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第25話 伝説のおっさん、計画する

 楓が帰った後はマンツーマンでレイナに指導していく。とはいえ、あまり口を出すようなものでもない。


 レイナは今、様々な気付きやチャレンジをしている段階なのだ。とにかく自分の中でマナを操る感覚を確かにしなければ次には進めない。その鍛錬途中で、レイナが俺に声をかける。


「先生、この前の斥力で空中を飛ぶという新技なのですが」

「あれか……レイナ的には進めそうか?」

「少しずつ速く飛べるようになっているのですが……」


 言って、レイナがふよふよと浮く。この前よりもわずかにだが、離陸スピードが速くなっている……気がする。だが飛ぶ際に集中せねばならず、隙が大きい。まだ実戦で使うにはまだ厳しいだろうな。


「飛んでいる最中にマナの集中をしようとしても、全然うまくいかなくて」

「そりゃまぁ……ふたつの違うことをしようとしているんだからな」

「やはりそうですよね……うーん」


 マナのガードはそれだけで集中を要求される。他に集中しなければいけないことをすれば、両方ともうまくいかない。右手で三角、左手で四角を描くようなものだ。

 練習をすればもちろんどちらも出来るようにはなるが……。だがどの程度で出来るかとか、習熟のスピードは千差万別である。


「であれば、マナのガードのほうを優先するべきですよね?」

「迷っているなら、飛行を先に習得したほうがいいと思うけどな」


 俺の答えにレイナが少し驚く。かなり意外だったようだ。


「先生が教えてくれているのがマナのガードなので、そちらを優先するように仰るのかと思いましたが」

「マナのガードを習得するにはとにかく時間がかかるからなぁ……。即戦力で言えば、飛行のほうがいい」


 それに、と俺は付け加えた。


「基本的に特化能力の訓練は、成果が出るのも早い。自分に馴染む……というのかな」

「ふむふむ……」

「空を飛べれば、敵の攻撃はそもそも当たらないしな」

「……身も蓋もないような」

「戦いなんてそんなもんだ。極論を言えば、先に大きいのを当てれば勝ちなんだから」


 まぁ、後手必勝――カウンター上等の俺が言うのもなんだが。


「あとは集団戦なら、飛行だけでも有効活用できる。例えば他の遠距離攻撃できるメンバーを抱えて飛べば、爆撃機の完成だ」

「わかりました……。では、ちょっと飛行のほうを気持ち、多めに練習します……!」

「おう、後はバトルイベントの対策も考えておかないと……」


 まだ次のバトルイベントの出場者は公には発表されていない。しかし出場常連者は当然いるし、誘われれば出ると公言しているベテランもいる。今の段階から予習、対策をしておくのに越したことはない。


「正式に出場者が確定するのは1週間前――そこから動き出したんじゃ遅いからな」

「嬉しいです、先生もやる気なんですね」

「そうだな、面白そうなイベントだからなのもある」


 事前に決められた条件の下でルールに従って戦う。自衛隊の最後ではめっきり減ってしまったが、俺は嫌いじゃない。


 そんなことを話しながら鍛錬をしていたら、夕方になった。レイナはそこから仕事があるということで鍛錬は終わりだ。斥力で空中に浮かぶ新技は、次のバトルイベントでお披露目できたら……ということだった。


 レイナの成長スピードならある程度は形になるだろう。そこから魔獣戦で使えるかどうかなどは別だが……。


 そしてホテルに戻り、いつものようにエゴサしてみる。またここ数日でいくつかの記事がネット上に上がっているな。


 晩酌しながら題名だけ読んでみると……。


『伝説のおっさんはスイーツ好き!? 謎めいた素顔!!』


『伝説のおっさんをまとめてみました』


 まぁ、別にヤバいものはないが……。だがこうして見てみると、俺ともっと対話したいというリスナーがかなりいる。


”強さの秘訣を知りたいなぁ……”

”今後のスケジュールとか何か言ってた?”

”質問受付コーナーみたいなのやって欲しい”


 これも無理からぬところだろう。今まではかなり一方的なやり方だったしな。しかし今の俺にこうした回答をリアルタイムで出来るのだろうか……。


 普段は慎重派な俺だったが、なんとなくアルコールもあって出来る気がしてきた。そうだ、あの自己紹介配信も大丈夫だったんだ。


「イケるだろ…………多分」


 いつまでも一方的な発信ばかりでは良くないのも確かだ。今、俺はレイナの歌配信を見ていた。


「えーと、この前出した歌みたどうでしたか? うんうん……良かった、しっとりめで好き……ありがとー! レイリンでの新曲は……まだもうちょっと! 表に出せる情報が少なくてごめんなさい! でもでも、すっごい良い感じに進んでたりして――」


 歌と歌の合間にコメントを拾いながら、うまいこと先へ先へと進んでいく。この話術はさすがとしか言いようがない。


 そしてこういうやり取りがあるからこそ、ローゼンメイデンはあそこまで大きくなったのだろう。もちろん、俺の一番目標は人を育てること。技術の伝承だ。

 でもそのためには多くの人との接点、繋がりがないとうまくいかない。レイナもカリンも頑張っている……。


 俺だけがカンペ読み上げマンでいいのか?

 良くはない……。圧倒的デジタル敗者だ、それは……。


 よし……。

 ついにやるか、リスナーとの対話配信を。

 今までコメントを読み上げたりはしなかったが、そろそろいいだろう。もちろん、俺には作戦がある。


「ぴっ?」


 それは超高性能なこのドローン君だ。このドローン君のAIをフル活用し、俺は臨機応変の答えを手に入れるっ!


「……とりあえずSNSに予定は投稿しておくか」


 半ば酔った勢いのまま、俺はDダイアリーに投稿した。


『明日、雑談配信やるます。質問とかにも答えるよ』

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