誰かにとっては穏やかな日々。
特に何も起きません。
青い空。
白い雲。
どこまでも続く、穏やかな空気。
いつもより人通りの少ない通学路は、毎日の嫌悪感が全く無い道になっていた。
時刻はすでに10時を回っている。そう。僕は今、超絶怒涛の遅刻していた。もうこのまま帰ってもいいと思えるくらいだ。
「おーい、佐々木ー」
背後から声が聞こえて振り向くと、隣のクラスの相田が走ってきていた。おいおい、困るわ本当、と思った。お前、僕とそんなに仲良くないだろ。相田は僕に並ぶとスピードを落として歩き出した。まじか。なんだか少し気まずい。
「どうしたん佐々木」
「いや、普通に寝坊。やらかしたわ」
「俺も。起きて9時だったから逆にゆっくりしたわ」
「あーわかる。それ僕もだ」
いつもより静かな通学路は、会話をぎこちなく浮き上がらせる。気まずい。相田はどう思っているのか。なんで呼び止めた。くそう、気まずい。
「なんか、天気いいな」
「あー……そうだな」
いやいやいや、天気、天気て!もう話すこと無い人のやつ!もう!気まず!気まずい以外の感情が出ないんだが?
絶妙な距離感を保ちつつ、誰もいない穏やかな通学路を歩く。僕が心の中で7億回ほど「気まずい」を唱え終えた頃に、ようやく学校についた。
「じゃあ。また」
それぞれの下駄箱に向かった僕らは、クラスの上履きが綺麗に揃っているのを見て、ため息をついた。今日、学校休みじゃん。
嫌な予感がした。下駄箱の外に立つ男が1人。
相田は頭を掻きながら言った。
「駅まで一緒に帰るかあ」
いや、きまじ〜