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両想いの女親友二人がなぜか私を間に挟めようとするのですが、どうすればいいですか?  作者: りんご飴ツイン


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第三十一話 目覚めた先に広がるは

 

 朧げながらも安藤琴音には赤ん坊の頃の記憶がある。


 幼子は母親のお腹にいた頃の記憶さえも保持していることがあることからあり得ない話でもないのだろうが、通常は成長と共にそういった記憶は風化するものなのだが。


『大丈夫。大丈夫だザザザッ……』


 もちろん完全とは言いがたく、ノイズのように霞んだものではあったが、確かにそれは生まれて間もない頃の記憶なのだ。


『命の危機に怯えザザザッなく街中を歩ザザザッができる。そんな「今」を守るために俺たち「ザザザッ」は存在するんザザザッ』


 それに、と。

 夢の中の男は──写真でしか見たことのない父親はこう言っていたのだ。


『ザザザッ俺の愛する妻ザザザザザザザッジジジッザザザザザッ!! ジジッが何のザザザザザッることなくザザザザザッザザザッためならなんだってザザザッザザザッ!!』


 ……やはり今日も父親の言葉はノイズに埋もれてしまって正確には思い出せなかったが。



 ーーー☆ーーー



「う、ぁ……」


「先輩っ!? 気がつきましたか!?」


 目が覚めると、超近くにラビィちゃんのお顔があった。


 つーか思いっきりラビィちゃんの腕の中に抱えられていた。


「うおわっ!? ラビィちゃっちかっくそう!! やっぱり顔が良いなドキドキするからちょっと離れてよこんにゃろーっ!!」


「とりあえず元気そうで安心しました。本当に」


 ん? あれ???

 何か違和感が、そう、語尾に『っす』がついてない!?


「ラビィちゃん、どうか──」


「琴音ちゃん良かった目が覚めたんですね!」


「良かった……っ!!」


「わっわわっ、千景にミィナ!? あれ、なんでここに?」


 というか、何やらドッカンバッガン凄まじい轟音と共に白いスーツの人たちが殴り飛ばされているんだけど……え、ええっ、人ってあんなに高く殴り飛ばせるものなの!?


 いつ寝ちゃったんだろうってどころじゃなくて、もう色々と状況変わりすぎてついていけない感じなんだけど、それでも一番大事なことを見失うわけにはいかない。


 っていうか、あんな超人バトルに私がとやかく首を突っ込めるわけでもないしね。


「琴音ちゃん──」


「ごめん、千景。この休みはなんだってそっちのけでラビィちゃんだけを見るって約束しているんだよ」


 だから、と。

 私は今にも泣きそうな顔をしているラビィちゃんにこう声をかけたのよ。


「何かあった?」


「ごめんなさい……」


「ごめんなさい、か。できることならラビィちゃんがそうも追い詰められている理由、話してくれないかな?」


「……わかり、ました。ここまで巻き込んだ以上、先輩にも知る権利はありますから」


 そうしてラビィちゃんはぽつぽつと語ってくれた。ラビィちゃんがネット界隈で有名な『白き花の代弁者』として活動していて実質的な『教団』の指導者的立場であること、信仰を軸として学生から国家の中枢にまで支配領域を広げていること、近いうちに支配圏を奪われることを阻止したい現在の支配階級と『教団』とが激突する形で世界各地で『内乱』が起きること、『内乱』による社会不安の増大を利用して信仰を広めることで国家の垣根を超えて世界を一つにして真なる平和を築き上げようとしていること、私のお母さんが頂点として君臨しているらしい『第零席』とかいう特殊部隊がラビィちゃんを殺してでも『内乱』を阻止するために襲撃を仕掛けてきたのに私が巻き込まれたこと、そして──全ては過去に国家間の利権の奪い合いから生まれ育った村を失ったことに起因していることを。


 はっきり言おう。多分完全には理解できていない。いや、だって、確かにラビィちゃんはファンクラブが出来上がるくらいにはモテモテだけど、だからといって国家の中枢にまで影響を及ぼしているだの『内乱』が起きる原因になっているだのもう現実味がなさすぎる!!


 だけど、まあ、嘘じゃないんだろう。

 そんなアレソレに私を巻き込んじゃったのを気にしているんだろう。


「巻き込むつもりはなかった、といっても信じられませんよね。安全圏は出来上がっているからといってこんな事態にならないと断言なんてできなかったんだから。先輩を傷つけてしまったのは全てワタシのせいで──」


「いや、それはラビィちゃんが謝ることじゃないって」


 正直、ラビィちゃんがやろうとしていることを全肯定はできない。言いたいことはあったけど、だけど!!


「話し合いの余地もなく襲いかかってきた連中が全部悪いに決まってるよ。だから、私が襲われたことをラビィちゃんが謝ることはないよ」


「だけど、ワタシが先輩のことを諦めることができていればこんなことには──ッ!!」


「もう、私がいいって言ってるんだからその話はおしまいっ。これ以上引きずったほうが怒るからねっ」


「先輩……。ありがとうございます」


 まあひと段落的な雰囲気だけど何も解決していないんだよね。


『第零席』とかいうのと、真っ赤な女やダークスーツにサングラスの褐色の女がやり合っている。あの二人はミィナの知り合いで味方らしくて、まあそっちもなんだけど、それ以上に、


「あのメイド服の人がミィナの『母親』で、あの人とやり合っている私のお母さんが『第零席』の中でも頂点に君臨しているって話だったよね。うおおっ、色々ぶっ飛びすぎていて理解が追いつかないよう!!」


 なにこの破茶滅茶な展開!?

 お母さんは特殊部隊の人間でしたなんて訳わかんないにもほどがある!!


 だけど。

 だけど。

 だけど。



 ーーー☆ーーー



『「略奪船」って知ってる?』


「あん?」


 唐突に。

 クイーンはこんなことを言った。


『日本船舶が度々襲われているらしいじゃない。日本海沖も随分荒れちゃって、いやー物騒な世の中になったものよね』


「ま、さか」


『あくまで「セントラル」とは全く関係ない話ということになっているんだけど、どこからか「略奪船」に大量の武器と前金が渡ったらしいよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「テメェッッッ!!!!」


『そうそう、これは前にも言ったわよね。下手に動くよりも「安藤」に任せていたほうがまだしもマシかもしれないと』

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