そんな〜
鑑定水晶に触れてしまった。
「きゃっ!」
割れた……キャッシュが悲鳴を上げたがそれも納得だ。割れたと言うよりも粉々に砕け散ってしまった。
しかし俺のせいじゃない。アーヴァインに押されたから……だと思う。
「こ、これは……」
ジャックバッシュが目を見開き固唾を飲んだ。そして恐る恐るキャッシュを見た。
「壊れ……ちゃった……ね」
アーヴァインがキャッシュから目を逸らし、俺を見て気まずそうに笑った。
「すみません……」
キャッシュの背後に、ドス黒いオーラが揺らいでいる気がする……。俺も自然と笑顔になった。恐怖だ。
「……ちょっと……アーヴァイン?……割れちゃったじゃない!どうするのよ!」
「ご、ごめん……」
キャッシュが捲し立てる。
「ごめんで済んだら勇者は要らないわよ!!何?謝ったら魔王は許してくれる訳!?ったく!勇者だからって、何をやっても許されるなんて思ったら大間違いよ!!」
「ぼ、僕は、ちょっとアスカに触っただけなんだけどな……」
それは遠回しに、俺が弱いから悪いと言いたいのか?
「はぁ!?ちょっと触っただけで鑑定水晶が割れる訳ないでしょ!!酔っ払って力の加減が分からないんじゃないの!?」
「そ、そんな風に見えたかい?」
「そう見えたから言ってるのよ!……全く成長しないんだから!」
「キャッシュ殿、申し訳ありません。これで足りますか?」
シャロンが布の袋をカウンターに置いた。
「おいシャロン!それは俺達の……」
ジャックバッシュが伸ばした手を、虫でも払いのけるようにキャッシュが叩き落とし、金の入った布の袋を笑顔で受け取った。
「シャロン様、ありがたく頂戴します」
「お……おお……あぁぁぁ……」
ジャックバッシュの目が『0』になった。どんまい。
「……それにしても、こんな事は初めてよ。寿命だったのかしら?粉々になるなんて……でも、どの道これじゃ登録は無理ね」
「替えの鑑定水晶は無いのか?」
「無いわ。本部から取り寄せるしかないわね。でも何日かかるか分からないわ」
本部?何日かかるか分からない?この大陸の他には何も無かったはずだけど?
「困ったな……僕が保証するから口頭での登録はできないかな?」
「そんなの無理に決まってるでしょ!」
「キャッシュ殿。是非ともアスカ殿の登録をお願いします」
「シャロン様。彼の職業を教えて下さい」
うおい!この変わり身の速さ!二重人格か?シャロンには甘々だぞ。
「アスカ殿の職業は……何ですか?」
シャロンにそう聞かれるが、 ヴァイラスとは口が裂けても言えない。どうする?
「えっと……」
シャロンから目を逸らすと、ジャックバッシュと目が合った。
「テイマーだろ?あの時オークを……」
「ジャック黙って!……あなたには聞いてないでしょ」
おいおい。キャッシュさん。そりゃないぜ。
「そもそも、モンスターの1匹もテイムしてない人がテイマーな訳ないでしょ!」
「アスカはテイマーだからオークをテイムして盗賊と戦わせようとしたんだよね?」
テイマー?テイム?意味が分からないが、ここはアーヴァインの話に合わせておくべきだろう。
「はい!テイマーからのテイムです」
「アーヴァイン黙って!アスカも何言ってるのよ!」
「テイマーのテイムです」
「テイマーのテイムって何よ!もうアスカも黙って!」
俺にも厳しくなった!手で口元を隠し、小声でナレーションに聞いてみた。
「ナレーション、テイマーとかテイムって何の事だ?」
『説明しよう!テイマーとは職業の一種で、モンスターを従え戦闘や労働等に使役する職業である。テイムとはモンスターを、魔法や餌等で手懐けて調教する事で、従魔として自分の配下にする事である』
なるほど。モンリベで言うところのモンスター使いと、スキルの飼い慣らすの事か。しかしあの時は、投石を使って少し気を引かせただけだ。チャームフォグは誘惑だからテイムしたとは言えない。俺はテイマーじゃないな。
「アスカ殿はテイマーです」
「テイマーですね。かしこまりました」
テイマーになった。シャロンさんって何者?
「次は僕達3人をパーティー登録してくれるかい?」
「良いけど。パーティー名は考えてあるの?」
「もちろんだ!一攫千金と書いて、ゴールデンギャリーズだ!」
ジャックバッシュ……それはダサい。
「ジャックちょっと待ってよ!輝かしい感じは良いと思うけど、さすがに一攫千金はダメだよ。もっとこう、輝くイメージを残して……アルコールシャイニングなんてどう?」
アーヴァイン……それはアウトだ。
「どっちもダメに決まってるでしょ!!受付嬢の私が口を挟むのもアレだけど、お金とお酒はパーティー名に入れないようにしなさい!そうだ!シャロン様は何かありますか?」
「そうですね……ジャスティスダブルモフなんてどうでしょうか?」
ダブルモフ?モフモフか?モフモフは正義?
「良いですね!それにしましょう!」
それもダメじゃないか?
「ちょ!せめてゴールドは入れてくれ!」
「そうだよ!シャイニングだけでも!」
「却下!ジャスティスダブルモフで登録完了したわ」
「「そんな〜」」
お察しします。




