老傭兵の最後
真実とは何かね?君はどう思う?
私は不思議でならないのだよ。この真実というものが。。
これは何かね??私には分からないよ。。これが何であるのか。。
君にはどう見える??
。。
ははっ!君にはそう見えるのか!
こいつは驚きだ!私には分からなかったよ!
そう、こいつは見る人によって変わる。そして、感情にさえ影響を与える。
不思議だろ??同じもの見ているはずなのに。。
。。
これは死体だ。
ある人物にとっては駒。ある人物にとっては敵。そして、ある人にとっては最愛の人だ。
はたして、真実はどれなのか?
。。
・・・どれも真実なんだよ、これは。
私はこの人物に私怨もなければ、縁もない。だから、私の心が痛むことはない。
だが、それでも哀悼の意は示そう。それでも、心は痛むのだから。。
。。
人間とは不思議なものだ。特にこの心というものは。。
自分の言うことなんぞ聞いてはくれない。勝手に楽しみ、勝手に苦しむ。
自分の中にあるのに、制御できないなんて不思議だろ?
そして、それが人間というものの中心だ。
頭では分かっていても、身体が動かないってことがあるだろ?
つまり、そういうことなのさ。
。。
心が拒否すれば身体は動かない。そして、一度刻まれた傷は癒えることはない。一生ね。
だから、今回も一つ傷が増えた。とても、小さな傷だけどね。
私はずっとこの道を歩いてきた。今回のもその仕事の一つに過ぎない。
だけどな、ここ最近はその小さな小さな傷たちが痛むことがあるんだ。
悪夢を見ることにもなれた。歳は取りたくないもんだね。
身体の衰えだけじゃない、心まで衰えてきやがる。
私もいつまで生きてられることやら。
。。
・・・そんなこと言ってる場合じゃなかったね。
君は私の死神なんだから。。
。。
長い道だった。もう、どれだけ殺したかも分からない。
人生ってなんだろうな。私なりに精一杯生きたつもりだったが、苦しかったと思う。
さらば、若者よ。やっと、死ねる。
一発の銃声が夜空に響き渡った。
読んでいただき、ありがとうございます。
前回と同じく、傭兵の情景物語です。
戦い、戦い、その果てに、敵と一対一になります。
武器を失い、老傭兵が独白を始めます。
私の場合、理由は分かりませんが、人生を考えた時に傭兵が語りかけてくることが多いです。
今回の情景は、その時に出てきたものです。
人生というのは戦いということなのかもしれません。