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冒険者ギルド

今回は主人公視点からとなります。

人という生き物は不可解な存在です。


彼らは弱いくせに業が深い。 それは死んでも治りません。

冥府から抜け出そうとする愚か者が後を絶たない事は、その事例と言えるでしょう。


本当に業が深い……

冥府から逃げ出とは、愚かな事です。


だから、死を受け入れられない亡者を食べてきました。


死を受け入れられないのは生者も同じです。

なんせ自分から冥府までやって来るのですから。


彼が奏でる音色を、私は覚えています。


アレは良い物でした。 私が寝てしまっても、それは仕方のない事です。

それに主様も感動していたんだから、当然と言えるでしょう!


ですが、彼も業を背負った人間。

やはり主様との約束を守る事が出来ませんでした。



私は覚えています。


彼の匂いを。 それはとても切ない匂いがしました。


私は数多くの亡者を食してきました。


噛んで、転がして、人の業を味わいます。


勿論、苦手な味もあります。


ですが、せつない味は嫌いではありません。





ジルは良い奴です。


当初、服を着せるだけの悪い奴かと思いましたが、私にパンケーキを与えてくれました。

何故か分かりませんが「よく頑張たな!」と褒めてくれます。

頭を撫でる手もほんのり暖かく、悪くありません。 中々の優しい手つきで労りが伝わってきます。


何が彼をそうさせたのか分かりません。

ですが、彼からは切ない臭いが漏れ出しています。


口に含むとほんのり甘く、適度な酸味。

口の中で転がすと、甘みが解け強い刺激が待っています。


悪くない味です。 嫌いではありません。


せつない味がする者は総じて未練に執着し、囚われています。

そして、その執念は噛み砕いただけで消えたはりしない。 

腹の中に落ちて行き、ゆっくりと溶かされるのです。



せつない匂いは、今もジルの中で燻り続けています。


彼は良い奴です。 パンを与えてくれました。

だから……








だから、ジルは大切に食べていと思います。




……




今日は始めに冒険者ギルドへ向かうとの事です。


ジルは私をそこに登録したい様です。

ギルドに登録するとシンプルなデザインの首飾りが与えられます。

それが身分を明かす上で証明書代わりになるらしいく、私に所持していてほしい様です。


今私がいる町は『終着の街』と呼ばれています。

本来の名前などはなく、潰れる事が前提として設置された監視所を中心に広がった街だそうです。


監視対象は北に広がる『深淵』に続く森と街の西口に大口を開けたダンジョン『闇の祭壇』の二つです。

双方ともに高い攻略難度を誇るダンジョンで、特に『深淵』は偵察や確認がされているだけで、攻略自体が未だ手つかずの状態らしい。


ジルはそんな深淵に挑む冒険者らしく、私は深淵へと続く森で拾われたみたいです。


私は不愉快です。 ダンジョン如きが深淵(アビス)などと……

皆さんはどう思います? その言葉は我が冥府にこそ相応しいと思いませんか?


はい、今決定しました。

深淵は潰しましょう! これは確定事項です。



冒険者ギルドでの登録は直ぐに終わりました。

私の首にはシンプルな首飾りが垂れ下がっています。 

形は私達の世界で軍隊に使われている認識票の様な形状です。

この首飾りは、証明書として扱われる他にも、手に握る事でその者の状態を確認する事が出来る魔法が仕込まれています。



物は試しに、私の現状を確認してみました。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ケルベロス


ランク:人

レベル:67

スキル:取得スキル無し

特 性:《冥府の番犬》

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


なるほど、レベルは67でランクは『人』。

スキルは…… 気長に取得していこうと思います。

特性:《冥府の番犬》 というのは…… 



特性能力は以下の通り。

『保存』 … 保存可能 …

『再生』 … 再生可能 …

『霊化』 … 霊化可能 …

『三位一体:時間』 … 時間制御 及び ??? … <消失>

『現在』 … 三位一体の崩壊で発生した力。 現行ランクに合わせて最適化中 …

『業喰らい』 … 業を食べる …



元々私が所有していた力の様です。

この世界においてどの程度通用するものか分かりませんが、大切に使っていこうと思います。


ただ、『業喰らい』っというのがよく分かりません。

こんな力は知りません。 

ですが、持っていて損をする事は無いでしょう…… 多分。



登録が無事に終わると、ジルは私に路銀が必要な事を相談してきました。

深淵の森に向かう前に、闇の祭壇で狩りをするそうです。



ええ、私も協力致しますとも。

収穫のその時までは……




……




《ギルドの受付嬢》



その少女は歪な存在でした。

ケルベロス…… 伝説上の魔物の名を持つ少女。


レベル67…… それは『人』の身でありながら至れる数値ではありません。


こと魔界において『人』と言う事は、ただそれだけで見下される存在です。

彼らのレベルは精々が5~15と言った所でしょうか。 そういう認識です。


それを『人』の身でありながらレベル67……

いえ、我らが魔王様ですら50を超えると大魔王なのでは? と騒がれる程なのです。


彼女は異質な存在と言えました。



驚きはそれだけではありません。

特性の冥府の番犬。

それが持つ力…… 意味が分からないモノが多いですが目を引く力が在りました。


『再生』。 これを見た時、私は体が震えたのです。

ランク『人』の身でありながらこの様な力を持つ者など聞いた事がありません。

思い当たるのは『勇者』や『聖者』位でしょうか……


私は彼女を、人族のエクストラランク『勇者』その成りかけだと判断しました。



世界各地にある冒険者ギルド。

その守秘義務に反しますが、これは一大事です。


私はケルベロスの脅威を魔王様方に報告する必要性を感じていたのです。

2018年9月22日修正 誤記修正。

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