what dose he THINK?
すれ違った小学生が、雨、と言った。
見上げれば、雲が早く流れてた。
ポツリ、落ちたのは、言葉。
「あたし、手塚が好きだったんだよねー。」
乾いたような声に隣を歩く歩村を見る。
歩村は、オレを見上げて、ヘラっと笑ってみせた。
「仁美ちゃんには内緒ね。」
歩村夏南の話はどこにいても耳にする。
容姿端麗でいて、サバサバとした性格で、男女ともに、モテる。
そして学年一の秀才に、コクられた、オンナ。
「だから渡瀬を振ったのか。」
「な、なんで知ってんの!?」
歩村は自分のことをわかってなさすぎる。
だから誰であろうと、壁を作らずに接してくる。
少し顔を赤くして、歩村は手を振った。
「違うし。失恋したのはかなり前だし。・・・渡瀬のこと、そんな風に考えたこと、なかったんだ。」
「考えてやればいいだろ。」
「突然すぎて。ゼロから考えるのは、難しいんだよ。」
「ふぅん?」
そんなもんか。
「手塚の気持ちが、ちょっとわかった。」
雨?と、歩村は手のひらをひろげた。
美人だって、勇太が言ってたことがある。
1年の、頃だったような気がする。
仁美が勢いよく頷いて、憧れだと言っていた。
だけどそれから、勇太から歩村の話は聞かない。
「岡島は?」
前を歩く歩村が、振り返る。
「岡島は誰か好きな人、いるの?あ、でも、カノジョがいたりもしたよね?いまはいないの?」
その質問が興味本位なんだか、なんなんだか、よくわからない。
どうして勇太のことが好きだったと話したことも、全く、わからない。
雲ばかりの空を見上げた。
薄らと、光りが射す。
光の中を小さな雨粒が、落ちる。
「いねーな。好きだったヤツはいたけど、いまはいない。」
正直だな、オレ。
思わず自嘲した。
なんでコイツに、言うんだろーな。
ふぅん、と、歩村は頷いた。
人の過去には、触れないらしい。
少しだけ、渡瀬の話をしたことを後悔した。
「ねー、お腹減らない?ラーメン、食べてこ!」
この歩村の笑顔に靡かなかった勇太を褒めてやりたくなった。
勝てねぇはずだ、と思う。
雨はやんで、相変わらず雲は早く流れる。
なんとなく。
オレの過去のひとつくらい、話してもいいかなと思った。
歩村なら、ラーメンを食いながら、笑うだろう。




