クォーツの町
前回までのあらすじ!
町長が森に入っちゃった!
→大変!町長がスライムボスに襲われてる!
→火あぶり。
→大火事。
…火事、ちゃんと消えて良かったなぁ…
「見ての通り…ここ、『クォーツ』はあまり大きな町ではないんだ」
大丈夫、僕の故郷より大きいよぉー。
「武器は揃わないかもしれないけど、しっかり準備してから次の町を目指すと良い」
「にゃ!」
「そうだ、ギルドに行って報酬を貰うのを忘れないようにね」
報酬かぁ。何貰えるんだろ。
「ギルドからの依頼なら現金が多いね。あと回復薬も貰えたりするよ」
「町の人からの依頼だとアイテムが多いかしらね」
なるほど。
うーん…どっちが良いんだろう。
あ、次の町ってここからどれくらいかかります?
「そうだな…3日ってところかな?」
「さっき北の森に入ったでしょう?もっと奥に洞窟があって、そこを抜けるとすぐに次の町よ」
洞窟!わくわくする響き!
…って、何が必要かなぁ?
「にゃ?」
君に聞いてもわかるまい。
「洞窟には毒性を持ったモンスターがいるから、毒消しを忘れずにね」
毒消しか。
そう言えばここに来る途中、色々薬草摘んだんだった。
これそのまま使えるのかな?
「え?薬草?…わ、本当だ」
町長は僕が取り出した各種薬草を見て目を丸くする。
「いくつか採集したなら…そのまま食べるよりも薬剤師に調合してもらうほうが良いかな」
「薬屋はこの街には無いのよ。ごめんなさいね」
薬屋?道具屋とは違うの?
「あぁ。それじゃ店について教えてあげよう」
よろしくどうぞ。
「勇者殿が旅の途中で使うのは…宿屋、道具屋、武器屋、あと薬屋と、鍛冶屋かな」
…武器屋と鍛冶屋は違うの?
「薬屋と鍛冶屋では、素材を持ち込むと薬や武器を作ってくれるんだ」
「道具屋、武器屋ではそこで作られた物を売っているのよ」
ふーん。
宿屋、道具屋、武器屋は大抵見るよね。
僕の故郷は無かったけど。
「大きな街では全ての店が揃ってるんじゃないかな」
どうせ僕の村は小さいですよー!
「旅は順調かしら?他に何かわからない事があったら言ってね」
うーん…僕スライムしか倒したこと無いからわからない事がわからないというか…
…そういや、さっきスライムボスの攻撃、何で僕が代わりに受けられたんだろう。
「にゃ!にゃーお!」
猫が僕の足をばしばしと叩く。
…特技の画面を確認しろって?…そういや何か覚えたよね。
僕はその場で特技の画面を表示させた。
あ、僕の特技増えてる。[守る]と[威嚇]だって。
猫は…猫も[威嚇]覚えてるみたい。
何かしたっけ?スライムボスにガン付けたくらいしか…
「勇者殿は[威嚇]を覚えているのかい?珍しいなぁ」
珍しいの?
「ジョブによって覚えられる特技が違うからね。[勇者]で[威嚇]を覚えてるのは珍しいんじゃないかな」
「あら、猫ちゃんも覚えてるのね」
猫が奥さんに撫でられてごろごろ言ってる。
デレデレしおって!
「[威嚇]は確か、敵の行動順を最後にさせるんだったかな」
それは便利だね。
また今度実戦で使ってみよう。
「そうだ、特技を使うとSPが減るけど…SPが0になっちゃうと動けなくなるから気を付けてね」
え、そうだっけ?
…本に書いてあったような、そうでもないような…
MPは0になっても大丈夫なの?
「MPは魔法が使えなくなるだけだから、動くことはできるよ」
「魔導師は常に気にした方が良いわね」
猫のMP気を付けとこう。
…いや、猫は物理攻撃のが強いのか魔法攻撃のが強いのか、イマイチわかんないけど…
「SPは0の状態で戦闘を終えても大丈夫だけど、HPは死んじゃうから気を付けて!」
「蘇生の魔法を覚える人をパーティに入れると、旅がグンと楽になると思うわ」
やはり何処かのギルドで僧侶を仲間にするしか…
あ、この町のギルドって…
「にゃ、にゃにゃー」
猫が首を横に振った。
そうだね。空っぽだったね。ダメだね。
「次の町のギルドはここよりずっと大きいよ」
町長が慰めるように言ってくれる。
良し、早く次の町に…
そうだ、その前に畑を見に行こう。
「え、畑?って…ギルドの裏にある?」
そうです。
ちょっと荒れてたのが気になったので、ギルドのお姉さんに何か手伝えないか聞いて来ます。
「そ、そうかい…?何だか悪いなぁ、勇者殿に畑仕事だなんて…」
大丈夫です。得意なんで。
行こう、猫。
「にゃー?」
…早く町長の奥さんの膝から降りなさい!
畑仕事をして、いくつか町のミッションを受けて。
僕達が次の町に向けて出発したのは、3日後の事だった。
『いやー、今時の若者があんなに畑仕事に慣れてるとは思わなんだ!』/○○の冒険奇譚, 第1巻, p.76, 『クォーツ』の畑管理人の言葉より抜粋