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クリスタルの町

新しい町だ!


「にゃ!」


結構大きい町だー!


「にゃにゃー!」




「…にゃ?にゃーお?」


走りかけた猫は町の入り口で固まっている僕を振り返った。


だって…大っきい町、怖い!!






「にゃー、うにゃー」


やれやれだぜ、って言ってる気がする。

仕方ないじゃん!

広さは…いや勿論広いけど、それよりも人!

人口密度凄くない!?

こんなにいっぱい人住んでるの!?子供も大人もいっぱいいる!


…語彙力がクソだな。

もう少しちゃんと描写しよう。


全体的に白い石造りの建物が並ぶ町並み。

煉瓦造りの広い道。その両側に屋台がずらりと並んでいる。

子供から大人まで、楽しそうに行き交って……

…駄目だ、ぶっ倒れそう。


「にゃにゃー!」


あ、待って猫。僕を置いて行かないで。

君がちゃんと戻って来る保証が無いから!


「ぶにゃ…」


僕に首根っこを掴まれて猫は不満そうだけど、無視。

この人の多さではぐれたらシャレにならない…!

ってか何でこんなに多いの?多過ぎない?


「にゃーお」


うーん…とりあえず、宿屋でも探そうか?

ドロドロのボロボロだもんね。

それかギルドに行くんでも良いけど…


…あれ?


人混みの中をよろよろと、お婆さんが歩いていた。

荷物が大きくて何とも不安。




こんにちは、お婆ちゃん。


「あら…あらあら、こんにちは」


荷物、良かったら持つよ。

お婆ちゃん家まで帰るの?


「あらまぁ…そうなの、家まで戻るのだけど…悪いわねぇ…」


良いから良いから。

……あ!

僕ドロドロだからお前に持たす荷物は無ぇよって感じ!?


「おやまぁ…ホント、ボロボロじゃないの。冒険者かい?」


そうだよ!

さっきこの町に来たんだ!


「にゃっ!」

「まぁ、可愛い…」


お婆ちゃんの手から荷物が無くなり、代わりに猫が収まった。


お婆ちゃん、家どっち?


「あっちなの……本当に、悪いわねぇ…しかも貴方、勇者でしょう」


良いから良いから。

あれ、わかる?


「ありがとうねぇ。えぇ、えぇ、わかりますとも…」


そっか。装備の特徴とかかな?


そうだ、お婆ちゃん。

今日ってお祭りか何か?人が多いなって思って。


「えぇ、2日前からお祭りでね…5日間あるのよ」


えぇー…長いよ…


「真ん中の日だから、人が多いんじゃないかしら。

他の町からのお客さんも多いしねぇ」


あー、やっぱそうだよね。

町の人口とは思えないほど人混み凄いもん。


「貴方は1人…いいえ、猫ちゃんも一緒だから…旅は、2人で?」


そうなんだよ。

お婆ちゃんって若い頃、旅とかしてた?


「さぁ?どうだったかしらね…」

「にゃ?」

「ふふ…もう、随分前のことだから…」


はぐらかされた。


「あぁ、此処よ。本当にありがとう」


あ、この家?

中まで持っていくね!


「あらまぁ…優しい子だねぇ」


そう?普通だけどな…

僕の村もお爺ちゃんお婆ちゃん多いから、それでかな?


「いつもは帰るまでにもっと時間がかかるもの」


誰かに手伝ってもらえばいいのに。

っていうかその辺の若者が助けりゃ良いんだ!


「みんな、貴方のように優しいわけじゃないのよ…」


僕だって別に特別優しいつもりは無いんだけど…


「お礼は何が良いかしらねぇ」

「にゃ?」


え?いや、良いよお礼とか。

ほら猫、行くよ。


「にゃにゃーん」


猫は僕の身体を駆け上がり、頭の上に落ち着いた。


じゃあね、お婆ちゃん。元気でね!


「あら…あらあら…」


よし、宿屋行こう。

…またあの人混みに入るのは嫌だけど、仕方ない!


