VS ダンジョンボス
『ポイズン・スライムボス が 現れた!!』
出オチじゃねーか!!
『勇者 は [威嚇] を 使った!』
ちくしょう…俺の思いを踏みにじりやがってこの野郎!
ダンジョンボスって言うから!
凄い強そうなの期待してたのに!
ついにスライム以外のモンスターに会えると思ったのに!
毒々しい色してんじゃねーよ!
『ポイズン・スライムボス は 怯んでいる!』
『行動順 が 最後 に なった!』
ピンク色?紫色?
どうせ毒々しいならマーブル模様とかで来いよ!
揃いも揃って単色だなてめーらは!
『勇者 は 怒り の あまり 地団駄 を 踏んでいる!』
『勇者 は [怒り] 状態 に なった!!』
「にゃ!?」
…あ?
何か状態異常になったんだけど。
「にゃにゃー!にゃ、にゃっ!!」
猫が何か言ってるけど残念ながら全くわからない。
(後でわかったんだけど『お前SPヤバいぞ!』的な事を言ってたみたい。)
えぇい!構えろ猫!
斬り刻んでくれるわっ!!
『猫 の ターン!』
「ぶにゃーっ!」
『猫 は [ファイアブレス] を 使った!』
火を喰らった部分が赤く変色した。
『ポイズン・スライムボス に 10 の ダメージ!』
あ?
効いてないな。
じゃあぶった斬ってやる!
『勇者 の ターン!』
ポイズンスライムに大きく剣を振りかぶって…
『勇者 は 攻撃 を 外した!』
だぁぁぁ!
外した!あんなデカい奴なのに!外すとか!!
『勇者 の SP が 4 減った!』
またSP減るし、何なのもう!
あぁぁイライラする!
『ポイズン・スライムボス の 攻撃! → 勇者』
『ポイズン・スライムボス は [毒液] を 吐いた!!』
紫色っぽい液体が僕に向かって吐き出された。
防御だ、防御!!
『[怒り] 状態 では [防御] が 使えない!!』
え。
『勇者 は 14 ダメージ を 喰らった!』
頭から変な液体を被る。
色もヤバいし、臭いもヤバい。
ってか[毒液]って言ってたし絶対毒液じゃねーか!
毒液頭から被ってるじゃねーか!!
「にゃー!?にゃにゃん!」
猫が慌てて駆け寄って来る。
うぅ…もしかしなくてもこれは毒状態に…!!
……身体から毒液が滴り落ちて行く。
身体に変化は……無い。
ひりひりもしないし、苦しくもならない。
『勇者 には 毒 が 効かなかった!!』
…………。
『ポイズン・スライムボス は びっくり している!』
『ポイズン・スライムボス の 行動順 が 最後 に なった!』
『猫 の ターン!』
僕はきっと、とてつもなく悪い笑顔をスライムに向けたに違いない。
…毒が効かないならテメーなんぞただのスライムじゃぁぁ!!
『ポイズン・スライムボス に 勝利した!!』
っしゃコラァァ!
ファイアブレスは全然効かなかったので、猫も物理攻撃に切り替えてゴリ押し。
ポイズン・スライムボスの残骸が辺りに飛び散っている。
『勇者 と 猫 は 182 経験値 を 手に入れた!!』
あ…僕のSPあと2だ。
通りで身体が怠いと思った。
いやまぁHPもあと5なんだけど。
「んにゃ?」
今回の収穫は…
まぁ経験値は入ったし、初めての状態異常も経験したし…こんなもんかな。
何より無事に勝てたしね。
猫はポイズンスライムボスの残骸をつついている。
コラ。あんまり突っつくんじゃありません。
…ん?
デジャブだな。
何時だっけ、確か冒険を初めてすぐの…
――パクッ。
『猫 は ポイズン・スライムボス の 残骸 を 食べた!!』
「にゃ…にゃぉ…」
『猫 は [猛毒] 状態 に なった!!』
おい!
うぉぉぉい!
馬鹿なの!?馬鹿じゃん!
毒消し!ありったけの毒消しを使います!治る!?
『[猛毒] 状態 は 毒消し × 10 で 回復 できます が 使用 しますか?』
します!します!!
あとついでにヒールポーションも使います!
何時ぞやと同じように猫を毛布でぐるぐる巻きにする。
この間は焦げたスライムの残骸で、今回は毒入りスライムの残骸!?
何でこの子はすぐに色々食べちゃうの!?
いや大丈夫、きっと今回も瀕死の状態を乗り切ってくれる…!
…パーティに僧侶とか、回復魔法使える人がいたらもっと安全だったんだろうな。
何だかどっと疲れたよ…
土の壁にもたれ掛かって、溜め息。
すると……身体が傾いた。
後ろに、だ。
え、え!?
ぐにゃ、と壁が沈んだんじゃなくて、僕の場所だけ、こう、隠し扉みたいにいきなり…!!
体勢を整える間も無く、僕と猫は後ろ向きに落下した。
……痛ぇ。
主に背中と頭が痛い。
何か…真下に落ちた感じじゃなかったんだけど…
傾斜があったっていうか…
「う、にゃ…?」
猫は僕の腕の中で、哺乳瓶からヒールポーションを飲んでいる。
砂埃を被ってるけどダメージは無かったみたい。良かった。
…僕のHPはあと1だけど。
どうにか身体を起こして、落ちて来た方向を見上げる。
あ……階段になってる。
土砂に埋もれてる部分から少しだけ段が見えている。
僕、階段を転げ落ちた感じ…?
ってことは、階段があった場所が壁で隠されてた…?
誰だよそんなことしたの!
何だよその落とし穴(側面)みたいなトラップ!
危ないでしょうが!!
階段自体はそんなに長くないし、
この空間もそこまで広くない。
ここは…何?
「んにゃ…にゃー…」
猫はとある方向を見た。
(余談だけど猫のHPは10くらいあるので下手をすると僕より元気だ。毒状態だけど。)
猫が見た方向は…壁。
…ん?何だろ…
壁に、明らかに人工的な凹みがあるんだけど…
近付いて見てみると、何か…何だろ、何かをはめ込めそうな凹みがある。
大きさは…僕の掌はすっぽり入るくらいの四角形。
よーく見ると、何か模様みたいなのも彫り込まれてるような…?
…何かの仕掛け?
でも現時点で僕らの持ち物に使えそうな物は無いし……
……放置!
猫も調子悪いし僕もあと少しで死ぬし、放置!!
階段の土砂を片付けている間に猫は復活したんだけど…
「にゃっ!にゃっはっー!」
『猫 は [ポイズンブレス] を 覚えた!』
何かヤバい魔法を覚えている。
魔法を覚える仕組みってそれであってるの??
まぁ良いや。
とにかく進もう!洞窟を出よう!
「にゃっ!」
…数時間後、僕らは初めての洞窟から抜け出しました。
勇者メモ
・[怒り]状態だと防御できなくなるし、攻撃の命中率が下がるみたい。
・↑しかも自分のターン終わる毎にSPが持ってかれる。
・↑ただし、攻撃力は多分倍くらいになってたっぽい?
・[毒]と[猛毒]って何か違うのかな?今度調べよう。
・洞窟で結局ブルースライムとグリーンスライムしか出て来なかった。
『毒が効かない体質…というのは、非常に珍しい…人間では極稀な体質でしょうな…』/○○の冒険奇譚, 第1巻, p.124, 生物学者の言葉より抜粋
ちなみに猫もポイズンブレスを覚えたので毒耐性(小)が付いた。