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I’m ready!

着地の衝撃で地面が爆砕し轟音が響き渡る。不思議と痛みは感じない。やっぱり死んだのか?


「ハァハァ……」


砂埃が舞う中、自分の体に触れて驚愕した。


「い、生きてる!あの高さから落ちて無傷だなんて……夢なら覚めないでくれ!」


『説明しよう!夢ではないのである』


「分かってるよ」


視界不良で自分の体が見えないため細部までは分からないが、おそらく骨折はおろか擦り傷ひとつない。アドレナリンが出まくっているからそう感じるのか?

いや、違う!助かったんだ。これはヴァイラスに変身したからだろう。ヴァイラスに感謝だ!ヒーロー妖精にも!

ただ、見た目がアルミホイルマンなのはちょっと……ちょっとどころじゃない、今は砂埃で見えないが、あの姿はかなりダサい。けど死ぬよりはよっぽどマシだ。


砂埃が風に煽られ、次第に消えていく。

落下の衝撃で巨大なクレーターが出来ていた。その中央に俺はいるみたいだ。


「助かった……とりあえずステータスを確認して……ん?」


ステータスを表示させようとした時、自分の右手が視界に入った。ピンク色だ。


「は?どうしてピンクなんだ!?」


シルバーのアルミホイルマンじゃないのか?慌てて自分の体を確認した。

ピンクだ……全身が眩ゆいばかりのピンク色の金属で覆われている。


「ピンクはないだろぉ〜!」


何故だ?何故シルバーじゃないんだ?どうしてピンク?せめて赤にして欲しかった……。

いやいやしかしそんな事は言ってられない。俺が着地して出来た巨大なクレーターを見上げて首を振る。


「わがままなんて言ってられない。色よりも性能だ」


右の人差し指で、左腕を弾くと硬質な金属音が響いた。

雲の上から落下しても無事だったんだ。金属の種類までは分からないが強度は確かだ。

全身のフォルムは、ツルンとした体系だったアルミホイルマンとは違い、強化外骨格のように筋肉を模した金属で覆われている。腹筋はシックスパックに割れている。体を捻ってみると、細部までフィットしていて金属とは思えないほど違和感なく滑らかに動く。


「パワードアーマー系か?」


『説明しよう!ヴァイラスーツである。ヴァイラスーツを纏う事で、全ての能力が驚異的に上昇するのである』


「ウイルスのスーツかよ!もっと他に言い方があるだろ!……まぁ、そこは目をつぶろう。金属なのに軽くて動きやすいし」


肩や肘、胸元、腰回り、膝には、それぞれ薄ピンク色のプロテクトが付いていて以外と格好よかった。ブレスレットの金色が良いアクセントになっている。


「顔が見えないな……」


鏡が無いので確認できないが、触った感じでは悪くない。おそらく頭部全てを覆うヘルメットを被っている。首のスーツと繋がっていて外す事は出来ない。

首の後ろから腰にかけては、ゴツゴツとした背骨を模した金属の並びが特徴的だ。


「なかなかスタイリッシュなデザインだ。結構良いかも」


ピンク色はちょっとあれだけど、強度が抜群だから目をつぶろう。


「この胸筋も悪くない」


スマートだが、胸筋に関しては分厚く張り出していて格好良い。と思っていたが、再度体を見直してとんでもないことに気付いた。


「……な、何ぃ〜〜!!!」


格好良いと思っていた腰のプロテクトは、なんとスカートの形をしていた。しかも、超ミニ。金属のくせにヒラヒラと風になびいている。

そして極め付けは胸元のプロテクトだ。胸筋を模しているものだと思ったが、綺麗な弧を描くように膨らんでいる……。


「おっぱいだぁ〜(涙)」


そしてナイスバディだ……恥ずかしい!両手で胸を隠すように押さえて天を仰いだ。


「夢なら覚めてくれぇ〜!」


『説明しよう!夢ではないのである』


「いちいち言われなくても分かってるよ!!」


よりにもよって全身ピンク。金属で覆われたスーツは胸とスカートがなければ格好いいんだが。ヒーロー妖精のようにナイスバディだ……。

恥ずかしいから早く元の姿に戻りたい。


「ん?」


ふと見上げると、クレーターの淵から何者かがこちらを覗き込むように見ている。


『ゲギャ』


ナイフを持った気味の悪い緑の小人と目が合った。ゴブリンだ。


「またお前か!」


しかし今の俺は前回とは違う。若い頃の体だし、空から落下しても無傷のヴァイラスーツを纏っている。恐怖は無い。準備は出来ている。「Are you ready?」ヒトツメの言葉が頭をよぎる。

いや違う!俺、準備良し!


「I’m ready!」


地面を蹴り駆け出した。

ドン!という音と共に足跡を残し、ゴブリン目掛け一直線に向かって行く。体が羽のように軽いとはこの事だ。だが速すぎる。一瞬でゴブリンとの間合いを詰めた。


「うおっ!どいてくれ!ぶつかる!」


鼻水を垂らし、穴という穴が開いたゴブリンの醜い顔が眼前に迫ってきた。


「止まれぇぇぇぇぇ!」


ブレーキをかけるためにゴブリンの手前の地面に勢い良く両足を突き刺した。


『ゲギャッ〜〜……』


止まったは良いが、その反動で地面が捲れ上がりゴブリンを乗せたまま空の彼方へ飛んでいった。ナイフだけがこの場に残った。


「ヴァイラス強すぎだろ……」


脅威は一瞬で消え去った。

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