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そんな便利機能があったのか!

「怪我はない?」


「え?あ、ええ、かすり傷ひとつありません。それよりアーヴァインさんの傷の方が……」


ダサすぎるスキル名を叫んだ事で、勇者の名に傷が付いたのでは?


「これは気にしなくていいよ。僕が油断したんだから」


左目の瞼から流れる血を親指で拭った。俺が言いたいのはその傷じゃないんだが……。もっとデカい、深い傷を心に負っているはず……。


「守ってくれて、ありがとうございます。さっきの技は……」


どうしても言いたい。ダサ過ぎる。いや、ダサスキルと。


「2メガビットも、2メガショックも、剣を装備してないと使えないスキルなんだ。僕は槍は苦手なんだよ」


だったらどうして槍なんか持ってたんだよ!

……とは言えない。ジャックバッシュと同じく変装の為なんだろう。ここはきっと、槍が使えないのに俺を守り続けた事に賞賛するべきなんだろうけど、スキル名が強烈過ぎて他が霞んでしまう。


「そうですか」


としか言えない。


「アーヴァイン!やられたな!」


ジャックバッシュが笑いながらアーヴァインにりんごを投げた。


「おっと!」


それを受け取るアーヴァイン。いや、落とした!

左目を閉じているから遠近感が掴めないみたいだ。


「よっ!」


弾いた所を地面スレスレで俺がキャッチした。


「ひゅ〜!やるねぇ。ナイスキャッチ!勇者無傷伝説は今日までだな」


え?今まで無傷だったのか?


「そうだね。彼が僕に傷を付けた第一号だよ」


それは左目の傷?それとも心の傷?


「ごめんなさい!」


としか言えない。


「気にしなくて良いよ。そんな称号に興味は無いから」


おそらく、ダサスキルを発動する度に深い傷が付いていたんじゃないのだろうか?俺なら恥ずかしくて口に出すなんて無理だ。


「うっ……うう……」


首を垂れるドルフィーノに、剣の切先を向けるシャロン。


「盗賊ドルフィーノ!貴方を……連行します!」


「ちっ……殺せ」


「信じていたのに……」


「くっ……」


空気が重い。


「名前を教えてくれるかい?」


流石勇者!話題を変えてくれた。って、俺の名前を聞いてるのか!


「あ、アスカです」


「良い名前だね。アアスカ、早速だけどアジトまで案内してくれるかい?」


天然か?アアスカのどこが良いんだ?本当に良い名前だと思ったのか?


「アスカです!」


「おっとごめんね。アスカ。それで、頼めるかい?」


「実は……必死に逃げて来たので、詳しい場所が分からないんです」


「え?」


アーヴァインの眉間に皺が寄る。


「今何と言った!?……ク、ソ、ガキィィッ!!だったら俺達は無駄に戦ったって事か!?……いや」


ドルフィーノの目に光が戻った。


「……くくく……あ〜はははは!!……聞いたな?取引続行だ!俺に手を出すな!!」


しまった!だが本当に道が分からないんだ。


「俺を見逃せ!そうしたら姫様は無事に返してやる!それと、あの積荷も全て頂く!」


「そんな取引に応じる訳がないだろっ!」


ジャックバッシュがドルフィーノの胸ぐらを掴んだ。


「やめて下さいジャックバッシュ殿!……仕方ありませんね……承知しました」


「シャロン隊長!正気か!?こいつの言う事を信じるのか?」


ジャックバッシュが止めるが、方法はそれしかないだろう。頼みの俺が、今いる場所を良く知らないから……。


「あ〜はっは〜!形勢逆転だな!ほら!この手をどけろ!!」


「くそっ!」


ジャックバッシュが舌打ちをする。せめて地図さえあれば……。

いや、待てよ。ステータスに【MAP】の表示があったな。あれは使えるのか?


