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それにはポーションは効かないだろうね

その後、盗賊達全員にスキルが使えなくなる手錠をはめて縄で縛り上げた。事態は急を要する為、ゼルバリウスを見張りとして残し、俺を含む4人で盗賊のアジトへ向かう事になった。


盗賊達のアジトがある崖の前に着いた。

崖の中腹の蔦で覆われている場所を指差し、あそこに入り口が隠れていると言うと、シャロンが飛び上がり蔦を切り落とした。洞窟が姿を表すと『アリス様』と呟き、再び飛び上がって穴の中へ入って行った。アーヴァインとジャックバッシュも、一度の跳躍で穴まで届いた。そこで待っててくれと言われたが、そんな脇役みたいな真似はしたくない。俺も跳べるんだ。ジャンプをするが、ヴァイラスの時よりも高くは飛べず、穴には全く届かない。崖に顔を強打した。飛べる高さは1度の跳躍で精々30センチ。だが諦めない。崖の出っ張りに足を掛けよじ登り、ようやく穴の縁ギリギリに手をかけてアーヴァインに引き上げてもらった。

中はただの洞窟で暗かったが、奥へ進むと次第に明るくなり、角を曲がった所で巨大な空洞に出た。

盗賊はいないみたいだ。食料や水、武器や騎士の鎧等が置いてある。その奥に、人が入れる大きさの鳥籠のような檻があり、中に5、6歳の女の子が倒れていた。


「アリス様!」


シャロンが声を掛けるが反応が無い。


「そんな……アリス様!!!」


シャロンは瞬時に駆け寄り鉄格子を剣で凍らせ破壊した。そして女の子を抱き上げるがやはり反応が無い。アーヴァインとジャックバッシュが顔を見合わせ、そして視線を外した。

まさか……既にもう……。


「アリス様!アリス様ァァァ!!」


やはり……。悲痛な叫び声がこだまする。


「……シャロン?……どうしたの?」


お?目を覚ました。


「アリス様ご無事でしたか!!」


「寝ちゃってた?」


目を擦り欠伸をした。ただ寝てたみたいだ。魔法が何かで眠らされていたのかもしれない。


「良かった……お怪我はございませんか?」


「ケガ?無いよ……あれ?ドルノは?」


「ドルノ副隊長は……」


「あのね!アリスね、ドルノとお約束したの!あのね!ここで良い子にして待ってたら、トリックラットを捕まえてアリスのペットにしてくれるって!だから、怖かったけど一人で待ってたの!」


「そう……ですか……」


「ねぇドルノは?」


「ドルノ副隊長は……」


言えないよな。そもそも、こんな小さい子に言っても伝わらないだろう。


「アリス様を誘拐した主犯だったので捕らえました」


言っちゃうの?


「なに?どうしたの?じゃあトリックラットは?」


案の定、意味が分かってないみたいだ。


「モンスターをペットにするのは危険です」


だよな。流石にあれはペットには出来そうにないな。騙して襲ってくるんだぜ。


「シャロンはそればっかり!ドルノは約束したもん!約束を守ってくれるもん!」


「アリス様……」


ドルフィーノは口の回る男だ。幼い子供を懐柔するのは他愛のない事だったはず。しかしもしかしたら、そこに少し、ほんの少しの優しさがあったのかもしれない。

ま、脇役の俺にはどうでも良い事だけど。


無事アリスを救出して盗賊のアジトを後にした。

ゼルバリウスの元まで戻ると、盗賊達は大人しくしており、誰一人として抵抗してはいなかった。

ドルノの元へ駆け寄ろうとしたアリスの腕を掴みシャロンが止めた。泣きじゃくるアリス。誰も口を開かない。しかし意外にもドルフィーノが声を掛けた。


「アリス様。泣かないでください。お約束のトリックラットです」


そう言うと、ドルフィーノが腰に付けていたポシェットのような革の鞄を開けようとした。シャロンが剣を抜こうとしたが、それをアーヴァインが止めた。

ドルフィーノは鞄の中から、布に包まれた小さなトリックラットを取り出した。まだ目が開いていない。どうやら赤ちゃんみたいだ。


「ドルノ!ありがとう!!」


アーヴァインが複雑な表情で、『動きが悪かった原因はあれのせいか』とポツリと言った。

本当に義賊だったのかもしれない……。ま、脇役の俺には関係ないけどっ!


