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両想いの女親友二人がなぜか私を間に挟めようとするのですが、どうすればいいですか?  作者: りんご飴ツイン


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第二十一話 誕生日パーティー

 

「ミィナーっ! 誕生日おめでっとうー!!」


「おめでとうございます!」


 パンパンッ! と私と千景が鳴らしたクラッカーの破裂音と共に鮮やかな紙吹雪が舞う。


 場所は私の家のリビング。

 誕生日用にとリビングは色鮮やかな風船や折り紙を輪っかにして繋ぎ合わせたもので飾りつけられていた。


「ことね、ちかげ……ありがとうございます」


「あれ? 一応サプライズだったんだけど、あんまり驚いていない感じ?」


「ことねとちかげなら……いつも通り、祝ってくれるとわかっていましたから……」


 もちろん嬉しいよ、と付け足すミィナ。

 と、今日はやけに情熱的な赤を基調とした着物姿の千景はほらみろと言わんばかりに、


「やはりわたくしの案を採用するべきだったのではないでしょうか?」


「あー……。あれかぁ。いやまあ悪いとまでは言わないけどさぁ、ちっとばっか学生の身にはぶっ飛びすぎているっていうか」


「ちかげの、案って……なに???」


 キョトンと首を傾げるミィナに私はちょうど近くに置いてあった資料(鈍器)を手に取る。


 それをミィナに手渡しながら、


「星いくつって語られるくらいにはすっごいレストランを貸し借りにして、劇団やらオペラ歌手やらサーカス団やら手品師やらとにかくしこたま呼んで、それはもう朝までどんちゃん騒ぎしようってものよ」


 今が夜の七時なわけだけど、そこから朝の七時までみっちりスケジュールが組まれているのよねえ。


 つーか資料だけでも鈍器レベルには分厚い。軽くそこらの辞書に匹敵する厚さなんだけど、どれだけ気合い入れて作成したのやら。


 この鈍器を千景が嬉々として持ってきた時は流石に反応に困ったよね。ミィナと恋人になって初めての誕生日会ってことでやる気に満ち溢れていたんだろうけど、流石にこの案を了承はできなかった。


 ミィナはどこぞの王族じゃないんだから、こんな豪勢なパーティーを開かれたって気疲れするだけよ。


 どうやらミィナも私と同じ意見のようで、鈍器としても使える資料を置いて、千景と向き合って、こう言ったのだった。


「ねえちかげ。……その、こういった豪勢なものも良いんだろうけど……わたしはちかげとことねが、いつものように祝ってくれたら、それだけで嬉しいよ。変に凝ったものよりも、ずっとリラックスして楽しめるから……」


「そうですか。いえ、そうですよね。れっ、冷静になって考えてみると()()過密スケジュールな気もしますし。こっ恋人の誕生日を祝うということで気負いすぎていたのかもしれませんね」


 少々っつったよ。

 ミィナと付き合えたことで千景の理性が軽く飛んじゃっている気がする。


 いやまあ誰かに恋をするってのはそういうものなのかもしれないけどね。私にはよくわからないけど。


「でも、ちかげはそれだけわたしのことを、考えてくれたってことだよね? ……そのことは、とっても、嬉しいよ……」


「ミィナ……。ありがとうございます」


 あ、甘い、だと!?

 まだケーキを食べていないはずなのに!?


 そ、そうだった。今年はいつもとは少し違うのよ。何せ千景とミィナは付き合っているんだからね!!


 くう! これが恋人パワーってヤツかぁっ。なんだか空気までピンク色に見えてきたよう!!


 負けるな私っ。今こそ親友パワーフルスロットルでいくぞー!!


「へいへいイチャイチャしちゃってもーう!!」


「っ!? いっイチャイチャだなんて、そんなことはありませんよ!」


「はいはいそんな照れ隠しはいらないってー。恋人がイチャイチャするのは普通のことなんだから。だけど! せめて高級店のシェフを呼ぼうとする千景を説得して、いつものように二人で手作りした料理があるんだよっ。冷める前に食べてからでも、イチャイチャするのは遅くないよねっ」


「うう……。恥ずかしい……」


 友情と恋愛。

 やっぱり二つは違うもので、そうなると一番の『意味』もまた変わってくるんだろうけど……不思議と、前のような胸の痛みはなかった。


 千景もミィナも離れることはないとわかったから、というのもあるだろうけど、それ以外にも何かがある気がする。


 それが何であるかは、全然わからないんだけどね。



 ーーー☆ーーー



「ロシアンお寿司ーっ! シャリの中にしこたまわさび詰め込んだのがあるから気をつけてねー!!」


「何かこそこそやっていたかと思えばそんなものを仕込んでいたんですか!?」


「それじゃあ……ことねから、どうぞ……」


「げっ。そうくる? って、ああっ。そういえばどれにわさび詰め込んだっけ!? くそう、せめてネタを違うものにするなり、目印をつけるなりすればよかったぁ!! だ、大丈夫よ。初っ端からハズレを引くはずないもの確率的に一番安全だもん!! ようしいくぞーっ!! ごぶばぶう!? はっ鼻が、鼻がツーンってきたあ!?」


