プロローグ
力なく膝を落とし、途方に暮れる彼女を見た俺は、自分でもあり得ない行動を取っていた。
彼女を落ち込ませた張本人の襟元を掴み、手繰り寄せていたのだ。
「なんじゃ?言いたい事があるなら、男ならハッキリと申せ」
自分よりも小さな体だが、頭四方に顔があり、正面を向く端正な顎髭の顔に、俺は少し戸惑いながらも声を振り絞った。
「コイツは役立たずなんかじゃないっ!取り消せ!」
「ほう、そうか…」
俺は軽々と引き離され、ゆっくりと彼女の横に座らされた。
小さくともその力は凄く、抵抗は全くできなかった。
「ならば人間、其方に仕事を与える!」
「いや、俺じゃなく…」
「娘に見合った仕事を見つけ、其方が全面的にサポートせよ!」
「いや、だから!俺に神々の仕事なんて分かるかぁ‼︎」
そう。俺は今、彼女との成り行きで神界とやらに来ている。
宇宙のど真ん中を連想させる、真っ暗な空間に幾万の星が見える場所。
そこには透明な床と壁が存在し、神々と称する老若男女に囲まれているのだ。
「確かに、今の神々の仕事に空きは無いのぉ。じゃから、其方が探して新たな仕事にせよ。それでその子も救われる。我がブラフーマの名に掛けて、役立たずとは誰にも呼ばせぬと誓おう」
その誓いに、今まで静観していた神々も歓声を上げる。完全に見世物にされている。
「すまない…」
俺を巻き込んだ事を悔やむ彼女に、俺は首を横に降り一緒に立ち上がらせた。
「モブ神だってな!ちゃんとした仕事できるって、証明してやるよ‼︎」
俺は創造神ブラフーマに向かって、柄にも無く虚勢を張ってしまった。
「じゃあ、決まりじゃな?」
そう、俺の20年の人生は、たった4日で激変し、この時に終わりを迎えてしまったんだ。