生贄になれと村人に言われた私は、逃げ出した先で幸せになる。 ~村がどうなろうと知りません~
私は、とある村の村長の娘だった。
でもある日、魔物の封印が解かれ、村人は私を生贄にしようとした。
死にたくなかった私は、必死になって逃げだした。
そして私は、幸せな日々を暮らしている。
そんなある日、知り合いが私を訪ねてきた。
あら、クロード君じゃない。
久しぶりね。
あなたが幼馴染の恋人を守れる強い人になるって言って村を出て行って以来だね。
でも、よくここが分かったね。
私ね、今公爵様の愛人をやっているの。
ど田舎の村の村長の娘が、大出世だよね。
公爵様はね、すごく贅沢させてくれるの。
だから私、今とっても幸せなんだ。
え?村が滅んでいた?
みんな死んでたって?
あ~やっぱり。
それはね、魔物に皆殺しにされたからだよ。
え、どうしてそうなったって?
村長である私のお父さんと、お母さんが魔物の封印を解いたからだよ。
でね、魔物は娘である私を生贄にしろ、さもなくば村人を皆殺しにする、って言ったの。
で、両親は村を守るため、それに合意したってわけ。
でもね、私は生贄になりたくなかったから逃げ出したの。
その後どうなったか知らなかったけど、やっぱり皆殺しにされたんだ。
あぁ、そうそう。
魔物は村人を皆殺しにしたら魔界に行くっていってたから、もう手出しは出来ないと思うよ。
え、なんで怒っているの?
お前が逃げたせいで滅んだって?
変な事言わないでよ。
確かに結果として村は滅んで、皆は殺されちゃったけど、私は何も悪くないし、何の責任もないよ。
だってさ、封印を解いたのは私の両親だよ。
で、私を選んだのは魔物だし、皆殺しにしたのも魔物。
さらに言うなら、魔物を倒せる力が無いのは村人達だし、いざという時に村を守る兵隊が近隣にいないのは国の問題だし。
と言うか、そもそも魔物が本当に皆殺しにするかどうか当時の私にはわからなかったし。
それにさ、村長である私の両親は既に失敗しているの。
村人達を守るために私を犠牲にするしかないって時点でね。
どういう事かって?
だってさ、魔物から村を守る手段が他にない時点で、既に村人達を守ることに失敗しているよね。
でさ、その失敗を何の罪もない私一人を犠牲にすることで回避しようとしたんだよね。
言わせてもらうんだけど、私一人生贄にして生きようとする、両親や村人、それにあなたの恋人も皆頭がおかしいよ。
それに、何の罪も無い私に大の大人達が「俺達を守るために生贄になれ!」と縋り付くって、あまりにも筋違いじゃない?
本当、情け無い話よね。
私は、一人を生贄にしてハッピーになろうとするクズ達のために大人しく生贄になるような聖女じゃないんだから。
え、ちょっと、何剣を抜こうとしているの?
え……許せない、殺してやるって?
衛兵!
殺してもかまいません!!
…………
あぁ、怖かった。
まったく、何を怒っているんだか。
大体、村が滅んだ原因はあなたのせいでもあるのに。
あなたが、もっと早く魔物を倒せるくらいに強くなればよかったんだよ。
そしてもっと早く村に戻れば、村も、そしてあなたの恋人も助かったかもしれないのに。
まったく、皆私に自分の責任を押し付けようとするんだから。
まぁ、魔物に殺された村人も、こいつも、死んだのは自業自得よね。
ざまぁ(笑)
お楽しみいただけましたでしょうか?
以前書いた小説の、感想欄で書いた例えの物語を作り直したものです。
「無理やり結婚させられそうになった私は、駆け落ちして好きな相手と結婚して幸せになって、絶望した。」
下のリンクから飛んでください。
半ば勢いで書きました。
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