冥府のビック3
短めの幕間的な話になります。
ですが、本編にかかわる内容なので読んで頂けたらなと思います。
冥府において最も尊き御方々、冥府神。
冥王ハデスを筆頭に、冥妃ペルセポネ、そしてもう一柱。
死者の導き手、月と闇夜の女神、豊穣もたらす地母神、女魔術師の保護者、等数々の神格・神性を持つ、死の女神ヘカテ。 この3柱の神々が、冥府に君臨する三大神である。
ヘカテ、彼女は古い神でティターン神族の血族に属する神だ。
そしてその地位は、ハデスやベルセポネに次ぐと言われている。
今回、そんな彼女に白羽の矢がたった。
……
《ハデス視点》
「ケルベロスが帰ってこない訳だが…… (ショボン」
「……」
「面接に出てったきり、報告がありません…… (ブワッ」
「……」
「あの…… ヘカテーたん? 話、聞いてます?」
ビキッ!!
ヘカテの姿が掻き消える。
確かに今その時まで跪いていた筈のヘカテの姿が消えて無くなているのだ。
慌てふためくハデスに、横合いから濁った太い声が掛る。
「その呼び方はお辞め下さいと言った筈ですが? コロスゾ」
ギリィ! ギリリリリリリリリリリリリリリッ!
「イテててて! 辞めて下さい、 死んでしまいます!」
頭を万力で締め上げられた様な痛みに抵抗し、ヘカテの腕をつかむもビクともしない。
ヘカテが片腕でなのに対しハデスは両腕だ。 その差は語るまでもない。
「ぞろぞろ、やべでぐだざい。 じんでじばいばず……」
泡を吹きかけたハデスを確認し、ヘカテは罰から解放する。
ヘカテはハデスに対し亡者に向ける様な侮蔑の目をしていた。
「イテぇーよ。 マジ死ぬかと思った」
「まるで私がゴリラ女みたいに聞こえるじゃないですか。 人聞きが悪い事はやめて下さい」
「うむ、私のヘカテーたんがゴリラなわけない。 ヘカテーたんは小柄で愛くるしい処女神だぉ!」
ビキッ!! 以下、繰り返し。
「次言ったら、奥様に言いつけますよ?」
「いや、はい。 まじでシャレにならんのでやめて下さいお願いします!」
「大体、あなたは愛犬が行方不明だというのに、私の前で先程まで何をしてました?」
「ん? ゲーム。 ピックアップガチャに欲しいのが来てたんだ」
「……(ピキピキ」
「冗談、今の無し! ほらアレ…… 神として世の流れを知っておく必要があるから! ほら下界の社会勉強ってやつさ」
「…… まあ、いいでしょう。 それで? 私に迎えに行けと? それとも生存の確認ですか?
言っておきますが、 今現在、冥府の入り口は大変な事になっています。
何処かの誰かさんが、優秀な番を連れ出してしょうもない事をしている様なので、その煽りを下の者が受けているのです。 この上私も留守となれば、ストライキが起こるかも知れません」
「わ、わかった。 フォローはしておく。
だが、ケルベロスは私にとって大切な存在なんだ。
ゼムスという神に託したはいいが、何の連絡もない…… 頼む、生存確認だけでいい。
有事も有り得るから、こんな事頼めるのお前しかいないんだ」
「私も白状ではありませんよ。 彼は私の同僚でもありますから」
「流石、俺のヘカテーたん!」
ビキッキ!! 以下、繰り返し。
この後、冥妃ペルセポネの登場で、ハデスはこってりとしぼられる事になった。
2018年10月4日修正 誤記修正。