表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/40

旅立ちの日

僕は『勇者』。


生まれた時から勇者だったんだから、僕は勇者。

それ以上でもそれ以下でもない。


普通に育てられて、ある日突然母さんに『今日は旅立ちの日よ!』と言われる。


そういうものなのだ。勇者なのだから。


村には、何時からあるのか知らないけど『ギルド』と呼ばれる建物があり、そこでパーティを作る。


そして『魔王』を倒す旅に出かけるのだ。








それは良いけど、良いっていうかもう『世界の理』だから僕がどうこう言うこともできないんだけど。


問題がある。


僕、剣術とか習ったことないんだよね。


大きな街だと『師範』という人がいるらしい。

剣術、体術、魔術を教える人まで様々。

普通、勇者は子供の頃から師範に剣や戦い方を学ぶ。


僕が生まれた村は小さい。師範なんていない。


いや僕もチャンバラくらいはやったことあるよ?子供の遊びの定番だよ?

かっこいい形の棒を見つけた時のときめきは忘れないよ?


でも、それだけ。


母さんから『これを持って行きなさい』と言われて渡されたのは、村では見たこともないような、上質な剣と盾。それから装備一式。


…もっと大きな街の勇者ならもっと良い装備で旅立てるのかな。

その辺は勇者である僕でもわからない。


剣はともかく盾とか持って歩いたこと無いよ。

正直渡されても困る。


でも僕は勇者だから、ある日突然旅立ちを宣言されて装備一式を渡される。


モンスターにすら会ったことないのに、一体どうすれば良いのか。


でもまぁ、仕方ないよ。世界の理だからね。











それもまぁ良いんだけど、次の問題だけは良くない。


村のギルドにパーティメンバーがいない。


僕に友達がいないわけじゃない。でも友達は『村人』や『商人』で、パーティに入れない。


そもそも村が小さいから、ギルドに所属してる人数も少ない。


更に、この村ではしばらく勇者が生まれなかったらしい。


だから勇者以外の人でパーティを組んで、数年前に魔王退治の旅に出たらしい。

(勇者を入れないパーティ編成は、世界的にも最近流行ってるらしい。何でかな。)


おかげでギルドはすっからかん。物の見事にすっからかん。


これは許さない。


いきなり旅立ち宣言も装備一式授与も許すけど、これは許さない。


そもそも何で勇者は13歳にならないと旅に出られないんだよ。誰だよそのシステム考えたの。


他の人はいつでも旅に出られるから、もう出ちゃってるじゃん。


ギルドに所属できるの10歳からだけど、10歳の子すらいないってどういうこと。許さない。


っていうか何で勇者の僕を置いて旅に出るの。意味わかんない。

ギルドも何で承諾すんの。馬鹿じゃん。


流石に母さん、それから村長に抗議した。


一晩村の大人達が話し合って、出した結論がこちら。



『勇者よ!猫を飼っているだろう。その猫を連れて行きなさい!』



満面の笑顔の村長と真顔の僕。

村長に抱えられた、僕ん家の子猫。


もう言い逃れはできないと悟った。



勇者(13歳)、猫(1歳)と魔王を倒す旅に出ます。




『旅立つ時、勇者は悟り切った顔をしていてな…儂はこいつは大物になると思ったんじゃよ!』/○○の冒険奇譚, 第1巻, p.12, 村長の言葉より抜粋

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