what does he INTEND to DO?
小久保仁美は、幼なじみで、カノジョ、だ。
いつからカノジョになったかは、よく覚えていない。
周りがオレらを幼なじみってカテゴリーに勝手にはめて、自然にそうなのだと思っていたのと同じ、感覚。
ただ違うのは。
そこに、オレの気持ちが、ある。
『ホント、好きなんだね。』
「っんがっ・・・!」
息が出来なくなって、飛び起きた。
「ひゃっ・・!」と小さな声があがる。
誰もいるはずのないリビング。すぐ傍に、仁美がいた。
くるりとした大きな瞳が、驚いたように瞬きを繰り返してた。
「・・・何してんの。」
「遊びに来たの。・・・寝てんだもん。」
だからって鼻塞ぐなよ。コロス気か。
・・・変な夢、見たし。忘れたけど。
「いま何時ー?」
「7時だよ。7時になるところ。」
3時間。
帰って来て、うだうだして、3時間寝た。
夜、寝れっかなー?
「母ちゃんは?」
「まだ戻って来てないよ。夕ご飯は冷や麦みたいだね。」
「仁美も食ってく?」
「うーん、どうしようかな。」
ソファに座り直したオレの隣に、仁美が座る。
いい匂いがする。仁美の匂い。
テレビをつければ、ニュース番組の終わりに天気予報が流れてた。
『明日は曇り空、念のために折り畳みを持った方がいいでしょう。』
昨日もそう言って、今日は降らなかった。
「ゆう君、明日も補習?」
「うん、そー。」
喉、乾いた。
テーブルの上には冷や麦の薬味と天ぷらがのってる。
仁美、食ってかないのかな。
冷蔵庫からスプライトを取り出してグラスに注ぐ。
シュワシュワと泡が弾けた。
「あたし、思うんだけどー・・・。」
仁美はテレビを見ながら、ソファの上で膝を抱えて座る。
昔から、変わらない。
あれでよく落ちてたよなー。
思い出して笑いそうになって、言いかけたままの仁美を促す。
「何?」
仁美はのんびりとオレを見て、にっと唇を上げて笑った。
あー、何か企んでるな?
飲みかけのグラスを持ってソファに戻る。
嬉しそうに仁美は、ここに座れって感じにソファを叩いた。
「これ、内緒ね?言っちゃダメだよ?」
「誰に?」
「誰でも!ホント、内緒だから!」
「わかった。で、何だよ?」
「あのさ・・・」って、オレの耳に顔を近づけた。
ここに、聞いてるヤツなんていないのに。
泡は手の中で弾けてた。
「いっちゃんと夏南ちゃんってお似合いだと思わない?」
「・・・は?」
驚いて振り向けば、仁美は詰め寄って、更に嬉しそうに笑った。
「最近、ふたり、仲いいんだよ?夏南ちゃんと一緒だといっちゃん笑ってるし、夏南ちゃんだって普通にいっちゃんと喋ってるし!」
そりゃ普通に喋るだろ、同級生なんだから。って、言葉が喉まできて、飲み込んだ。
「あの、いっちゃんが、女の子と喋って笑ってるんだよ?それが夏南ちゃんなんだよ?他の子はいっちゃんと喋ろうとするのも何か怖がってるって感じだし。いっちゃんの彼女になる人って年上ばっかりだし。」
年上、もしくは派手な女子だった。
アイツがどんだけ遊んでるか、仁美は知らない。
オレだって、全部を知ってるわけじゃないけど、仁美に言うことない。
「夏南ちゃんだって、この前渡瀬君を振ったじゃない?渡瀬君でさえ振られちゃうんだもん、よっぽど好きな人がいるのかも。それって、いっちゃんだったり、しないかなー?」
「・・・オマエ、都合よすぎ。」
グラスを一気に飲み干した。
喉が、痛い。
「だって・・・」
立ち上がろうとしたオレの裾を、仁美は握る。
何も知らない瞳とぶつかる。
「いっちゃんと夏南ちゃん、スゴく似合うと思う。あたし、ふたりが好きだし。」
「オマエが好きだからって、ふたりをくっつけるなって。」
「でも!ゆう君だって、幼なじみと仲のいい友達がくっついたら嬉しいでしょ?」
タトエバ、仁美トツキアエタノガ、オレジャナクテ、アイツダッタラ?
『ホント、好きなんだね。』と、言ったのは、夏南だった。
本当に、好きだね。
そこに理屈なんてない。
「仁美、夕飯食べてくだろ?冷や麦茹でるぞ。」
「えー?うん?」
「話の続きはそれからだな。まずは作戦を立てないとな。」
「え?何の?」
『梅雨空は、まだまだ続くでしょう。』
テレビの中、お天気おねぇさんは嬉しそうにそう言った。




