよ。簡単だけど気を付けてね。クエストは指定された期間内に未達成だった場合は、ペナルティとして報酬の半額を支払わないといけないんだよ。身の丈にあったクエストを受注しないと危険だからね。受注する時は、達成可能か十分考慮するんだよ。と言っても、Gランクは簡単なものばかりだから、未達成なんて事にはならないよ」


「了解。自分のレベルに合ったクエストを受けるようにします」


「これなんてどうですか?ハート草10本の納品と、デトキ草10本の納品。この2種類は回復薬と解毒薬の原料になります。採取場所が同じなのでセットで受けるのがお勧めです」


「いいですね。その2つにします」


「森の入り口に生えてるから簡単に採取できるはずです。間違ってもダンジョンには入らないようにしてくださいね」


「ダンジョンがあるんですか!?」


「はい。森の奥にはダンジョンがあります。ダンジョンの記憶はあるんですね」


しまった。つい聞き返してしまった。


「あ、えっと……迷宮みたいな場所でしょ?どこにあるんですか?」


「地図は持ってますか?」


初心者向けの冒険者ガイドを出した。ゼルバリウスから見せてもらった地図の方が詳細に描かれていたから、MAPのアップデートはされなかった。


「これでいいですか?」


「十分です」


そう言うとシャロンが森の中を指差した。


「この辺りにあります。難易度Fの初心者向けのダンジョンです。構造は3階層で、出現するモンスターもFランクまでしか出て来ません。でも、一人では危険だから絶対に入らないようにしてください。万が一、ハニーアントと出会った場合は、お腹は壊さないようにしてください。フェロモンが発生して他のモンスターを呼び寄せますので注意してください」


ハニーアントか……蟻のモンスターかな?


「了解」


ごめん。ダンジョン入ります。MAPにチェックを入れた。シャロンから依頼書を受け取り受付に移動した。


「あら、おひとり?……まあこのクエストなら心配無いわね。森の奥まで入らなくても手に入る物だから」


森の奥まで入るけどね。


「それじゃあ気を付けてね」


羊皮紙にハンコを押して渡してくれた。

キャッシュはヒラヒラと手を振った。相変わらずセクシーだ。羊皮紙と冊子をポケットにしまった。これで準備良し。アーヴァイン達に挨拶をして出発しよう。


「色々と助かりました」


「こちらこそ助かったよ。これは選別だよ」


アーヴァインから瓶を2つ受け取った。青と黄色の液体がそれぞれ入っている。


「ポーションですか!こっちの黄色いのは?」


「エーテルだよ」


「エーテルって?」


「MPを回復する薬さ」


「おお。それは必要ですね。でも良いんですか?」


「気にしないくて良いよ。まだ沢山あるから」


流石マジックバッグ。


「それじゃあ、ありがたくいただきます」


「もう一度言うが、俺達は今日の夕方ギルドに集合する。アスカも顔を出せよ。無事に初クエストを終了したかの確認だ。宿はこの向かいにある、『新緑の風見鶏亭』だ。何かあったらいつでも声をかけてくれ」


「了解しました。それじゃあ行ってきます」


「森は危険だから奥まで行かないでください。日が暮れる前に戻ってくるんですよ」


「絶対に無理はするな!モンスターを見たら逃げるんだぞ!それは決して恥ずかしい事じゃない!」


「まだ行けるは、もう危険だよ。引き返す勇気も大事だよ!」


「みんな心配しすぎだ!子供を見送る親か!」


過保護な勇者一行に見送られた。

出口のドアに手を掛けるが、後頭部に強烈な視線を感じる。後ろ髪を引かれる気がして振り向くと、やはり心配そうな表情で俺を見ている。


「ぷっ!」


吹き出してしまった。自然と笑顔になった。

それにしても、ゲームの世界とは思えない程バイタリティ溢れる個性豊かなNPC達だ。勇者一行を筆頭に、門番の兵士やギルドの受付嬢。王族。極め付けはドルフィーノだ。全員、俺との会話が成立している。表情も豊かで素晴らしい。流石、俺が作ったAIが手掛けた世界なだけはある。もしかしたら一人一人にAIが搭載されていて、それぞれが考えて行動しているのかもしれない。


「まるで心があるかのようだ」


そんな完璧なNPC達から心配そうに送られるのはなんだか恥ずかしいな。

照れ隠しに視線を逸らすと、昨日と同じ場所に同じ態勢で座っている冒険者と目が合った。すると突然スイッチが入ったかのように大声で話し始めた。


「そこで俺は言ってやったのさ!一昨日きやがれってな!」


「ギャハハハ!毎日来てる奴に言う言葉かよ!」


「前言撤回……」


昨日と同じ奴らだ。同じタイミング。同じセリフ。メインのキャラ以外は同じセリフしか喋らないみたいだ。こいつらが騒ぎ出すきっかけは、ギルドの入り口で立ち止まり目を合わせる事だと思う。やはりゲームの世界だ。AIの能力を持ってしても細部までは行き届かないんだろう。


「まあ、そうなるよな」


若干興醒めしたが、ここはゲームの世界だと再認識した。勇者一行に手を振りギルドを出た。その足で教えてもらった防具屋に向かう。その後、食料を調達したらギャリバングを出発しよう。

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