ヒーローポイント?
「ふぅ……それじゃあステータスの確認をするか」
気を取り直してステータスをタップすると、透明なウインドウが表示された。
名称 : ヴァイラス
種族 : コンピュータウイルス
分類 : ピンク【精神攻撃無効】
属性 : 幻属性
ランク : A
HP : 129/7000
攻撃力:7000
防御力:7000
魔 力:7000
素早さ:7000
ヴァイラスキル : ナレーション
スキル : ー
種族欄にコンピュータウイルスの表示だ。
「やっぱりウイルスじゃねぇか!!」
だが、ステータスが跳ね上がっている。またもや文句を言ってる場合じゃない。しかし、7000もあったHPが残り129か。
「ギリギリだったみたいだ。生身の体だったら10000でも死んでたな……ん?」
落ち着いて考えてみたら、あの時の選択は、どれを選択しても変身したはずだ。だったらHP×1000にしとけば良かった!!もしかしたらヴァイラスのHPに加算されていたかもしれない。7000×1000!?
「……過ぎた事だ。考えるのはやめよう……」
それにしても、自分の体力が数値化されているなんて。
「まさしくゲームだ……はぁ……ピンクってのは、間違いなくヒーロー妖精と契約したからだな」
『説明しよう!間違いないのである』
「分かってるよ!」
HP×1000……。
「……まぁ良い。分からない事だらけだからナレーションがあれば助かるからな」
でも、突っ込み所があり過ぎて何から聞けば良いのか……。
「とりあえず、職業ヴァイラスについて教えてくれ」
『説明しよう!我らがヒーローヴァイラスに変身することで真の力を発揮するのだ』
我らがヒーローって、ウイルスのくせにアンジュにとってはヒーローなんだな。
「それは分かった。で?全ての数値が7000になってるのは変身したからだろうけど、どうしてMPの欄が無くなってるんだ?」
『説明しよう!我らがヒーローヴァイラスに変身する事で、スキルはHPを消費するようになるのである。つまり、MPは必要ないのである』
「必要だろ!スキルを使う度にHPを使うのか!?HPはヒットポイントの事であってるよな?ヒットポイントが0になったらゲームオーバーだろ!」
『説明しよう!その通りである。しかしそれは生身の時である。我らがヒーローヴァイラスに変身すると、HPはヒットポイントではなく、ヒーローポイントになるのである』
「ヒーローポイント?」
『説明しよう!ヒーローポイントが0になると、変身が解除され元の姿に戻るのである』
「何だよそれ!……いや待てよ。じゃあスキルを使わなければこのままの姿でいられるのか?」
『説明しよう!ダメージを受けてもヒーローポイントは減るのである。そして何もしなくとも、1秒に1ヒーローポイントが減って行くのである』
「何ぃ〜〜!!本当だ!いつの間にか残り28まで減ってるぞ!どうすれば回復するんだよ!」
『説明しよう!ヒーローポイントを回復する術はないのである』
「無いのかよ。っておい!今1秒に2ヒーローポイント減ったぞ!」
『説明しよう!ヴァイラスキル【ナレーション】は変身時は1ヒーローポイント、通常時は1マジックポイントを消費するのである』
「しまった!そうかナレーションもスキルだった!」
【ビーッ!ビーッ!ビーッ!】
【CAUTION】
直後、けたたましく警告音が鳴り始めた。同時にCAUTIONの黄色文字が視界に表示された。
「これは何の音だ!?」
『説明しよう!ヒーローポイントが0になったため、我らがヒーローヴァイラスの強制解除10秒前である』
「10秒前か。ヤバイ!……いや、ヤバくないのか?解除されても特に問題ないんだろ?」
『説明しよう!問題ないのである』
「そうか良かった。この格好は恥ずかしいから丁度解除したいと思ってたとこだった」
10秒後、体中を覆っていたヴァイラスが、ピンクの帯状になり胸元へと集まると、小さな三角形に並ぶホクロに戻った。
「ふぅ……大体分かった……ん?」
体が軽い気がする……。
「腹がへこんでる!」
手を見ると、肌にツヤがある。もしかして、ヴァイラスと融合して別人に生まれ変わったのかもしれない。
「……いや違う。俺の体だ……若返ったのか?」
顔が見えないから分からないが、どうやら20歳前後に若返ったみたいだ。
「ステータスを確認してみるか」
ステータスを確認するが年齢の表記はない。しかし、HPの最大値が25に戻っていてMPの表示もあった。
「他の欄は……うおっ!」
突然足元に矢が突き刺さった。
「何だ!?」
矢が飛んできた方向には、木に隠れてこちらを窺うゴブリンがいる。
「何匹いるんだよ!!」
ヒュッと風切音が耳元を通過した。