消滅するのである
小鳥のさえずりで目を覚ました。
「ふぁ〜……こんなに長時間寝たのは久しぶりだ」
視界の端には黄色い逆三角形が浮いている。
「本当にゲームの世界にいるんだな……」
触れるとステータスウィンドウが表示された。昨日の出来事はやはり夢じゃなかった。
「それにしても体が軽い。睡眠って大事だ」
ステータスを確認するとHP、MPが全快していた。これでナレーションが使える。早速話し掛けてみよう。
「ナレーション昨日の続きだ。質問に答えてくれ。HPとMPを回復するためには寝る、回復系のアイテム、魔法、スキルを使用する。その他にもあるのか?」
『説明しよう!ヒーリングポイントのように特別な空間や設置型魔法陣等、そこに居るだけで回復する回復スポットも存在するのである』
「回復スポットか。まさにゲームだ。他にも聞きたい事は山ほどあるけど、MP上限の20回しか聞けないからな。でも、何が起こるか分からないから半分は残しておきたいし」
まずは何と言っても俺の目的である女神プライマリーについてだ。
「女神プライマリーはどこにでも目があるって言ってたよな?今も見られてるのか?」
『説明しよう!女神プライマリーはシステムを介して、あらゆる情報を取得していたのだ。しかし超亜空間での攻防で、我らがヒーローヴァイラスによりシステムに介入する力を失っているのである。したがって、今は見られてはいないのである』
「そうか!助かった!」
常に監視されているものだと思っていた。しかし安心は出来ない。力が戻りシステムに介入されると危険だ。早急に女神プライマリーを正常に戻さなければ。
「女神プライマリーを正常に戻すのが俺の使命だと認識しているんだけど、そもそもどこにいるか分からない。居場所が分かるか?」
『説明しよう!女神プライマリーを探すのも使命の1つである』
ぐっ……分からないって事だな。
「まぁ、この世界は狭い。直ぐに見つかるはずだ。その時の為にもっと強くならないといけない。レベルは上がらないから、ステータスアップも魔石から取得するしかない。それにスキルが全然足りない。やはりヴァイラスについてひとつずつ確認していこう。いや、ちょっと待ってよ……」
ひとつずつ確認するとMPが足りないな。
『説明しよう!待つのである』
「うぉい!それには答えなくていいんだよ。MPの無駄使いだ勿体ない!良いか、今からヴァイラスについて確認しながら整理して行く。間違っていたら指摘してくれ」
これならMPの無駄遣いにはならないはずだ。
『説明しよう!了解である』
「う〜。今のは許容範囲だ。まずはヴァイラスに……」
『説明しよう!我らがヴァイラスである』
「待て待て!それはお前の言い方だろ!今のは間違いじゃない。そんな事で訂正するな!……ったく、続けるぞ。ヴァイラスに変身するには……」
『説明しよう!ヴァイラスピンクである』
「そこもかよ!訂正が細かすぎる!ヴァイラスでいいだろ!」
しまった!これにも返事されてしまう。
「今のは答えなくて良い!!……危ないところだった……以降はヴァイラスピンクに関する確認だ。いくぞ。変身するには幻属性の魔石を使用する。幻属性の魔石を胸に添えてヴァイラスと唱える。そして変身と同時に魔石に秘められたスキルを3つの中から1つ選択して自分の物にする事ができる。ただし一度取得したスキルは再取得できない。つまり、3つ全てのスキルを取得済みの魔石を使用しても変身できない。それと……変身すると、どんな傷でも全て回復する」
『説明しよう!復元するのである』
「おいおいおい!その言い方は……くっ……分かった、それで良い。次に魔石のランクだ。使用する魔石のランクによって変身後の強さが違う。勿論変身時間も違ってくる。これはヒーローポイントに左右される」
ここまで間違いないみたいだ。