そうそう、一つ驚いたのが、ポーションというアイテムだ。アーヴァインがそれを飲んだ途端、左目の傷が跡形もなく消えたんだ。原理は考えない。流石ゲームの世界って事で。


それから、アリスを城へ連れて行く為、ゼルバリウスとシャロンが馬車に乗り一足先に出発した。


俺はというと、アーヴァインとジャックバッシュと共に、盗賊団を引き連れて城へ向かっている。


「教えてくれ。何故、勇者一行とシャロン隊長、それに執事長がここに来たんだ?あの状況では、主力が人質交換の場へ向かうはずだ」


ドルフィーノの問い掛けに、アーヴァインが答えた。


「アリス様が盗賊に拐われたあの時、側に居た1番隊は全員眠らされ、ドルノ副隊長も深い傷を負っていた。状況的にアリス様を守ろうとしたようにも見えた。でも、それは違うと僕は思った。理由は3つの違和感だよ。1つ目は、今までドルフィーノに襲われて生きていた者は居ない。それなのに誰一人死んではいなかった。ドルフィーノの顔を見たドルノ副隊長さえも。2つ目は、ドルフィーノには一太刀も与える事は出来なかったと証言したにもかかわらず、ドルノ副隊長の剣には血が付着していた。これは自分で自分に傷をつけたからだ。そして3つ目、ドルノ副隊長は、金の受け渡し場所には行かずアリス様の捜索に行くと言った。シャロン隊長が止めたにも関わらず1番隊を引き連れて出て行った。みんなは責任を感じての事だと言ったけど、実際はそうする事で、僕達を人質交換の場所へ行かせようと仕向けているのだと思った」


アーヴァインが立てていた3本の指を下ろし、探偵のように顎に手を当てた。

きっと今回の出来事の核心なんだろうけど、俺はそのシーンを知らないから何を言っているのかサッパリ分からない。遠くをぼんやり眺めるしかない。

あ、ニーボアがいる……。


「そして最後にもう一つ……ドラゴンの魔石だよ。これは一見関係ないようで、実は今回の目的そのものだったんだ。今日、この道を通る馬車にドラゴンの魔石が積まれている事を知っていたのは、ギャリバング王、ラノック宰相

、シャロン隊長、それに護衛を任命された1番隊の指揮を取るドルノ副隊長の4人だけだった。これを3つの違和感に当てはめたら、1つの答えに辿り着いた。つまり、今回の誘拐は、身代金目的だと思わせて、実はドラゴンの魔石を狙った犯行だったんだ。ドラゴンの魔石の価値は計り知れない。身代金の何倍もの金が手に入るから。……だよね?」


「完璧な計画だと思ったんだがな……」


あ、ニーボアが逃げた……。


「でもまぁ、アスカが来てくれなければ危なかったな」


そう言って、ジャックバッシュがりんごの芯を投げ捨てた。


「そうだね。ありがとう。改めまして、僕は勇者アーヴァイン」


あ!大きな鳥だ……。ん?自己紹介?俺の番?


「あ、アスカです」


アーヴァインはクスリと笑った。


「アスカよろしくね」


職業はウイルスです。なんて絶対に言えない!


「俺はジャックバッシュ。魔拳闘士だ」


魔拳闘士?魔法を使う武闘家みたいなものか?


「僕達二人は魔王を倒す旅の途中なんだ」


勇者一行は二人か。俺が入る余地がありそうだ。それよりも、上空から見た小さなこの大陸に魔王も居るのかよ!?


「アスカは?」


「えっと……」


職業?目的?それはどちらも言えない。


「アスカはどこから来たんだい?」


そっちか。ゲームの外の世界、日本と言っても通じないだろうな。


「あ〜……東の小さな大陸です」


「何!?海を渡って来たのか?」


しまった!海は途中で終わってるから、この大陸しか無かったんだった。


「い、いや、え〜っと、ブラックホール的な物に飲み込まれた?と言うか……転移に巻き込まれて?……飛ばされて?……みたいな……ははは……実は記憶が無いんです」


「記憶喪失か……それにはポーションは効かないだろうね」


「で、ですよね。だから、ここがどこなのかも分からないんです。良かったら教えてもらえませんか?」


「ああ。勿論良いとも。ここは【ラピンクス大陸】と言うんだ。大陸の中央には【王都ギャリバング】があって、ギャリバング王がこの大陸を治めているんだよ。今向かっている場所は王都ギャリバングの城下町だよ」


「ギャリバングは……」


そこにはヒトツメ達がいる。アイツらは許さない。しかし今の状態で出会っても何も出来ない。強くならなければ。


「もう直ぐ森を抜けるよ」


アーヴァインの声で我に帰った。

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