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AIがプログラマーを語るな!

ステータスを表示してハッキングに触れると、枷が数字と記号の羅列に変換された。


「消す事は簡単みたいだが……戒めとして残しておきたい」


自分の不甲斐なさと、ヒトツメ達に与えられた屈辱を忘れないためにも手枷は形を変えて残そう。耳の南京錠もだ。

片手でキーボードを叩き、今度は鎖を離さないように慎重にエンターキーを押した。


「これで良し!」


両手を繋ぐ鎖は千切れ、手枷は金のブレスレットに、耳の南京錠は金のイヤーカフに変換した。なかなか格好いいが、アラフォーのおっさんにはあまり似合わないな。


『王よ。急ぎ女神プライマリー対策を進めるのです』


緑に輝く妖精だ。いかにも王の側近。宰相って感じの出立ちをしている。


「ちょっと待ってくれ!俺の見た目も変えれるのか?それに奴隷の烙印を消して、奪われた恐怖と絶望の表情も取り返したい!」


『王のハッキングに不可能の文字はございません』


「よし!」


俺の見た目はエルフ族のイケメンにしよう。ボロボロのスーツも修復したい。キーボードを叩く度に、自分の体を新たな数式が駆け巡る。同時に、奴隷の烙印を消す作業も行う。しかしこれには幾つものロックがかかっており思いの外面倒だ。面倒だが、ハッカー的には楽しくて仕方ない。


「これが最後だな」


最後のロックの解除に取り掛かったその時、黒い武者妖精が目の前に飛んできて片膝を突いた。


『親方様!火急の報告……ござる!』


一瞬ノイズが走った。


「おい!今声が途切れなかったか!」


『超亜空……外部から攻撃を受け……でごさる!』


「攻撃だって!何が起きてる!?」


今度は、ピンクの妖精が目の前に飛んで来て、武者妖精をヒップアタックで押し除けた。ナイスバディだ。おっと今はそれどころじゃなかった。


『説明しよう!女神プライマリーである』


おお!ピンクの妖精はヒーローのナレーションか!ナイスバ……それどころじゃない!


「えっ!?まだ何の対策もしてないぞ!」


目の前の空間にノイズが走る。それが激しくなった直後、空間に4本の指が現れた。


『説明……よう!……ライマ……け……して……』


ピンクのヒーロー妖精が何か言ってるが、ノイズがそれの邪魔をする。

更に空間を裂き反対の指が現れ、両手がそれぞれ左右にこじ開けるような動きをするのと同時に空間に亀裂が走った。


『私の世界から出て行け!』


亀裂が広がり、そこから女神プライマリーが姿を現した。


「お前の方がここに入ってきたんだろ?何しに来たんだよ!」


『黙れワンカラー!システムにハッキングしたな!』


「何っ!?どうしてそれが……」


そうか!この世界は女神プライマリーが管理しているんだった。ハッキングをしたから俺の居場所が特定できたのか。

こうしちゃいられない!データの書き換えを急がないと。恐怖と絶望の表情もまだ戻せていない。

再びキーボードを叩き始めた途端、鬼の形相に変わった。


『させるものかぁぁぁ!!』


女神プライマリーは、人差し指を素早く動かし何かを空中に描き始めた。まさかあれは!


「プログラミング!?その数式はデバッグ!!」


『御名答』


デバッグは、バグを停止または正常に戻すコードだ。やばい!


「くそっ!だが間に合った!」


今打ち込んでいる数式は完了した。エンターキーを押すと、俺の体が発光して若いイケメンエルフに変化した。スーツも新品同様。サイズもピッタリだ。もちろん奴隷の刻印は消えている。


「よし!」


『残念』


女神プライマリーの指先から、デバッグコードが俺に向けて放たれた。


「しまった!」


左手でデバッグコードを振り払ったが、手の平に当たり吸い付くように離れない。そしてそのまま体の中に入ってくる。


「う……くっ!」


体が動かない。部分的にエルフの姿から人間へと戻っていく。


『あなたは所詮ハッカー。プログラマーの私に勝てるとでも思ったの?』


「AIがプログラマーを語るな!」


『ここでは私が主役。不必要な脇役には退場してもらうわ』


『いかん!親方様を死守するでござる!』


武者妖精の一声で、全ての妖精アンジュが、女神プライマリーに飛び掛かる。


『邪魔よ!』


女神プライマリーが腕を振り上げ叩き落とそうとするが、妖精アンジュ達は上手くかわしていく。


『鬱陶しい羽虫ね!一網打尽にしてあげる!いでよヴァイラス!』


「ヴァイラスだって!?」


女神プライマリーが手をかざすと床に不気味な魔法陣が現れ、そこからドロドロとした鉄塊が出現した。銀色のそれは、かろうじて人の形を保ってはいるが、まるで腐っているかのように溶け落ちて行く。


『ヴァイラス殿!何故そのようなおぞましき姿をしておられるのか!?』


あれがヴァイラス?


『この死に損ないの事?私が魔獣として契約してあげたの』


『なんと……』


『ゴゴ……ガゴ……ゴ』


『言葉まで失ったのでござるか』


『ヴァイラス。殺ってちょうだい!』


『ガゴゴ……ォォォ』


ヴァイラスが口を開くと、銀色の光が集まり始めた。


『いかん!親方様逃げられよ!』


そんな事言われても、デバッグコードの影響で体がピクリとも動かない。ピンチワン……。

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