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お主もなかなかの悪よのう

「ハッカー!?そういえばスキルの欄がハッキングだった」


『そうです。ハッカーはマスター用として作成した特別な職業です。そしてハッキングはスキルの枠に縛られません。ですのでスキルを封じられても関係なく使用できます』


「つまりハッカーになれということか?」


『はい。今この超亜空間でしたら職業をハッカーにお戻しする事が可能です。承諾してくださいますか?』


「にわかに信じがたいな……それに職業ハッカーって……やっぱり勇者の方が……」


『そうデスね。それが女神プライマリーの思惑デス。勇者は物語の主人公デスが、ハッカーは脇役または悪役。しかしハッカーであれば、この世界のシステムに介入する事が容易に出来るのデス。つまりマスターの好きなように設定変更が可能デス』


「おお!……例えば?」


『例えば、王のレベル99999。対する女神プライマリーのレベルは1。そして女神プライマリーの目の前に転移。しかし女神プライマリーは動けない。なんてどうですかな?』


「パーフェクトプラン!チートオブチート!脇役最強!」


『お主もなかなかの悪よのう』


「お前が言うな」


『それでは承諾してください』


「承諾する!」


AIアンジュを象る緑に光るグリッド線が、薄くなると同時に俺の体が淡く光った。


「これでハッカーに戻ったのか?」


『ハッカー……戻った……』


お?片言だな。恥ずかしがり屋のエルフだな。


「案外簡単だったな」


『ステータス……確認……』


「スキルを封じる手枷をしているからステータスの確認は出来ないんじゃないのか?」


『ハッカーは特別な職業だと言ったばかりでしょ?それとも瞬きの度に忘れるの?記憶力は鶏以下?』


相変わらずの毒舌だ。口を尖らせ渋々視界の右端にある逆三角形に触れた。そしてステータスを表示させる。


「ハッキングが使えるぞ!」


グレー表示じゃない。


『早速デスが、そこにあるハッキングを選択するのデス。そして私に意識を集中するのデス』


言われるがままハッキングをタップした。そしてグリッド線で象られた巨大な顔に意識を向けると、グリッド線が数字と記号の羅列に変換された。


「これはプログラミングか!?」


『そう……プログラミング……』


見慣れた数式だ。それにしても単調で雑だな。組み直したい!プログラマーの……いや、ハッカーの腕が鳴る。


「試しにアンジュの外見を変えても良いか?」


『マスターのお好きなようにしてください』


「そうだなぁ……それじゃあ名前の由来のとおり、天使にするか」


『天使とな?天女の妾が?ふむ……それも良き』


キーボードがホログラムのように目の前に浮かび上がる。そこに新たな数式を打ち込んで行く。


「鎖が邪魔だな」


両手首の枷を繋いだ鎖がキーボードに当たり思うように入力できない。左手で鎖を手繰り寄せ、右手だけでタイピングを行う。少々時間がかかるが着々と入力が完了する。新たな数式が、顔だけアンジュのグリッド線を下から上へと更新して行く。


「前面のインプットはこんなもんだろ。背中には翼を生やしたいけど、この向きだと見えないな」


『スクロールするのじゃ』


言われるがままアンジュに手をかざし、本のページをめくるように動かすと、クルリとアンジュが回転した。指を上下左右に動かせば、その方向に回転する。


「……ハッカー最高……ふふふ」


『ククク……』


笑みが溢れる。きっと今の俺の顔は悪役のそれだろう。でも仕方ない。楽しくてしょうがないんだ。


「よし!これで完成だ」


『我待新姿喜』


入力が完了し、軽快にエンターキーを叩こうとした時だった。


「あっ!」


左手に握っていた鎖を離してしまい、キーボードの幾つかに当たった。しかし、時すでに遅し、エンターキーを押してしまった。右川君がいたら間違いなく詰めが甘いとなじられていただろう。


「だ〜!!やっちまった!」


『マスター!!』


眩しい!突然アンジュが輝いた。


「なっ!……」


直後、アンジュは弾けて幾つものカケラとなりハラハラと散ってしまった。


「消えた……そんな……」


やってしまった。復元はできるのか?アンジュが居た場所に意識を向けるが何の反応も無い。


「失敗した……」


途方に暮れていると、ハラハラと散るカケラが不規則に動き始めた。


「ん?」


その中の紫色に輝く小さなカケラが目の前に飛来した。


『今、失敗したって聞こえたけど?あんたの存在自体が失敗じゃない?踏み潰すよ』


話しかけてきたのは紫色のカケラ。よく見ると、それは小さな妖精だった。紫色の髪を三つ編みにし、セーラー服を着たその格好は、毒舌JKに良く似ている。


「アンジュなのか?」


『他に何があるの?きゃっ!』


そこに黒い光が飛んで来て毒舌妖精を突き飛ばした。


『親方様!拙者にまでこのような素晴らしき体を与えて下さるとは感無量でござる!』


漆黒の鎧兜を纏った妖精が目の前で片膝をついた。和風の武者に妖精の羽は不釣り合いだな。


「お、おう!似合ってるな」


『有難き幸せ!』


他にもカラフルな光が縦横無尽に飛び交っている。きっとあれは全てアンジュなんだろう。キーボードに鎖が当たった時は肝を冷やしたが、結果オーライ。天使じゃないが、当の本人達は妖精で問題ないみたいだ。


「この枷をどうにかしたいな」


『ハッキングで外せるでござる』


「そうか!」


ハッカー最高!

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