振り返ってお婆ちゃんに手を振ると、穏やかに振り返してくれた。





「ごめんねぇ、満室なのよ」

「うにゃ…」


言われた途端に僕はカウンターに頭をぶつけた。

あ、猫が真似してる。


…ちなみに受付嬢、他に宿屋は?


「あら嫌だわ、こんなおばさんに『嬢』なんて!」


宿屋のおばちゃんはケタケタと笑う。

このくらいの歳の人に『おばちゃん』はリスキーだからね!


「宿屋はここだけなのよ。昨日から満室なの」


えぇー…お祭りだから?


「そうそう。結構人が来るのよねぇ、こんな辺鄙なトコにある町にも!」


僕の村のがもっと辺鄙な場所にあるよぉ!

…ねぇ、お金は払うからシャワーだけ借りられたりしない?


「え?良いけど…」


本当!?ありがとう!綺麗に使うから!


「お金は良いわよ。部屋用意できなくてごめんなさいね」


ありがとう!正直助かる!


「シャワーは奥にあるからね」

「にゃ!」


タダで借りられてラッキー!

それにしても、どうしようね?

宿が無いならさっさとこの町出ちゃおうか…?




「にゃにゃー、にゃっ!」


猫って水が嫌いなんじゃなかったっけ。

何でウチの猫は風呂が好きなのか。

まぁでも、白いから汚れ目立つし…風呂好きなのは良い事かな?


「ぶにゃー!」


水を振るって落とすんじゃありません!

俺にかかるでしょうが!

1回拭いたのにびしょ濡れ!


「にゃーお」


細かい事言うなよ、みたいな顔すんな!




受付嬢、シャワーありがとう!


「にゃにゃー!」

「はいはい、どうも」


ねぇねぇ、武器屋ってどっち?


「武器屋はここを出て右にしばらく行って、大きな通りにぶつかる所で左だわね」


えー…右行って、左。

ありがとう!


「にゃにゃーん!」


僕と猫で大きく手を振ると、おばちゃんも振り返してくれた。



「さて、あんなにドロドロだったんだから掃除しないとね…」


宿屋の女将は溜め息をついた。

ボロボロの勇者(と、何故か猫)が「シャワーを貸せ」と言うものだから。

部屋も用意できなかったから貸したものの、掃除は面倒だった。


「全く、どんな無茶な旅をしたらあそこまでボロボロに…あら?」


愚痴をこぼしながら覗き込んだシャワールーム。

使われる前よりも随分、綺麗になっていた。






武器屋だー!


「にゃー!」


新しい武器か防具買うぞー!!


「にゃにゃー!」

「んあ?いらっしゃい…ってアンタ、1人だけ!?」


武器屋のおじさんは僕を見て面喰ったらしい。


「にゃー!にゃおーう!!」

「いや、何で猫!?」


うーん、真っ当なツッコミだなぁ。

とりあえず武器と防具見せてください!


「あ、あぁ…今の武器は?」


え?ただの剣とただの盾だよ。


「1番最初にギルドから支給されるやつじゃねーか。旅を初めて間もないのか?」


間もないねぇ。

ここが2番目の町だよ。


「にゃーご」

「…だから何で猫!?」

「にゃーん」

「ま、良いや…その武器の1段階上の武器だと、とりあえずこんなもんだな」


言いながら、おじさんがカウンターに剣と盾を置いた。


「剣が1500G、盾が1200Gだ。買うか?」



「んにゃ?」


僕が完全に停止したからだろう。

猫は僕の顔を見た後、僕の手元の財布を覗き込んだ。


…おじさん、1500と1200って言った?


「あぁ。そのくらいはあるだろ?」


…………。


「何だよ、散財したかぁ?馬鹿だなぁ!」


…おじさん、防具は?

勇者用のと、魔導師用。


「防具?…勇者用っつーと、[鎖かたびら]が1200Gで、[魔法のローブ]が1000Gだが…」


…………。


「…え、オイお前…何だ?盗賊にでも襲われたのか?」


僕の真顔っぷりにおじさんは流石に心配になったらしい。

が、安心してほしい。盗賊には会っていない。


…おじさん…


「お、おう。どうした?」


…[魔法のローブ]1200Gで買うから、猫用のサイズに仕立て直してくれない?


