穏やかな夢
ある所に2人で仲良く暮らしている夫婦がいました。
ある日妻が言います。
「香水買いに行こう」
と。
「香水? 高いし、私には必要ないんじゃないなかな?」
夫は興味無さげです。
「貴方はいつもそう、私以外に興味が薄い。たまにはお洒落しないと」
妻は不満そう。
「わかったよ、行こう」
夫は妻に押し切られる形で渋々ながら買いに行く事に。
香水を扱っているお店は2人の住んでいる所からバス、電車を使って1時間位の所に在ります。
「買い物デートだね」
妻は嬉しそうです。
「そう言えばこの所デートしてなかったね」
夫も照れくさそうに、でも何処か嬉しそうです。
そんな事を言いながら2人は家の鍵を掛け、バス停に向かいます。
バス停は徒歩で5分位の場所に在ります。
「出掛けるの久しぶり」
新型コロナの影響で世間は外出自粛モード。
政府もそれを推奨しています。
「そうだね、今はコロナ禍で自粛モードだものね。あっ、もうすぐバスが来るよ」
バス停の時間とスマホを見ながら夫が言います。
それからしばらくしてバスが来ました。
ピッとICをタッチし2人はバスに乗り込みます。
10分ほどバスに揺られ駅に着きました。
駅に着くと「ICにチャージしてくるね」と。
「もう、いつもギリギリじゃ無くて余裕持ってチャージしてっていつも言ってるじゃない」
妻はちょっと不満そうです。
「仕方ないよ、ほとんど家から出なかったもの」
確かに最近コロナ禍で家から出ず、2人でゲームしたりばかりでした。
「家から出るのって買い出しに行く位しかしてなかったしね」
その買い物も手持ちが足りずICで払う事も有ったのです。
「まぁ、いつも買い物行ってくれてるし文句も言えないわ」
そう、日頃の感謝を伝える妻。
「お待たせ」
チャージを終わらせた夫が戻って来ました。
「さあ行こう」
「うんっ」
電車は乗り換えなしです。
ただ、約40分と少々長い時間です。
「あ、あそこ空いてるよ。座って?」
確かに空いてはいるのですが1席だけ。
「でも」
妻は戸惑います。
「私は大丈夫だから」
夫は優しく言います。痩せているけど、昔は土木関係の仕事をしていたので体力、筋力はあります。
「ほら、座って?」
「うん。ありがとう」
特に問題もなく、専門店に着きました。
「いらっしゃいませ」
店員さんが迎えてくれます。
「本日はどの様なものをお探しでしょうか?」
「爽やかなものを探しに来ました」
「では、こちらへ」
店員さんに案内され、爽やかなところへ。
「ごゆっくり」
店員さんは去って行きます。お客の邪魔をしない接客、流石は専門店スタッフ。
「これなんかどう?」
妻が探し出したのは小さな銀色のマスカットの香りでした。
「手を出して」
夫の手の甲にサンプルをひと吹き。
夫は手の甲を擦り合わせ
「これ、良いね」
香りに満足したのか、笑顔です。
「ありがとう」
「どう致しまして」
とある夫婦の日常。