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仲間になりたそうにこちらを見ている

窓から見える景色がとても魅力的だ。

レンガを重ね、泥で固めたようなレトロな家が並んでいる。冒険心をくすぐる街並みだ。


広い大通りには、路地を挟むようにカラフルな布が日差しから商品を守るオーニングのように通路側へ伸びている。見た事もない食べ物や雑貨が並んでいる。心が躍る。商店街のようだが、本当に誰もいない。とても静かだ。


レトロな街並みが続いていたが、ある場所を境に豪華になり敷地も広くなり始める。貴族の屋敷だろう。しかし、どの屋敷も全てのカーテンが閉まっている。ここでも誰も姿を現さなかった。


貴族のエリアを抜けると、再び壁が現れた。今度こそ城壁だ。奥には、幾つもの塔がそびえ立つ、美しく荘厳な城が見える。あれは上空から見えた城だ。


城に到着し馬車から降りると、執事長のゼルバリウスが迎えてくれた。盗賊達が乗った馬車は止まる事なく城の裏へ走って行った。これだけ広いんだ。おそらく牢屋もあるんだろう。


ゼルバリウスに案内された部屋でしばらく待っていると、アリスの両親である皇太子のロンベルトと、その妃セリーナが入室して来た。

見様見真似で片膝をついたり、頭を下げたりしていたが、感極まったセリーナ皇太子妃が、アーヴァインの手を取り涙を流して感謝の言葉を繰り返した。


ドルフィーノと1番隊の騎士達については、全員奴隷堕ちとのこと。城下町に人が居なかったのは、外に出ないようにとギャリバング王が王命を出していたそうだ。自分の近衛騎士が盗賊だった事は恥ずかしくて知られたくなかったみたいだ。


そこからは、勇者一行のストーリーが淡々と進んで行った。これには流石の俺も頭にきた。

順を追って説明しよう!


まず、これまでの経緯を何も知らないはずのロンベルト皇太子が、自分の目で見たかのように事細かに話し始めた。

誰に説明してるんだよ!何で知ってるんだよ!ゲームでありがちな『これまでのあらすじ』か!?

まあ、誰に説明しているのかは別として、話はシャロンとゼルバリウスから聞いたのだと思う事にした。


しかしその話の内容は、勇者が美化され、全ての手柄が勇者のものだった。盗賊の計画に勇者が気付かなければなんたらかんたら。勇者がいなければ娘はなんたらかんたら。勇者が、勇者が、勇者が……。

俺がいたから、おたくの娘が助かったんだ!

と言いたかったが、喋る事さえ許されない雰囲気だった。シャロン風に言うならば、俺のターンなど皆無。


挙げ句の果てには、アーヴァインとジャックバッシュに深々と頭を下げ、この街は一度ならず二度も勇者一行に救われたときた。

一度目を知らないんですけど!

俺だけ蚊帳の外か!?脇役だからか?そうなのか?不満を込めた視線とオーラをジトリと送るが、まるで俺が見えてないかのように話が進んでいる。

でもまぁ、そこまでは許そう。問題は、ここからだ。


魔拳闘士ジャックバッシュが言った。

「今回の件で二人では限界があると痛感した」

勇者アーヴァインが言った。

「信頼できる仲間が欲しいよ」


そして二人は俺を見た。


これはもう、俺に仲間になってくれと言ってるようなもんだ。ウインドウに表示されるならきっとこうだ。


『勇者アーヴァインと魔拳闘士ジャックバッシュが、仲間になりたそうにこちらを見ている。仲間にしますか?』

・はい←

・いいえ


この二択は俺にしてみれば一択!カーソルキーなんぞ動かす必要は無い!返事は勿論『はい』だ!シャロン風に言うならば、選択の余地など皆無!


俺は返事をする為に大きく息を吸った。ここでやっと俺のターンだ。

……甘かった。はい、の『は』を言った所で、ロンベルト皇太子が大声で俺のターンに割り込んで来た。


「盗賊ドルフィーノはシャロンの部下であった。故に、今回の責任はシャロンに取ってもらう」


は?何を突然言い出してるの?俺のターンを奪ってまで言う事?と思ったがとんでもない!続けてロンベルト皇太子は、シャロンから隊長の座を剥奪した。更には屋敷から追放すると言い放った。シャロン一人に全責任を押し付けるなんて横暴だ!アーヴァイン達は何も思わないのか!?