「にゃ!?」

「は!?」


カウンターに置かれた猫が僕を振り返った。

おじさんも猫と僕を交互に見る。


「仕立て直し!?…は、良いけど…猫用に!?…布地こんなもんだぞ!?」


こんなもん、と言っておじさんはローブを3回くらい折りたたむ。

…え、うん。そうだろうね。手間費が足りないならあと200だけ出せるけど…


「いや、お前の防具は!?買わないのか!?」


…言えない…

手持ちが1458Gで回復系のアイテムも欲しいからちょっと残すこと考えると猫の防具しか買えないとか言えない…!


「口に出てる!出てるから!」

「にゃにゃー!」


僕はどうにでもなるけど猫はまだ子猫だし僕より柔らかいし魔法使いだから防具大事じゃん…?


「1000!1000で良い!いや、800にまけてやるから!」


いや良いよ…わざわざ人間サイズの物を猫用に仕立て直してもらうんだから…

カウンターに1000Gを置いた。


「にゃ!?うにゃー!?」


ふらふらと店を出る僕に向かって猫が鳴く。

…僕その辺に居るから、防具貰ったら後から追いついてよ…


「にゃにゃー!」

「おい坊主!?…元気出せよ坊主ー!?」


後ろからそんな声が聞こえて来たので、背中越しに手を振っておいた。




いやーびっくりしたよ…

スライムしか出て来ない弊害がこんな所に発生するとは…

青いのは1Gだし緑のも2Gだし…

いやーホント、シャワーただで貸してくれて良かったわー。


…べべ、別に泣いてねーし!


…さて、少しはお祭りの雰囲気を感じておこうかな。


「いらっしゃい!ドリンクはいかが!?」

「美味しいわよー!」


そんな声があちこちの屋台から聞こえて来る。

ご飯は…猫と合流してからにしよう。

…いや、果たして猫は律儀に僕のことを待ってくれるのだろうか…

勝手に食べてそうな気もするな…


あれ、屋台があるのってメインの通りだけなんだ。

1本外れても道は大きいのに、屋台がすっかり無くなった。

人は多いけどね。

よくよく見ると冒険者っぽい人も多いね。

さて、猫が戻るまでどっかで時間潰して…



「うわぁぁぁん!」



…突如、幼女の泣き声が聞こえた。

え、何?何事?

音源の方向はどうやら広場のほうみたいだけど…



「くっ、次は俺だ!」

「いいえ!私が!」


広場に行ってみると、魔導師っぽい人々がみんな大きな木を見上げていた。

そんでもって木のふもとで幼女が泣いている。

……いや、どんな状況!?カオスか!


「俺のパーティがクリアしてみせる!」

「いや、僕のパーティが!!」


…どういう状況!?


「ほら、泣かないの!」

「やだぁ…あれが良いのー!」


…幼女を宥める母親らしき女の人。

木を見上げる魔導師。

外野で口論する冒険者。

ギャン泣きの幼女。

…どういう状況!?


あのー…どうかしたんですか?


「え?あら、貴方も冒険者なのね…」

「ぐすっ、ぐすん…」

「この子ったら、さっき貰った風船を飛ばしてしまって…」


え、風船?

あ…ホントだ。

皆が見上げてる木の上の方に、ピンクの風船が引っかかってる。


「それで冒険者の方々に取ってもらうようにお願いしてるの」


なるほど。


「お願い!貴方も是非協力してくださらない!?」


え、僕?

まぁ…良いですよ。


「お願いします!」

「ぐすっ…お兄ちゃん、風船取ってぇ…!」


うん、待っててね。

僕より先に誰かが取るような気も…



『レースミッション を 受注 しました!』



どこからともなく、そんな声がした。


…………うん?

…レースミッションって何?





『凄い掃除上手ね!頼んだら他の部屋もやってくれないかしら?』/○○の冒険奇譚, 第1巻, p.150, 『クリスタル』の宿屋の女将の言葉より抜粋

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