強敵出現
ハローハロー、勇者です。
町を出て森の中を歩き回ること数日。
ちょっと強敵に出会ってしまったぞ…!
『イエロースライム が 現れた!』
いや、うん。スライムなんだけどさ。
今まで青や緑だったのが黄色になっただけなんだけどさ。
「ぶにゃ…」
多分10分くらいこいつと戦っている。
何でって?
攻撃が効かないんだよ!
「にゃっはー!」
『猫 は [ファイアブレス] を 使った!』
『イエロースライム に 1 の ダメージ!』
まず火が効かない。
スライムは火に弱いって定説が崩れてしまった。
あ、でもポイズンスライムも効かなかったか。
まぁそれは良いや。次。
『勇者 の 攻撃!』
『イエロースライム には 剣撃 が 効かない!』
物理も駄目なんだよね。
ポイズンスライムは物理が効いたからゴリ押せたけど、効かないっていう。
うーん、どうしよう。
猫に魔法でゴリ押してもらって…いや、もう回復薬が無くなる…
『イエロースライム の 攻撃! → 猫』
「ぶにゃっ!」
『猫 に 2 の ダメージ!』
そんでもって無駄に素早い。
猫の回避がさっきから失敗しまくっている。
ダメージは大したことないけど…
持久戦はヤバいかもしれない。
『イエロースライム は ぽよぽよ している!』
あとこいつ攻撃の後いちいち挑発すんのやめて欲しい。
ぽよぽよすんな。
『猫 の ターン!』
「ふしゃぁぁっ!」
『猫 は [ポイズンブレス] を 使った!』
お、そういや使ってなかったね。
毒にめっちゃ弱い可能性も…
『イエロースライム には 毒 が 効かない!!』
あ、はい。効きませんでしたね。
「ぶにゃー!!」
『猫 は イライラ している!』
『猫 の SP が 3 減った!』
猫よ…落ち着いてくれ…
いつも僕のセラピーをしてくれるお前のSPが減るだなんて。
『勇者 の ターン!』
困ったな。
…ちょっとたんま。
『勇者 は [たんま] を 宣言した!』
『次 の 行動 は 宣言 直後 に 開始 できます!』
ん?
…相手の前に「俺のターン!」って言えば割り込めるってことかな?
よくわかんないけど…さて、どうしようか…
…ん?猫、こっち向いてどうしたの…
「ニャァァァッ!!」
『猫 は 八つ当たり した!』
『勇者 に 5 の ダメージ!!』
ぎゃぁぁぁ!?
いやいやいや!
痛いよ!顔面引っ掻かれること、そうそう無いよ!?
何これ!?猫のSP減ったせい!?
『イエロースライム の 攻撃! → 勇者』
『勇者 は 防御 に 成功した!』
イエロースライムは早いけど馬鹿らしい。
盾構えっぱなしだけど素直にぶつかって来る。
おかげで僕はダメージ未だに0。
『猫 の 攻撃!』
「シャァァァッ!」
猫が果敢にイエロースライムに飛びかかったけど…
『猫 は スライム に 弾かれた!』
僕なら剣弾かれるだけなんだけどね。
猫だと全身弾かれるからね。
「むにゃー!!」
『猫 の SP が 5 減った!』
ああああ猫のSPがゴリゴリ減ってく。
『イエロースライム は ぽよぽよ している!!』
ぽよぽよすんな。
さて、僕はどうしようかな…
『[たんま] を 解除 しますか?』
続行で。…何だこのやり取り。
たんまって自分のターンで解除したらどうなるんだろ。
まぁ良いや。
剣(っていうか物理)は効かない。
んで、火も効かない。毒も効かない。
…僕らにできることって他にあったっけ?
『イエロースライム の 攻撃! → 勇者』
盾越しにイエロースライムが体当たりした感触が伝わってきた。
えーと、手持ちアイテムで何か…えーと…
ポーション、マジックドロップ、毒消し、食料、水……
……水?
