彼女は凛として咲く花の如く 4
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「小夜、ご飯食べよ!」
午前の授業が終わった後、あたしは声を掛けた。
友達からは今日はそっちか、とも言われるけどごめんと謝った後で小夜の元に駆け寄る。
「なんで私の方へ来るのよ?」
小夜が睨む。
けれどそれも慣れたのもで、今では怯みもしない。
「そんな事言わないで一緒に食べよう。どこで食べるの?屋上かな!それとも中庭?」
「付いてこないで」
あたしは教室を出る彼女に付いていく。
そうしてやって来たのは中庭。
設置されているベンチに並んで座る。
小夜はいつものみたいにサンドイッチ。あたしは自前のお弁当。
「それにしても、あなたもしつこいわね。こんな私と付き合って何が楽しいのかしら。いつの間にか名前を呼び捨てにされているし」
「ええ、いいじゃん!古谷さんの事は呼び捨てにしてるし、羨ましいんだぞ。それに友達でしょう、あたし達」
「そうだったかしら」
ジト目の小夜。
「あたしはそう思ってる。小夜はさあ、こんな私~って言ってるけど、あたしからすれば魅力的なんだぞ。美人で胸も大きいし」
「胸は、関係あるのかしら?」
溜息を吐く。
「小夜は――なんか抱えているみたいだけどさ、それで周りのひとから離れようとしてない?」
「それは」
目を伏せてしまう。
「それでも、あたしは小夜が好き。だって可愛いし」
「可愛いって。それはむしろ、あなたの方だと思う」
「そうなの?」
「だって、明るくて楽しそうで沢山の友達がいるじゃない。魅力がなければできない事だと思う。私にはできない」
その答えを聞いて小夜は、ずっとひとりだったんだと思う。
なんでひとりになろうとするのかは分からない。
けれど彼女はきっと孤独である前に、ひとと触れ合う事に慣れていないんだと思った。
「まったく、そんな事を言ってる癖にお相手がいるんだから」
「お相手って」
「隠しなさんなって!あたしは知っているんだから」
「わ、私は……」
気恥しそうに俯いてしまう。
おーおー、こんな恋バナにも耐性の無いことで!
愛いヤツよの~。
「ぶっちゃけ、あの子のどこが好きなのさ!」
前に見た男の子――殻木田君を思い出す。
少し背は低いけれど、顔は頬に傷があるけど悪くなかった。
雰囲気としては子犬、いやこの間のボールを抱え込んでいる姿からするとハムスターにも見えるかも。
「その……いつも笑いかけてくれたり、こんなわたし…にもずっと付き合ってくれる……ところ…とか」
言いやがったよ、コイツ!
これはマジだね!
「それから…辛い時には傍に居てくれたり……受け止めてくれるところ…とか……」
おやおや、結構親密そうではありませんか?
くう~これはタマンね!
「って、いったい何を言わせるのよ、あなたは!」
顔を赤くした小夜が叫んだ。
「小夜、あたしの事やっぱり名前で呼んで欲しいな~」
「なんでそうなるのよ?」
「その方が友達っぽい」
「はあ……」
溜息を吐いた後、小夜は言った。
「私はあなたのそういう強引な所、まあ嫌いじゃないわよ。〝浅葱〟」
その答えを聞いて、あたしは小夜に抱きついた。
「小夜~!」
「ちょっと、離れなさいよ!」
声が響いた。
ああ、小夜はあたしの友人だ。
面倒くさがりで怠惰で、どこかミステリアスで。
でもその裏には色々な表情を持っている。
それが彼女を輝かせる。
――凛として咲く花の如く。
彼女は凛として咲く花の如く 了
ふう、終わりました。
恋バナええのう~(笑)
浅葱さんには、今後たまに本編にも出て貰おうと思います。