「ナレーション。ステータスにあるMAPの使い方を教えてくれ」


小声でナレーションに確認する。


『説明しよう!ステータス画面の【MAP】は、マスター自身が確認した場所が詳細に表示されるのだ。また、地図を見る事でインストールする事ができるのである』


「そんな便利機能があったのか!」


視界の右上にある逆三角形をタップしてステータス画面を表示する。そして【MAP】の項目をタップすると、現在地が表示された。

中央の青い光点が自分の位置みたいだ。周囲に白い光点が4つある。言わずもがな勇者一行だ。そして赤い光点が無数にある。これは敵。すなわち盗賊団で間違いない。

そして道が表示されている。しかし、通っていない場所は途中で切れてその先は表示されない。自分の目で確認していないからだろう。地図を手に入れると全て表示されるみたいだ。


「マジでゲーム!」


それとは別に、森の奥へ蛇行した表示がある。これは俺が通って来た道だ。しかしその先は、ウインドウには入りきらず画面が途切れている。


「縮小する為には……」


2本の指を摘むように縮めると、ウインドウが縮小表示され、森の奥まで表示された。指を広げると逆に拡大表示される。


「なるほどね!」


途中、崖の洞窟に【ドルフィーノ盗賊団のアジト】の表示がある。そこから先も蛇行した表示が続いて、超亜空間から脱出した場所には【ダイビングポイント】と表示されている。


「ダイビングポイントって……そうだ!ヒトツメ達の居場所までの道のりは表示されないのか?」


『説明しよう!職業【ハッカー】及び【勇者】時のデータは、女神プライマリーのデバッグにより削除されたのである』


「ヴァイラス以降のデータしか無いと言う事か。まぁ、それだけでも十分だ。あとは……」


「おいクソガキ!!ブツブツうるさいぞ!」


あら。聞こえてたみたいだ。しかしこれで問題解決だ。だが、どう伝えれば良いだろうか。突然分かった!と言っても信じては貰えない。ここは……。


「あの……この周辺の地図はありますか?」


「ございますよ」


ゼルが懐から羊皮紙を出した。流石一流の執事。ナイスです!


「はっ!無駄なことを!」


勝ち誇った顔のドルフィーノの胸ぐらを掴んだまま、ワナワナと震え、うるせぇ!と叫ぶジャックバッシュ。その手は絶対に離さないでくれ。


「こちらでよろしいですかな?」


俺を見て皮肉な笑みを向けるドルフィーノを横目に、地図を受け取り地面に広げた。ラフデッサンのような大雑把な地図だ。


「ん〜」


ステータスの【MAP】を確認すると、黒かった場所がラフデッサンの地図にアップデートされた。しかし、俺が見て来た場所は、航空写真のように綺麗に表示されたままだ。


「なるほど……」


超便利だ。


「どうだ!分かるか?」


ジャックバッシュが俺を覗き込む。


「はい。ここです」


「なっ!!」


ドルフィーノが愕然とした表情で後ずさる。


「間違いないみたいだな」


「くそがっっ!!」


ドルフィーノがジャックバッシュの手を払い、シャロンを突き飛ばし逃走した。


「2メガビット」


ダサい言葉を残して、アーヴァインが消えたかと思うと、ドルフィーノの目の前に現れた。


「なんなんだあのクソガキは!あいつが現れなければ完璧な計画だったんだ!」


「そうかもね。あっ!でも、あの馬車にはドラゴンの魔石は乗ってないよ」


「な、何だって!?」


愕然とするドルフィーノ。

何だって?ドラゴンの魔石?……何の事?


「別ルートで2番隊と3番隊が護送してるよ。そろそろギャリバングに着く頃じゃないかな?」


「俺達は……何の為に……」


ドルフィーノが膝から崩れ落ちた。二重、三重に作戦を重ねていたみたいだが、何が何だかサッパリ分からない。だが、これで本当に全て終わった。俺の主役の座も終わった……。

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