だからなんだ!
今度こそ終わった……。
目をつぶろうとするが、迫り来る剣から目を離せない。自然と笑顔になる。
「何っ!!?」
ドルフィーノの困惑する声と共に剣の軌道がズレた。剣は、腰を抜かす俺の右側を通過して、勢い良く地面に突き刺さった。
「何が起きた?」
ドルフィーノを見ると、俺の左の地面を睨み付けている。
「これは……ペーパーナイフ!?」
ゼルバリウスの壊れたペーパーナイフが地面に落ちている。ドルフィーノの剣に当てて軌道を外したんだ!
ここぞと言うタイミング!ペーパーナイフを馬鹿にしてごめんなさい。
「おのれぇ!執事風情が邪魔をしおって!!」
「邪魔をしているのはあなたでしょう。彼を守る役は私が務めると言いましたよ」
少し離れた所に、ゼルバリウスが姿勢を正して立っている。神々しい。
「ゼルバリウスさん!!」
つい声が出てしまった。
「お気軽にゼルとお呼び下さい」
右手を胸に添えて頭を下げた。彼こそ紳士だ。
「え?」
そこで気付いたが、盗賊団は1人も立っていなかった。既に全て終わっていた。
「ううっ……」
うめき声を上げる盗賊達。誰一人として死んではいないみたいだ。
ジャックバッシュは馬車の荷台に座り、りんごのような果物を齧っている。自分の仕事は終わったという意思表示か。格好良い!加勢はしないみたいだけど……。そこはアーヴァインを信頼してると受け取るべきか。
「盗賊ドルフィーノ。武器を捨てて降伏しなさい。残っているのは貴方だけです。既に勝機は皆無」
シャロンは悲しそうに眉をひそめた。
「ば、馬鹿な……」
ドルフィーノが膝から崩れ落ちる。力の差を見せつけられて諦めたのだろう。ガクリと音がするかのように首を垂れた。あっけない幕切れだ。
チラリとアーヴァインを見ると、折れた槍を捨て、まぶたから流れる血を拭った。そして俺を見て頭を下げる。
「申し訳ない!油断した!」
90度のお辞儀をした。俺が怪我をさせてしまった事が原因なのに。
「そんな……頭をあげてください!悪いのは俺です!」
そもそも俺が弱いのがいけないんだ。
「勇者ぁぁぁ!武器を捨てたなぁぁぁ!!!」
ドルフィーノが顔を上げた。満面の笑みだ。
「わははははは!!」
諦めてなかった!チャンスを窺っていたのか!剣を上段に構えた。
「これで終わりだ!」
まずい!渾身の一撃だ。これを喰らえば真っ二つになってしまう。しかしアーヴァインは武器を持っていない。俺を守れない。
「アーヴァイン殿!」
シャロンだ。シャロンが剣を投げた。シャロンさんナイスです!それを見たアーヴァインが口角を上げる。
剣は弧を描いてヒュンヒュンと回転しなが飛んで来る。
「え?」
しかしそれは、明らかに間に合わない。アーヴァインは飛来する剣を見ている。何をしてるんだ!この場合、視線はドルフィーノから外さずに、剣は見ないでキャッチするのがセオリーだろ!こっちを全く見ていない!自分で避けろって事か?スピードスターで避けるしかない。
「死ね!スラッシュ!!」
「スピードスター!」
素早く動いた俺を追って来た。ダメだかわせない!と思った時、またしても金属音と共にドルフィーノの剣の軌道がズレた。
「おのれ執事ぃぃぃ!!!何度も邪魔だてしおって!!」
ペーパーナイフだ。
「貴方こそ何度も言わせないでください」
幾つ持ってるんだろう?ゼルバリウスの特技は武器の投てきだな。お陰で助かった。
「ゼル!!」
「はい。なんでしょうか」
「ありがとう!」
「お気になさらず」
右手を胸に添えてお辞儀をした。最高の執事だ。
「さあ。どうする?」
アーヴァインが剣をキャッチして構えた。ヒヤヒヤした。足の力が抜けそうだ。実際に足の力が抜けたドルフィーノがたたらを踏む。
「……分かった……降参……だっ!!!」
またしても諦めたふりだ。ドルフィーノが俺の正面に回り剣を振り上げた。
「スラッシュ!」
懲りない奴だ。
アーヴァインは動かない。それはゼルバリウスの投擲を信頼しているからだ。ほら、案の定ペーパーナイフが剣の軌道を変えてくれた。もう諦めるべきだ。俺には当たらない。
しかしドルフィーノは下卑た笑みを浮かべ、素早く俺の左側へ移動した。
「くくく……かかったな!!」
かかった?どう言う事だ?慌てて周囲を確認する。
「そんな……」
ドルフィーノが移動した場所は、俺が邪魔でゼルからは死角。ペーパーナイフは投げられない。そしてアーヴァインの剣では届かない位置。この土壇場で、状況がひっくり返された。とうとうこれでゲームオーバーか……。
しかしアーヴァインを見ると、残った右目でウィンクをした。いや両目をつぶったから、ただの瞬きかもしれない……。しかし、表情に余裕がある。もしかしたら、この状況を更にひっくり返す、奥義のようなスキルがあるのかもしれない。勇者と言えば光属性。光の速さで動けるって事か!?
「これで終わりだ!スラッシュ!!!」
下段から剣を斬り上げた。速すぎて見えない!頼む!アーヴァイン!!!
「遅い!2メガビット!!」
は?
「馬鹿な!!」
刹那、アーヴァインが目の前に現れた。
「2メガショック!」
ドルフィーノの腕に稲妻を纏った剣を突き刺した。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
ドルフィーノに電流が流れる。
「これでもう武器は持てないよ」
「くそっ……」
ドルフィーノが剣を落とした。
終わったみたいだ。
しかし、勇者のスキル名が2メガビットって……。
光回線……。属性的にはそうかもしれないが、光属性のスキル名が、インターネット回線速度なのはダサすぎる。しかもギガが主流の今、メガは遅過ぎる。キロファイアの、キロってもしかしてそう言う事?キロ、メガ、ギガの順に威力が増すのか?
そして2メガショック……。雷属性も使えるようだ。
だからなんだ!




