what does she LIKE?
雨が降る前って好き。
地面の匂いとか、雲の流れとか、湿った風とか、好き。
傘をひろげる時も、濡れた傘をたたむ時も、好き。
あ。
下駄箱で濡れた靴を脱いでスノコにあがる瞬間。
好きだなぁ。
いっちゃんが、わからねぇ、って顔して、あたしを見た。
そうかなぁ。
わからない、かなぁ。
「それより、おせぇな、アイツ。」
「友達と、お喋りしてるのかも。」
ゆう君は男女問わず、誰とでも仲がいい。
昔っから、羨ましいくらいにゆう君の周りには自然と人が集まる。
逆にいっちゃんはちょっと人から怖がられちゃう。
もう少し笑えばいいのにって、前に言ったら、面白くないのに笑えるか、だって。
ゆう君といる時は笑ってるのに。
「補習組のヤツが人を待たせといていい度胸だな。」
「いっちゃんは先に帰っていいのに。もうすぐ来るし、あたし、大丈夫だよ?」
たまたま下駄箱で会って、ゆう君との待合わせまで付合ってもらって悪いなって思ったんだけど。
いっちゃんがムッとした顔をするから、あたしは少し縮こまってしまった。
いつ頃だったかなぁ?
会うたびに、いっちゃんがいつも不機嫌な顔だったのは。
ゆう君とふたりでいることが多くなって、あたしはいっちゃんとの変化に気づいた時、会っても喋らなくなってた。
「もうすぐ来るなら、待ってやるよ。」
いっちゃんは昔もいまも、優しい。
いつの間にか、いっちゃんとの距離が元に戻って、普通に喋れるようになった。
一緒にいる時間は昔よりぐんっと減ったけど、前よりちょっびと、増えた。
ゆう君は「反抗期だったんだろ」って言った。
あたしはそれ以上聞かなかった。
ゆう君に、聞いちゃいけないような気がした。
いっちゃんにも、聞けない。
「ありがとう。」って言ったら、いっちゃんは目尻を下げた。
いつだったかな。
いつも無愛想ないっちゃんが、ゆう君でもあたしにでもなくて、笑っていたのは。
「仁美!樹っ!」
廊下の向こう、遠くない場所から、ゆう君があたしたちに大きく手を振ってる。
ゆう君の隣で女の子が同じように手を振って、笑ってた。
「なんだ、歩村も一緒かよ。」って、いっちゃんは、しょーがねぇなって顔をして、笑った。
空を覆う灰色の雲、雨は落ちない。
校門を、ゆう君と手を繋いで、くぐった。




