表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/110

ドルフィーノ盗賊団だと!?

「お〜い!助けて〜!!」


馬車に向かって両手を振りつつ、道へ向かう斜面を駆け降りた。格好悪い?何度も言わせないでくれ、これが俺の助かる道だ。


「来るな!ここは危険だ!!オークに囲まれてるのが見えないのか!!」


左目に眼帯を付けた長髪の護衛が俺を心配してくれている。右目は乱れた長髪で隠れていて表情は確認できない。しかしなるほど、あれがオークか。ブヒブヒ言っているが、近くで見ると豚というよりも猪の様な顔立ちだ。毛深いし。……どっちでも良いか。


「待って!彼の後ろを見てよ!盗賊だ!!」


もう一人の若い護衛が、血相を変えて叫んだ。革の帽子を深めに被っていて、こちらも表情は確認できない。


「何っ!?追われてるのか!くそっ!この状況に追い討ちをかけやがって!最悪だ!」


マジで申し訳ない。護衛は2人。しかし2人共既にボロボロだ。剣や槍は折れ、鎧も原型を留めていない。それでも1人で4、5匹を相手にしている。ジリ貧だ。

あっちに行っても助からないかもしれない……。

振り向くと盗賊達が腕組みをして眺めている。


「高みの見物か。護衛がやられた所で馬車を襲う気だな。そうだ!良い事思い付いた!お〜い!助けてぇ!」


良い事思い付いたんじゃないかって?言ってる事とやってる事が違うって?問題ない。これは作戦だ。


『ブヒッ!』


ほら、そうこうしている内にオークが気付いて俺目掛けて走り始めた。


「良いぞ!こっちに来い!」


しかしオークが馬車の後方を通過した時、興味が俺から荷台の積荷に移った。


「おい!どこ見てるんだ!?こっちだ!おーい!」


ダメだ。オークはチラリとこちらを見たが、視線を戻し馬車の荷台に手を掛けた。


「ダメか!それなら、喰らえ!投石!」


『ブヒィッ!』


手に当たった!しかし ヴァイラスの時とは違い、レベルが低い生身の俺ではダメージを与える事は難しいみたいだ。ただ、怒りは買ったみたいだけど。それも全て狙い通り。


「来い!!」


俺の作戦は、オークを引き連れて盗賊達の元へ行き戦わせる。咄嗟に思いついたにしてはこれ以上無い良案だ。というかこれしか無い。


『ブヒッブヒブヒッ』


「あれ?」


しかしオークはブヒブヒと鼻を鳴らし、積荷に夢中でこちらに向かって来ようとはしない。


「こっちを見ろ!投石!」


涎を垂らし、荷台に乗り込もうとしていたオークの鼻っ柱に石がヒットした。


『ブヒヒヒッ!』


鼻を押さえてギロリと俺を睨んだ。良いぞ!


「ギリギリ当たった!」


『……ブヒィィィィッ!』


「よし怒った!こっちに来い!」


『ブヒッ……』


「来ない!?」


ダメだ。好物でも乗っているのか?とうとう荷台に乗り込んでしまった。


「こうなったら、チャームフォグ!」


オークの頭部を桃色の霧が包んだ。それが全て、鼻から吸い込まれた。


「良し!これで魅了したはずだ!こっちに来い!」


『ブフォォッ!』


しかしオークの背後から、眼帯の護衛が剣で切り掛かった。


「ハァハァ。邪魔するな!」


俺にそう告げると、荷台から転げ落ちたオークにとどめを刺し、再び残りのオークの元へ戻って行った。


「あ〜あ。せっかく魅了したのに……邪魔したわけじゃないんだけどな……」


もう一人は、槍が折れてただの棒となった武器で奮闘している。次はそっちのオークだ。今度こそ盗賊の元まで連れて行く。


「投石!」


後頭部にヒットした。


『ブヒッ……』


オークは無傷だ。しかしこめかみに血管が膨れ上がった。怒りをあらわにしてこちらに向かって来る。


「良いぞ!着いて来い!」


Uターンして盗賊の元へと向かう。振り向くとちゃんと着いて来ている。


「来た!今度は上手く行ったみたいだ!」


怒り狂うオークが俺に向かって猛突進を始めた。


『ブヒブヒッ!』


だが、また馬車の後方で立ち止まった。そして鼻を鳴らし荷台に手を掛けて乗り込もうとしている。


「おい待て!そっちじゃない!投石!」


オークの肩に当たり、振り向かせる事に成功した。


『ブヒッ……』


「イライラするだろ?かかって来い!」


『ブヒブヒ』


しかしまたしても荷台に向きを変え、乗り込もうと手をかけた。


「おいおいおい!こっちに来いよ!仕方ないチャームフォグ!」


チャームフォグがオークの頭部を覆った。それを吸い込んだと同時に甲高い声を上げた。


『ブフォォォォ!!!』


まるで断末魔の雄叫びだ。


「くっ!なんて声だ。耳が壊れる!……まさか何かのスキルか!?」


これはスキルか?いや、それにしては何かおかしい。雄叫びの後、オークの目はグルリと白目になり、ゆっくりうつ伏せに倒れた。そしてピクリとも動かなくなった。


「ん?」


背中には折れた槍が突き刺さっている。革の帽子を被った護衛が背後から攻撃したようだ。本当に断末魔の叫び声だったみたいだ。俺の作戦が……。


「ハァハァ。ウロチョロしないでよ!」


またか……邪魔をしてるつもりはないんだけどなぁ。


「しまった!ぬ、抜けない!」


背中に深く突き刺さった折れた槍が抜けないみたいだ。オークを足で押さえて力の限り引っ張っている。その背後から別のオークが帽子の護衛に襲い掛かろうとしている。気付いていない!


