WARNINGって何だよ!
「何だ!?光ってるぞ!!」
『説明しよう!レイビはスキル【エナジードレイン】を使用しているのである』
「エナジードレイン?どんなスキルだ!?」
『説明しよう!エナジードレインは、対象のHPを吸収して自身のHPを回復するのだ。現在レイビは、我らがヴァイラスピンクのHPを吸収して傷を回復中なのである』
「回復してるのか!」
レイビの傷が徐々に塞がっていく。
「良かった血が止まった!好きなだけ吸い取って良いぞ!」
『グルルル』
「おっと悪いな忘れてた。相手になるぜ」
とは言ったものの、手こずるような相手じゃない。残りは9匹。サクッと倒そう。
しかし激しく動くと、弱っているレイビに衝撃が伝わってしまう。
「そうだ!今回手に入れたスキルを使ってみよう!上手くいけばウインドウルフが仲間になるかもしれない!」
手の平をウインドウルフに突き出した。
「従魔契約!」
『グルルル!』
『ワォ〜ン!!』
『ワォン!』
「よしよし。さ〜て、誰が仲間になったかな……ん?」
9匹のウインドウルフは歯茎を見せて唸っている。おかしいな?俺に敵対心剥き出しだ。従魔契約は発動していないのか?
「どうした!?どのウインドウルフと従魔契約したんだ!?」
『説明しよう!レイビと従魔契約を交わしたのである』
「何ぃ〜!!」
レイビを見ると、眩いピンク色に発光している。
「こ、この輝きは!?これが従魔契約か……」
『説明しよう!違うのである。従魔契約は滞りなく行われた。現在レイビは、我らがヴァイラスピンクのHPを吸収しているのである』
「まだ回復中だったのかよ!」
回復中のレイビを胸元に抱えたままウインドウルフへ向き直った。ウインドウルフ達は、たじろいでいる。レイビの発光に驚いてるのだろう。俺も驚いてるよ。
「ウインドウルフとは従魔契約ができなかったな……」
さっきの従魔契約は何故かレイビと行った。何か決まり事があるのかもしれない。
「従魔契約にはルールがあるのか?」
『説明しよう!従魔契約は、対象モンスターのランクが術者のランクと同じ、または低い場合に発動し、対象モンスターが交渉に応じれば従魔となるのである。ただし、対象モンスターのHPが三割以下であれば、無条件で契約が成立するのである』
「なるほどな。だから瀕死のレイビと従魔契約をしたって事か……俺の冒険者ランクはレイビと同じGだからな」
『説明しよう!正しくは、従魔契約はモンスター専用のスキルなのだ。したがってモンスターのランクが適用されているのである』
「へー……オレハ……モンスターデシタカネ?」
『説明しよう!現在マスターは、Gランクの魔石で我らがヴァイラスピンクに変身しているため、Gランクが適用されているのだ』
「なるほど!ヴァイラスピンクで契約したって事だな?それならギリ許そう!しかし困った。こいつはランクは同じだが、生身の俺より強いんじゃないのか?変身が解けたら攻撃されるって事はないよな?」
『説明しよう!変身が解除されても我らがヴァイラスピンクはマスターの中に存在しているのだ。変身解除後も完全服従なのである』
「それは良かった。しかしなぁ……交渉は言葉が通じないから無理だろ?もう一つの条件はHPが三割以下か……一撃で倒してしまうから従魔契約は無理じゃないか?何か方法を考えないとだな……はっ!?う、嘘だろ!」
【ビーッ!……ビーッ!……ビーッ!……】
【WARNING】
警告音が鳴り始めた。
「待て待て待て!!何故だ!?有り得ない!まだ変身時間はあるはずだぞ!しかもWARNINGって何だ!?ナレーションどういう事だ!!」
答えてくれない。
「おい!ナレーション聞いてるのか!?」
普段はどうでも良い時に答えるくせに、大事な時に限って答えてくれない。
「これは夢か!?」
ダメだ。お決まりの皮肉も答えてくれない。
それよりも、視界にはWARNINGの赤文字が表示されている。いつもの黄文字のCAUTIONではない。只事じゃない!
「答えてくれ!WARNINGって何だよ!」
やはり答えてはくれない。
ステータスを確認するとHPが0になっていた。
「ヒーローポイントが0になってるじゃないか!!」
原因はこれか。しかし何故?時間はまだあったはずだ。ダメージも受けてないのにHPが0になるなんておかしい。
『グルルル』
とにかくこのままじゃマズイ。変身が解除される前に安全な場所に移動しなければ。
「この場は引いて……っな!体が動かない!?」
今までの変身解除とは違い、体に力が入らない。動くことができない。それどころか、力が抜けていく。立っている事すらできず片膝をついてしまった。
「な、何が起きてるんだ!」
あと数秒で変身が強制解除されてしまう。ウインドウルフ達はジワジワと、俺とレイビを取り囲んだ。
「傷付いたレイビだけでも……え?」
全快している。潰れていた左目も綺麗に回復している。
『キュウ!』
パチリと目を開けたレイビは嬉しそうに尻尾を振った。
「尻尾!?尻尾が生えてる!」
無かったはずの尻尾が生えた。何が起こったのかさっぱり分からない。
「まさかお前が全てのHPを吸い取ったのか?思う存分吸い取って良いとは言ったが、流石に限度があるだろ!」
『キュゥ……』
悲しそうに鳴いた。……か、可愛い。
「ごめん!言い過ぎた」
10回の警告音の後に、変身が強制解除された。同時に体が自由に動くようになった。何だったんだ?しかし逃げ場はない。
「何が何だか分からないが、こうなったら生身で戦ってやる!」