夏の女神( 君と出逢い恋をした)
初めて参加のナツコイ企画で緊張しています楽しんでくださいね!夏の恋は思い出に残ります。素敵な恋をしましょうね!
桂太の友達がこんな話をしたそうだ。
場所は確認がイマイチ取れていないので、はっきりとは分からないけれど、あるコンビニに、もの凄い美人がアルバイトをしているという話を桂太は聞いたそうだ。
アルバイトを始めてから2週間だと言うことなので、新鮮な情報と言える。彼女目当てでアルバイトをしたがる輩や、店の売り上げが3倍も増えたという。
「美人ねぇ。本当の話?」と僕は言った。
「龍、本当だってよ。小林っていう奴が言っていたんだよ。場所がはっきりしないんだわ。小林が友人と遊んでいて朝帰りをしたんだ。早朝、人気の無い道に入り込んだらしくてさ、迷っていたらコンビニがあったんだとさ。で、中に入ると美人がいたというわけさ。『あまりの美人でめちゃめちゃ緊張した』と言っていたよ」
「ふ〜ん」と僕は疑わしげに言った。
「見てみたくない?」と桂太は言ったが、僕は特に見たいとは思わなかった。
美人が目の前にいたら緊張して時間が早く過ぎるし、変にビビりそうだしね。
3日後。
僕は最新作の映画を観るために1人で街まで来た。
夕方4時過ぎに映画が終わって、ポスターを買ってから急いで帰宅をした。
帰りのバスに揺られながら窓の外を見ていると、僕はいつの間にか眠ってしまった。
起きると降りるはずの場所からだいぶ離れた所まで来ていた。
「場所は純芳町? 全然知らんわ。何処さ? ヤバイ、終着に近いみたいだ」
僕は焦って停車ボタンを押して次の所でバスから降りた。
見知らぬ町にポツンと突っ立っているとね、いい年(18歳)して迷子になったみたいな心境。僕は親とはぐれたみたいな心細さを感じていた。
時間は午後5時半。周りは知らない風景だった。しばらく適当にうろちょろしながら歩いていたらコンビニが見えてきた。
店に入るとレジには、とてつもない美人がいた。
僕は1回、店の外に出て考えたが何も浮かばなかった。
桂太の話は本当だったのかもしれないな、と思い再び店に入ってみた。
瞳が眩しくて肌がツヤツヤで希に見る美人だった。夏の美人で、夏の女神で、夏の夢みたいだった。これこそ男が求める可憐で本物の美人さんだ。
笑顔が爽やかで純粋な美がそこにあった。僕は明らかに足が震えてビビっていた。美女を目の前にするとこうなるのだった。
僕はどうやら恋をしてしまったみたいだ。胸がドキドキする。僕はお茶と抹茶のアイスを手にしてレジに行く。
「お茶が好きなんですね」とレジの女の子は明るい声で言った。
(あ、あ、あれっ!? 炭酸水とバニラのアイスにしたつもりだったけど。間違った。おい、龍よ、緊張するなよ。おい、龍よ)と僕は心の中で呟いた。
「やっぱり、お茶は体に良いという事なんですかね?」と僕はよく分からない事を言った。(しまった、変な会話だよな。龍よ、緊張するな!)
「お茶はカテキンがありますからね。体に良いですよっ!」と女の子は笑って答えてくれたじゃないか。
僕はさりげなく名札を見た。
「桜井」とあった。
「そうでしたよね。カテキンですよね。あはははは。カテキンには勝てないっすよね」と僕は意味不明な事を言いながら笑ってみた。桜井さんも笑ってくれた。
「すいませんが迷子でして。バス停か電車の場所を教えてくれませんか? 自宅は蒼沢なんです」と僕は弱り果てて言った。
「蒼沢ですかぁ!? また随分、遠くまで来たんですねぇ〜!」
「これはポスターです。今日は街まで映画を観に来たのですが、帰りのバスで居眠りをしてしまって。喉が凄く渇いていたので、偶然、このコンビニを見つけたんですよ」
「へぇ~。そうだったんですか。電車の方が早いけれど、この時間だと午後7時15分くらいまでないので、バスだと7時には来ますよ。どっちが良いですか?」と桜井さんは言った。時間は午後5時50分だった。
「じゃあ、バスでお願いします」と僕は言った。
桜井さんは紙にバス停までの地図を書いてくれて、店の外にまで出てきてくれて丁寧に方角を教えてくれた。
「どうもありがとうございました。帰りますね」と僕は桜井さんに手を振った。
「気を付けてくださいね!」と桜井さんも笑顔で手を振ってくれた。
桜井さん、桜井さん。僕は桜井さんが好きになってしまったよ。素敵な人だったなぁ。探し求めていた女性だなぁ。いい年して迷子になるのも悪くはないかもね、と思いながら僕はバス停に向かった。
翌日、桂太に昨日の出来事を詳しく話して聞かせた。
「龍、そんなに美人だったのか?」
「本当に足が震えたからね。美人だったよ」
「見てみたいな。今日、これから、そのコンビニまで行ってみるか?」と桂太は言ったが僕は桂太に桜井さんを会わせたくなかったし見せたくなかった。
「おい、龍、どうした?」
「いやぁ〜、今日も良い天気だねぇ。鳥は自由だね」
「そうでなくてさ、美人を見に行くって話だよ」
「止めとくよ。昨日の今日だし。疲れているし」
「そうか。またの機会だな。近いうちにいこうぜ」
「まあね。う〜ん。本当に美人だったのは確かだから、僕の話だけでさ、もう十分じゃないのかな? わざわざ見に行っても仕方ないからさ、行く必要なしというのが僕の立場です。桂太、分かっただろう?」
終
読んでくれてありがとうございました! ナツコイ企画ありがとう!