「自業自得です、まったく! ごぶっ!? あ、あれ、どうしてこれにもわさびが入って……!?」


「くっくっくっ。あーっはっはっはあ!! ハズレが一つとは誰も言っていないんだよねえ!!」


「お寿司……美味しい……」


「ちえっ。ミィナはわさび入りを回避したかぁ。でもまだロシアンお寿司は終わっていない! さあ第二巡といこうか!!」


「いえ、琴音ちゃんが全部食べていいですよ」


「にゃん?」


「……遠慮せずに……どうぞ」


「待って待って実は八割くらいはわさび入りなんだってこれ全部は洒落にならないってお鼻がツーンどころじゃなくなるってえ!!」


「自業自得です!!!!」


「にゃっにゃんにゃあーっ!?」




「それにしても……気合い入った料理だね……」


「お口に合えば良いのですが」


「……うん。すごく美味しい……。流石ちかげだね……」


「そっそうですか!? えへ、えへへ。喜んでもらえて良かったです」


「…………、」


「ミィナ? どうかしましたか?」


「いや……今のちかげ、可愛かったなって……」


「なっなんっ、そんなっ、かわっ、なん!?」


「本当、可愛い……」


「ちょっ、もうっ。そんなこと言われたら照れるではないですかっ」


「こ、このう! 私が辛辛なわさびに苦しめられている間に甘々な空気醸し出してからにい!! 私も混ぜろこんにゃろーっ!!」


「きゃっ。琴音ちゃんっ」


「二人一緒に抱きしめるなんて……大胆」




「じゃーん! パーティーゲームその一、ツイスターゲーム!! さあさ、ド派手にバトルといこうかーっ!!」


「「…………、」」


「ん? あれ、ここは盛り上がるところなんだけど……ハッ!? 一人はルーレット回す役でハブられるとでも思っている? そんなことにならないよう、一定間隔でルーレットを回すアプリがあるから三人で一緒にできるから安心していいよ!! いやあ、ゴロツキの奴もたまには良いのをくれるよねっ」


「黒幕はあの野郎ですか!!」


「? それより早くやろうよパーティーは楽しんだもの勝ちだよっ」


「ことねがそう言うなら……仕方ない……」



 ──十分後。



「やばいですこれ本当やばいですミィナと触れ合っていて体温が伝わってきて柔らかくて甘い匂いがしてもうこれ反則ですう!!」


「……う……ううっ……」


「うわあ。千景もミィナも身体柔らかいなぁ。身体固くてすぐに脱落した私とは大違いっ」


「どうして身体が固いとわかっていてこのゲームをやろうと思ったんですか琴音ちゃーん!!」


「だって面白そうだったし。あ、千景、右手を赤にだって!」


「赤って、くうう! 結構遠いですねっ」


「ひゃん……!?」


「なっなんミィナ今のは違って、あう!?」


「あ、千景倒れた。ってことは、ツイスターゲームはミィナの優勝だねおめでとう!!」


「それよりわたくしがミィナの胸を揉むような体勢になっていることに関してはコメントはないんですか!?」


「わかっているのに……離れないんだ……」


「ああっ、それもそうですっ」


「ようし、次のパーティーゲームはっと」


「……ことね、パーティーみたいなイベントの時って、テンション上がって周りが見えないよね……」


「違うんです違うんですよぉ。わざとではなくて、ですが離したくなかったかどうかといえば明言はできませんけど、ですけどぉ!!」




「パーティーゲームその十八終わりっと。これで用意したのは全部やり終わったかな」


「ぜえ、はあ。全体的に密着系や強制命令系のような合コンでやるようなゲームが多かった気がするのですが、やはりゴロツキの仕業ですよねツイスターゲームからしてゴロツキが関与していましたし!!」


「……膝枕や口説き文句を耳元で囁く……うん、悪くなかった……」


「ではでは、メインイベントっ。誕生日プレゼントの時間だぜっ。私からはこれだよっ」


「これは……クマのぬいぐるみ……」


「やわっこくておっきくてとミィナが好きそうなヤツだと思ったんだけど、どうかな?」


「うん、可愛い……。ありがとう、ことね」


「いえいえっ。では、千景もどうぞっ」


「そ、そうですねっ。その、はい!!」


「これは……香水……?」


「『東雲グループ』が販売しているもので、わたくしも愛用しているものでして、その、気に入らなかったら捨ててくれてもいいですからっ」


「捨てないよ……。ありがとうね、ちかげ」


「いえ、そんな」


「でも、そうか。これで……わたしとちかげ、同じ匂いがするようになるんだね……」


「っ!?」


「その反応……ちかげって、そっか。ふうん」


「そっそのっいえその深い意味はないんですよわたくしが使っていて良いと思ったものをプレゼントに選んだだけでそれ以上の意味なんてそのあのそのぉ!!」


「……いいよ。体臭からして自分の色に染めたいというのも、悪い気はしないから……」


「そ、そうですかっ」


「あ、認めた……。本当にそうだったんだ……」


「もしかして誘導されました!? 今のは、あの、そのっ」


「うおう。なんだかんだと大和撫子と呼ばれるくらいだった千景がこんなになるのかぁ。恋って怖いなぁ」


「そんな目で見ないでくださいよ琴音ちゃーん!!」



 ーーー☆ーーー



 世界のどこかで。

『彼女』は言う。



「ふん。『あの女』の思惑に従う形なのは気に食わないが、利害は一致している。今だけは付き合ってやるとしよう」



 ゴギッ、と。

 拳を握り、鳴らして、『彼女』は闇の中に蠢く部下の群れに命ずる。



「『上』が楔を振り払うのも時間の問題。お前ら、いつでも動けるよう準備を整えておけ。正義の名の下、最小の犠牲でもってこの国を救うために」

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