二人と目を合わせた……あれ?よく見ると二人の焦点が俺とは合っていない。アーヴァインとジャックバッシュの二人が見ているのは俺じゃない。俺の隣の人物だ。俺は、油を切らしたロボットのように、ギギギと首を動かして隣を向いた。

視線の先にいたのはシャロンだった。元々二人は俺ではなく、シャロンを見ていたのだった。


魔拳闘士ジャックバッシュが言った。

「どこかにフリーの聖騎士はいないか?」

勇者アーヴァインが言った。

「丁度今見つけたよ」

シャロンが言った。

「お酒とお金の管理は私がします」

アーヴァインとジャックバッシュが「そんな〜」と言った。みんな一斉に笑い出した。

ロンベルト皇太子がシャロンにウィンクをした。


チャンチャン♪

……じゃねぇ!!おいおいおい!めでたしめでたしか?

こんなの出来レースだ!台本でもあるのか?

絵に描いたような勇者のストーリーだ!

脇役はこんな気持ちだったのか!?


これは誰でも頭に来るだろ!


その後、俺を含めた3人に謝礼として金貨の入った袋を渡してくれた。勿論俺の袋は小さかった。ジャックバッシュの目がGになったのは言うまでもない。2人の報酬は直ぐにシャロンが回収したけど。


その後、風呂に入り、食事を御馳走になる事になった。

何度も何度も礼を言われた。

アリスはお礼より、ルー太が言う事を聞いてくれないと嘆いていた。ルー太とは、トリックラットの名前だそうだ。今はカゴの中から出せないとのこと。モンスターだから当たり前じゃないか?

余談だが、会食中にアーヴァインがエールを浴びるように飲んでいた。セリーナ皇太子妃の笑顔が引きつり始めた頃、アーヴァインのグラスをシャロンが凍らせた。ざまぁ。


そのまま一泊することになった。


一人部屋に案内された俺は、豪華なベッドに横になり勇者一行の事は記憶の彼方へ封印して、自分の置かれた状況を整理する事にした。


「さてと、まずはステータスの確認だな」


視界の右上に浮いている逆三角形に触れるとステータスウインドウが表示された。

HPの最大値は25だが、残りのHPは7で、MPに関しては1だ。でもまぁ寝れば回復するはずだ。詳しくナレーションに確認してみよう。


「ナレーション。HPを回復するためには寝る、アイテム、魔法、スキルを使えば良い。だったよな?MPも同じか?」


『説明しよう!概ねその通りである』


「了解。概ねって事は、他にもあるって事か?」


ナレーションが答えてくれない。


「ナレーションどうした?違うのか?」


返事がない。機嫌を損ねたか?しかしステータスを見直して気付いた。


「……忘れてた……ナレーションはMPを1消費するんだった」


MP表示が0だ。今の質問で使い切ってしまった。


「やっと現状確認できると思ったのに、ナレーションが使えないと意味がないじゃないか……仕方ない。他に出来る事をしよう。スキルの確認だな。取得したスキルは……」


ヴァイラススキルが1つ。【ナレーション】だ。これはヒーロー妖精から取得したものだ。かなり重宝している。消費MPは1。忘れないようにしよう。

そしてモンスターから手に入れたスキルだが、先ずは【投石】だ。唯一の攻撃スキルだ。これも消費MP1。

なんと【逃げる】もMPを1消費するんだ。MPの管理には十分注意しないとな。それから【スピードスター】と【チャームフォグ】の消費MPは2。

以上が現在取得しているスキルだ。

それと【精神攻撃無効】これはピンクに変身した時に限り発動するスキルだ。


「少ない……これだけでこの先1人で戦うのは厳しい」


俺の場合、殴る蹴るは勿論の事、ナイフや弓では戦えない。それらを扱うスキルが無いからだ。しかし、歩いたり掴んだり食べたりする事はできた。おそらく、生きる上で最低限の行動にスキルは必要無いのだと思う。計算するのに算術スキルが必要なのはショックでしかない。


「スキルが少なすぎる。仲間を探してパーティーに加入した方が良いのかな?そうして戦えるスキルを手に入れるべきだろうか」


となると、魔石だ。幻属性の魔石がもっといる。


「そうだ!店に売ってないかな?戦って手に入れるのは勿論だけど、楽して手に入るならそれに越した事はない。早速明日店に行ってみよう」


それに服も調達したい。スーツはこの世界では目立ち過ぎる。ジャックバッシュから借りた金がある。


「今後のためにも服を買う必要があるな」


決まった。明日は服を買いに行く。そして幻属性の魔石も手に入らないか確認だ。


「ふぁ〜……今日は疲れたな……」


色々な事が起こり過ぎた。

もしかしたら全て夢かもしれない。

淡い期待を胸に、重い瞼を閉じた。

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