「危ない!!投石!」


『ブキィァッ!』


目にヒットした。オークは持っていた槍を投げ捨て目を押さえて叫び声を上げた。威力が弱くても流石に痛いだろ。


「どうだ!!こっちに来い!」


『ブフォォォッッ!!』


オークは目を押さえて叫びまくっている。


「君は逃げろ!」


「任せてください!投石!」


ナイスコントロール!反対の目に当たった。


『ブキィィィィィッッ!!』


両目に石が当たり視界を失い、かつ、耐え難い激痛に襲われたオークが暴れ始めた。その先には馬車がある。


「あっ!そっちはダメだ!」


革の帽子を被った護衛が叫ぶ。そして、両目を押さえたオークが馬車にぶつかった。大きく揺れた馬車から樽が転げ落ち、それをオークが踏み壊すと中から液体が溢れ出した。


「あ〜あ、何やってんだよ勿体ねぇ!」


盗賊の親分が首を振っている。こっちはそんな事気にしている場合じゃない。しかし、この鼻を突くようなアルコールの匂い……。


「この匂いは……酒か!」


「君は何をしてるんだよ!酒に決まってるだろ!勿体ない!ハァハァ……頼むからもう何もしないでくれ!」


護衛の人まで勿体ないって……。


『ブギィィ!』


オークは酒で足を滑らせ、荷台に向かって倒れ込んだ。あの巨大で倒れると……。


「馬車が壊れるっ!」


と思ったが、皮の帽子の護衛がオークの槍を拾い脇腹に突き刺した。


「ブヒィィィ……」


オークは地面に倒れて絶命した。


「ハァハァ。エールあと何匹だ!」


息を切らした革の帽子の護衛が、肩で息をする長髪の眼帯男に聞いた。


「これで終わりだ!」


エールと呼ばれた眼帯の護衛が、最後のオークの喉元に折れた剣を突き刺した。俺がバタバタしている間に全て倒したみたいだ。本当に邪魔をしていたのか……。


「あ〜……」


「エール!!」


何かを言いかけた眼帯の男は、エールと大声で名前を呼ばれ、慌てて口元に手を当てた。


「すまない」


「良いよ。それより……ハァハァ……エールは無事?」


「……何とかな……しかし次の団体さんが順番待ちだ……ギャリー、行けるか?」


ギャリーと呼ばれた革の帽子の若い護衛は、オークの槍を地面に刺してもたれ掛かった。


「やるしかないよね。ハァハァ」


ボロボロのエールとギャリーは、盗賊団を見て苦虫を噛み潰したような表情だ。本当に申し訳ない。


「おい!あいつらは何者だ!?」


眼帯のエールは鬼の形相で俺に聞く。


「と、盗賊です!」


「やっぱりそうか……君は仲間かい?」


革の帽子のギャリーも同じく鬼の形相だ。


「ち、違います!全くの赤の他人です!」


その時、俺に向かって矢が飛んで来た。


「うわっ!」


死ぬ!と思った瞬間、エールが剣で弾いてくれた。


「あ、ありがとうございます!」


「ハァハァ。それを言うにはまだ早い……くそっ!」


肩で息をするエールが顔を上げると、盗賊の頭が拍手をしながらこちらに向かって歩き始めた。


「オーク退治お疲れさん」


「「「「「へへへへ」」」」」


他の盗賊達も笑いながら近付いて来る。あっという間に30人ほどに囲まれた。


「俺達はドルフィーノ盗賊団だ。積荷は全ていただく!」


「ドルフィーノ盗賊団だと!?」


エールの表情は見えないが、きっとこの世の終わりのような顔をしているだろう。


「大物が出て来たね……」


ギャリーが肩を落とした。


「知ってるんですか?」


「知ってるも何も、盗み、誘拐、人身売買、そして殺し。金の為なら何だってやる悪党だ……被害は甚大だが、誰もドルフィーノの顔を見た者はいない」


やはり盗賊団を見ているエールの表情は分からない。しかし声が震えている。


「見た者はいない?」


「そう……見た者はみんな殺されるからね。極悪非道の盗賊だよ」


ギャリーが歯ぎしりをした。


「毒のある説明痛みいる。そう言う事だ。俺がそのドルフィーノだ。命が惜しくば積荷を全て置いて行け……と、言いたいところだが、俺の顔を見た奴は生きて返す訳にはいかない。悪いが死んでくれ!悪いと思ってないけどな!」


「「「「「わっはっははは!」」」」」


盗賊達が笑い声を上げた。助かりそうもない。

最悪だ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