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待てと言われて待つ馬鹿がいるかよ!

それにしても、【逃げる】のスキルを取得したのは大きい。生身の状態ではきっと重宝するだろう。今の俺の最強スキルだ。

しかし幻属性の魔石は残り2個だ。ジリ貧に変わりない。もっと幻属性の魔石を手に入れないといけない。

そう思いつつしばらく走ると、木の影に隠れて何かを覗いているゴブリン達を見つけた。こちらからは丸見えだ。背後から襲うのは気が引けるが油断している方が悪い。


「あいつらの魔石は頂いておくか」


ゴブリンナイフを地面に刺し、石を拾いゴブリンに向かって投げた。


「投石!」


『ゲギャ!』


見事、胸を突き抜けた。

異変に気付いた残り3匹のゴブリンがこちらを向いた。


「投石!」


狙い通りとまではいかないが全てのゴブリンに穴を開けた。百発百中だ。


「楽勝!」


最初に倒したゴブリンの胸を確認すると、魔石が粉々に砕けていた。


「あ〜……やっぱり投石も考えものだな」


他3匹のゴブリンから魔石を取り出した。


「おっ!これは無事だ。ただ、袋が欲しいな……」


変身中はポケットが無いため魔石を保管することができない。右手に地面から抜いたゴブリンナイフ。左手にデーモンスパイダーの魔石1個、そしてゴブリンの魔石3個だ。


「それにしてもこいつらは何を覗いてたんだ?」


ゴブリン達が隠れていた木から同じように覗いた。


「ん〜……何も無いけどな」


目の前には切り立つ崖だ。蔦や苔がびっしり生えている。特に何かあるという訳でもない。

と思った矢先、地面から約3メートル離れた崖の中腹から蔦をかき分け人が現れた。


「人だ!!あんな所に洞窟が……」


背後には大きな穴がある。洞窟みたいだ。そしてそこからガラガラと縄梯子が降りてきた。


「ハシゴ?」


縄梯子を伝って男が降りてきた。ここがどこなのか知っているかもしれない。呼びかけてみよう。


「お〜……」


やっぱり呼びかけるのを止めた。ギザール達の事もある。用心しないとな。


「しかしあんな場所で何してたんだろう?」


男の格好は……冒険者か?身なりは割と綺麗にしている。腰には、美しい紋章入りのシルバーに輝く剣を携えている。


「格好は綺麗だが……まさか盗賊なんじゃ……」


もう1人降りてきた。似たような格好だ。その奥からもゾロゾロと降りてくる。30人を過ぎた頃、身なりの良い男が出てきた。


「それで?獲物は予定通り通過するのか?」


「はい。頭の情報通りです」


頭……マジで盗賊かよ。獲物って事は人を襲うつもりか?そんな事はさせない。被害が出る前にここで食い止める。


「行くぜ!」


木から飛び出そうとした瞬間、あの音が聞こえ始めた。


「こんな時に……」


ビービーと警告音が鳴り始め【CAUTION】の黄色文字。変身解除10秒前だ。今からじゃ全員倒すのは間に合いそうもない。解除を待って再び変身するにも5分間のクールタイムが必要だ。ここは隠れてやり過ごした方が良さそうだな。


「後を追って5分後に変身するしかない」


10秒後、変身が解除された。持っていたゴブリンの魔石をポケットに入れ、デーモンスパイダーの魔石を1つ握り締めた。


「これでいつでも変身できる」


その後もゾロゾロ降りて来た。総勢50人の大所帯だ。弓や杖を持つ者もいる。まるで軍隊だ。一体何を襲うつもりだろう?

最後の一人が降りた所で、頭が剣を抜いた。


「ここまで来ればもう後には引けん!だが……この作戦は必ず成功する!情けはかけるな!馬車の積荷は全て奪う!行くぞぉ!」


剣を掲げると、他の者達も剣を抜き声を張り上げた。


「うおぉぉぉ!!!」


盗賊確定だ……。ここはやり過ごすのが一番だな。


「その前に……そこの木に隠れているな?何者だ!?出て来い!」


なにぃ!?どうしてバレた!!スキルか!?マズイ!……いや、俺じゃない可能性もある。他の木にゴブリンが隠れているのかも……。


「聞こえてるだろ!」


頭の声の後に、背後の木にスコンと何かが刺さる音がした。俺で間違いないみたいだ。


「姿を見せろ!」


「くそっ!今出て行くのは死にに行くようなもんだ。逃げるしかない!」


意を決して走り出した。


「逃げる!」


【逃げる】を取得していて助かった。


「いたぞ!あそこだ!」


「追え!」


「逃すな!」


「捕まえろ!」


盗賊達が追いかけて来る。


「ひ〜〜!!追いかけて来た。スピードスター!」


「何っ!?あいつ速いぞ!!」


「待て!!」


「待てと言われて待つ馬鹿がいるかよ!スピードスター!」


脱兎の如く逃げ出した。

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