『猫 の ターン!』
あ、たんま解除して良い?
『[たんま] 解除!』
『勇者 の ターン!』
えーと…まず水を用意します。
『勇者 は ただの水 を 取り出した!』
そんで、この間のお祭りで買った水鉄砲に水を入れまして…
『勇者 は 水鉄砲 を 取り出した!!』
ここまで来たらやる事は一択。
『勇者 は イエロースライム に 水 を かけた!』
黄色の透明な表面が、水を受けて波打った。
あれ?避けられるかと思った。
素直に当たってくれたわ。
『イエロースライム が 膨らんだ!』
吸水素材かな??
「にゃー!?」
猫と大体同じくらいの背丈(?)だったのが、一回り大きくなった。
…とりあえず、新しい反応だぞ。
『猫 の ターン!』
「にゃにゃー!」
『猫 は 勇者 の 後ろ に 隠れた!』
隠れるんじゃないよ。
何かしなさいよ。
…いや、何かしても何も効かないのか…
『勇者 の ターン!』
え、もっかい僕?良いの?
まぁ良いけど…
『勇者 は イエロースライム に 水 を かけた!』
『イエロースライム が 更に 膨らんだ!』
Oh…
僕と同じくらいになったわ…
心なしかイエロースライムも挙動不審になった気がする。
…どこまで膨らむかな。
『猫 の ターン!』
…え?スライムのターンは!?
まさか膨らんだせいで遅くなってんの?
「にゃ…」
猫は何をしようか迷ってるみたいだ。
ウロウロと僕の周りを歩いている。
「…んにゃ!」
おおっと、またアイテムポーチにしがみつきおって…
何すんの。
『猫 は バケツ を 取り出した!』
OK、目的はわかった。
その任務は僕が請け負おうじゃないか…!
「にゃーお!」
『猫 は 勇者 に バケツ を 渡した!』
『勇者 の ターン!』
『勇者 は 川 まで ダッシュした!!』
川で水を汲むこと…5回。
水をどんどん浴びせた結果、イエロースライムはどんどん膨れて…
『イエロースライム は 動けない!』
ついに彼は動けなくなってしまった。
大きさは軽く僕の倍はあるだろう。
「にゃ…」
狭い道に置いといたら多分「何か透き通ってて黄色い壁」に見える。
表面が若干波打ってるのは動こうと頑張ってるからなのか…
何か不憫になってきた。
「にゃ、うにゃ…」
『猫 の ターン!』
猫はそろそろとスライムに手を伸ばす。
そして表面を突いた。
瞬間、
『イエロースライム は 破裂した!』
「にゃー!!?」
スライムは一気に辺りに爆散した。
びちゃびちゃとスライムの破片が地面を埋める。
猫が僕の頭まで駆け上がったけど、僕にもスライムの破片が飛び散ってるからあんま意味無い。
…何これ!不愉快!
『スライムの残骸 × 10 を 手に入れた!』
顔に付いた黄色いベタベタを取っていると、そんな声が聞こえた。
そんなにいらねぇ!
何!?こんなに無駄な倒し方しないといけないスライムなんて居る!?
「にゃぶぅ…」
猫も不愉快そうに毛繕いを始めた。
…とりあえず攻略は出来たぞ!
「…にゃ」
猫!…残骸を突っつくんじゃない!
お前また食べる気だろ!
「うにゃ…にゃーご」
何?また特技覚えるかもって?
覚えるのは良いけど瀕死になるでしょうが!
「にゃ、にゃーにゃ…!」
よくわかんないけどこいつ多分カッコいい事言った!
『漢にはやらなきゃいけない時がある…!』的な事言った!多分!
…よし、回復薬は一応10個あるし…
…食べてみるが良い!
勇者メモ
・猫は普通にお腹壊して終わった。何も覚えなかった。
『イエロースライムに水系の魔法は効きません』/○○の冒険奇譚, 第1巻, p.227, 魔法研究家の言葉より抜粋