表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

what did he SAY?

誰もいない廊下を歩く足が、重くなる。

校庭からはサッカー部のホイッスルが鳴り響く。

踵を返してこのまま、帰ってしまいたい。

弱い自分が顔を出す。

でも、残念だな。

人質として鞄を教室に置いてきたんだ。

逃げ出すことは出来ない。

彼女が、待っている。


38人分の机が並ぶ教室。

窓際に佇む女の子の姿が誰か、一目でわかる。

彼女の席は窓際から2列目。

いつも、外を眺めてる。

彼女の視線の先に何があるのか、誰がいるのか、ずっと気になってた。

いつも真っ直ぐな瞳に、吸い込まれていく景色。

僕は、景色の一部に過ぎない。


「渡瀬?」


窓の外から、中へ。

まるで風と一緒に、降り立って来たように。

彼女は僕に気づいて、笑った。


「終わった?委員会。」

「うん。ゴメン、待たせて。」


入れなかった一歩を踏み出して、自分の机に向かう。

彼女の席からは、遠い。

いつも、彼女の背中だけが、見える。


「ううん。いいけど。大変だね、委員会って。」

「今日は早い方だよ。」

「え、ホントっ?いつももっと遅いの?つか、何を会議してんの?」


彼女の近づいてくる気配に、むやみに鞄の中を片付けた。

ノート、教科書、文房具。

意味のない行為に、小さく自嘲した。

そんな僕に、彼女は気づかないけど。


「何をって・・・色々、だよ。」

「ふぅん?体育祭、とか?」


体育祭。

そうか、もう、そんな時期だ。

でも。


「体育祭は体育祭実行委員がいるよ。」


「あ、そっか。」と、彼女は笑う。

切りそろえられた短い髪の毛が、揺れる。

透明な肌に赤い唇。

長い睫毛と耳たぶに光るピアス。

普通の、女の子。

それが歩村夏南ほむら かなという女の子。

ただ少し。

綺麗なだけ。

どこにいても、惹きつけられる、ほどに。


「で、渡瀬、用って?相談とか?たいした力にはなれないけど、聞くよ、話。」


サーッと、緑がざわめく。

彼女を呼んだのは、自分。

彼女を連れてきたのは、5月の風。


真っ直ぐに向けるその瞳に、僕は今、景色の一部じゃないことは、わかる。



「歩村のことが、好きだ。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