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どろん

『グルルルルル』


9匹全てのウインドウルフが戦闘態勢に入った。


『『『ワオォォォォン!!』』』


吠えるのと同時に体の周囲に風が巻き起こる。


「魔法!?させるか!チャームフォグ!」


捉えた。

しかしチャームフォグが霧散した。


「何っ!?」


ウインドウルフ達の体を覆う風の膜がチャームフォグを無効化しているようだ。


『ワオォォン!!』


風を纏ったまま一斉に向かって来る。速い!レイビを抱えたままでは戦えない。


「お前は逃げろ!」


『キュ〜!!』


「待て!!そっちじゃない!」


何を思ったのか、レイビがウインドウルフに向かって飛び出した。

ウインドウルフ達も口を開けてレイビに襲い掛かった。


「やめろ〜!」


『キュウ!』


食われる!と、思った時、レイビが空中でクルリと回転すると『どろん』という音と共に煙に包まれた。

直後、飛びかかっていたウインドウルフ達が地面に叩きつけられた。


『キャイン!』


「え?」


一体何が起こった……。

続け様に残りのウインドウルフ達が地面に叩きつけられた。


『キャイン……』


全てのウインドウルフが絶命している。それは一瞬の出来事だった。


「な……」


俺は自分の目を疑った。

砂塵の中から現れたのは、レイビではなく、ヴァイラスピンク。目をこすってみたが、間違いない。目の前にいるのはヴァイラスピンクだ。


「ヴァイラスピンク!?」


何故か、犬のように、お座りをして嬉しそうに尻尾を振っている。


「は?尻尾?……尻尾が生えてる!」


お座りをするヴァイラスピンクには、狐のようなフサフサで白い尻尾が生えている。先端がピンク色だ。


『キュウ!』


ヴァイラスピンクが鳴いた。


「その声はレイビか?」


『キュウキュウ!』


尻尾をブンブン振っている。


「お前も変身できるのか!?」


『キュ!』


「そうか!……言ってる事がなんとなく分かる気がする」


『キュウ!』


目の前にいるヴァイラスピンクが、ジャンプをしてクルリと回ると『どろん』と煙に包まれてレイビに戻った。


『キュ〜!』


レイビは俺の肩に飛び乗り、ペロペロと頬を舐めた。可愛い。


「お前凄いな!助かったよ。ありがとう」


『キュウ!』


「でも、どうして尻尾が生えたんだ?しかもヴァイラスピンクに変身したのは何故だ?……ナレーション分かるか?」


『説明しよう!レイビのスキル、エナジードレインは対象のHPをわずかに奪い、自身のHPをわずかに回復するのだ。しかし、レイビのHPが三割以下の状態で、エナジードレインを使用してモンスターを倒した場合に限り、レイビはイチビに進化するのだ。進化の際にはスキル【変化】を新たに取得して、エナジードレインで倒した相手に変化する事が可能になるのである』


「イチビ!?しんか!?へんげ!?……おいおいおい!それはそうと、サラッと俺をモンスター扱いしたな」


進化したってことは、モンスターをエナジードレインで倒したって事だろ?それは俺?


『キュウ!』


肩の上でクルクルと駆け回り、お座りをして首を傾げた。可愛い過ぎる。


「つまり、瀕死のレイビは、エナジードレインを使ってヴァイラスピンクを倒した事で、イチビに進化して【変化】を覚えたって事か……」


『説明しよう!その通りである』


「だとすると、こいつはヴァイラピンクを倒した初めてのモンスターって事になるな……でも待ってくれ!それじゃあ変身が解除された時、【WARNING】と表示されたのはどうしてだ? 今まであんな表示は無かったぞ!ヴァイラスピンクが倒されたからか?いや、奪われた?……まさか!エナジードレインで、HPと一緒にヴァイラスピンクも吸い取られれたのか!?もうヴァイラスピンクに変身できないって事はないよな?」


『説明しよう!時間経過でHPが0になり変身が解除される場合は【CAUTION】と表示され、ダメージを受けてHPが0になった場合は【WARNING】と表示され変身が解除されるのだ。その際、急激にHPが失われるため、行動に制限がかかってしまうのだ。変身については今まで通り可能である』


「行動に制限……か、だから動けなくなったのか。でもまぁ、変身ができるなら良かった……!?待て待て待て!イチビに今エナジードレインを使われたら俺は死ぬのか!?」


『説明しよう!エナジードレインの上限は、イチビの最大HPである20ポイントなのだ。ただし例外として、今回はマスターが許可した為、HPを全て吸収しイチビに進化したのである』


「許可?……ああ、好きなだけ吸い取って良いと言ったな……でも言葉は分からないはずだろ?」


『説明しよう!従魔契約により、多少の意思疎通が可能になったのである』


「本当か!そういえば、なんとなく言ってる事が分かる気がする。ん〜、そうだな……試しにヴァイラスピンクに変化してみくれ」


『キュウ』


イチビは肩から飛び降り、『どろん』と煙に包まれた。現れたのは尻尾の生えたヴァイラスピンクだ。


「おお!イチビ最高だよ!」


『キュ〜ウ』


「でも普通に考えると、相手のHPを全て吸収しようとすると抵抗されるはずだ。レイビは最弱モンスターなんだろ?そんなレイビがエナジードレインを使おうとしても、返り討ちに合うのが目に見えているな」


『説明しよう!その通りである。したがって、レイビが進化したのは今回が初である』


「この世界に1匹のモンスターか!」


レイビが最弱と言われているのは、進化方法が激ムズで今までに例が無く、進化する事を誰も知らなかったからだろう。


『キュウ!』


ピンク色の尻尾がとても良く似合っている。


「元気になって良かったな」


『キュウ!』


「もう元に戻って良いぞ」


『どろん』という音と共に煙に包まれ、イチビの姿に戻った。


『キュッ』


肩に飛び乗った。

イチビは言葉を話せないから知的生命体の枠には入らない。俺がヴァイラスだと知られても消滅しないのがその証拠だ。言葉は話せないが、従魔契約により、多少の意思疎通ができるようだ。


「お前可愛いな。俺と一緒に行くか?」


『キュ〜』


嬉しそうにひと鳴きすると肩でクルクルと回った。


「そうか。だったら名前をつけないとな」


『キュ〜』


「イチビだから、イチ!……ん〜違うな……チビ!……これも違うか……鳴き声がキュウだから、キュウでどうだ?」


『キュウキュウ!』


「そうか、よろしくな!キュウ」

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