「次は変身してからの事だ。変身するとヒットポイントがヒーローポイントとなってマジックポイントの概念も無くなる。変身中は1秒に1ヒーローポイント消費する。スキルはヒーローポイントを消費して発動する。ヒーローポイントとは関係なく、変身中は精神攻撃を無効化する。そして変身の解除はヒーローポイントがゼロになること」
『説明しよう!ヒーローポイントがゼロにならなくとも、変身の解除を私に告げればいつでも解除できるのである』
「へ〜。自由に解除できるのか……」
何故そんな大事な事を言わなかったんだよ!って言いたいが、聞かれなかったからである!とか言われそうだからやめとこう。
「それじゃあ最後に一番大事な事だ。ヴァイラスの正体が、システム管理者を除く知的生命体に知られてしまうと俺は消滅する………………。
修正が無いってことは、残念だが間違いないみたいだ……システム管理者はプライマリーだろ?奴に知られれば、結局誰かに話をされて消滅してしまうだろう……。知られる訳にはいかないな……正体が知られれば消滅か……つまり俺は、仲間を作れない?いや、そんな事はないはずだ。もしかしたら正体が知られても、アーヴァイン達が秘密にしてくれるなら消滅はしないのかもしれない」
『説明しよう!消滅するのである』
仲間が欲しかった……。
「だが仲間は作れるはずだ。例えばゴブリン。あいつらに変身する場面を見られたが消滅しなかった。て事は、ゴブリンは知的生命体の枠には入ってないって事だろ?だったら、正体を知られたゴブリンも仲間に出来るって事か?」
『説明しよう!可能である』
「だよな」
思ったとおり、会話が出来ないモンスターに正体が知られても消滅はしない。故に、仲間にする事が出来るみたいだ。ただ、会話が成立しないから極めて不可能に近い。
しかしそれを踏まえた上で、実は、ひとつの希望を見出していた。出来る事なら避けたい、かなり抵抗のあるものだが可能性があるなら実行する。
「ちなみに知的生命体の奴隷は仲間に出来るのか?」
『説明しよう!可能である』
ビンゴ!
「だと思ったんだ!!知的生命体でも奴隷の場合、俺が変身する事を知られても、話すなと命令をすれば俺は消滅しないんだろ?」
『説明しよう!消滅するのである』
「は!?消滅する?何で?奴隷は仲間に出来るって言ったじゃないか!!どうして消滅するんだよ!」
『説明しよう!奴隷を仲間にするのは可能である。しかし、知的生命体の奴隷に命令をしても、苦痛はあるものの話したり、筆談等を行う事は可能であるためマスターは消滅するのである』
俺の聞き方が悪かったみたいだ。知的生命体の奴隷は仲間に出来るのか?の問いに対して、ナレーションは出来ると言った。それは、俺の正体が知られて消滅するか否かは関係なく、ただ純粋に仲間に出来るか否かに対しての解答だった。例え奴隷でも正体が知られたら消滅するらしい……。
「……そうか……そうだった。俺が奴隷になった時、命令に従わなくても激痛はあったが、直ぐには死ななかった。話したり書いたりする余裕があるって事か」
しかし、まだ可能性はある。『誰』の奴隷かの指定をしていなかった。
「ナレーション良く聞いてくれ。『俺』と契約した知的生命体の奴隷に正体が知られても消滅するのか?」
『説明しよう!消滅するのである』
「ダメか……唯一の希望が……」
聞き方は関係なかった。知的生命体であろうがなかろうが、奴隷であろうがなかろうが、仲間にする事は出来る。しかし知的生命体に正体を知られたらアウト。俺は消滅してしまう。シビアだ……。
だったら、ヒトを仲間にするのは無理じゃないか!正体を知られるリスクをわざわざ上げてしまう。
「奴隷を買わないのも確定した」
しかし、これには少しホッとした。出来れば、奴隷は買うのではなく解放したい。あの時一緒に捕まっていた獣人の少女も救いたい。俺の自己満だが、目標がひとつ増えた。
「勇者一行に誘われたとしても、消滅のリスクが上がるだけだ。誘われなくて良かったんだ」
昨日は散々な目に合ったが、結果として仲間にならずに済んで良かった。そもそも誘われてもいないんだけど……。




