表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚空の【セカイ】と魔女 外伝  作者: 白河律
ある休日のふたり
2/20

ある休日のふたり

ツイッター作品、二弾。今回は恋愛モノ。

甘い。

爆発しろ!

ある休日のふたり


それは五月のある休日。

暖かい日差しの中を俺――殻木田順平は歩いていた。

片手にはスーパーの買い物袋を持って。

買い出しをしてきた帰り道だった。

さて、そろそろお昼時。お腹が空いてきました!

今日のお昼は何にしようかな?

インスタントラーメンにしようと思った。


インスタントラーメンと侮るなかれ!

麺やスープは市販でもそこに味噌や醤油、様々な具材を混ぜてみれば自分好みのオリジナルラーメンの出来上がり!

むふふ。ごっはん、ごっはん!

そんな事を考えている時だった、そのひとを見つけたのは。

ふらふらと具合が悪そうに歩くのは、俺の学校の――虚木小夜先輩だった。


「先輩、どうしたんですか!」

急いで駆け寄る。

先輩は俺を見ると、安心したように溜息を吐いてその場にしゃがみ込む。

俺は知っている――このひとは〝魔女〟だ。

普通の人には無い力を持っている。

そんなひとに一体、何が?

「殻木田くん……」

「先輩……」

見つめあう。

「お腹空いた……」

「え……?」


事の顛末はこうだ。

休日に入り、お財布にお金の無い事に気が付いた先輩。

お金を降ろそうにも、銀行は閉まっていた。

要するに先輩は素寒貧だった。

「先輩、知ってます?お金ってコンビニとかでも降ろせますよ?」

「そうなの?」

その返事に頭を抱える。

ああ、もうこのひとは!


魔女の先輩は、その肩書きに似合う浮世離れした雰囲気を持っている。

長い黒髪、物憂げは瞳、スタイルのいい身体。美人だ。

その実、中身は――ただの天邪鬼で面倒くさがりだったりする。

現に今も見かねて訪れた先輩の自室で、空腹でソファに横になっている。

後、案外世間知らずかも。

俺はそんな先輩のために、料理中だった。


「先輩できましたよ」

「ありがとう」

「それにしても、俺のお手製のインスタントラーメンなんかで良かったんですか?」

俺は知っている。先輩はわりとお金持ちだ。

聞いた話によればお父さんは海外にいて、仕送りをして貰いながらマンションにひとり暮らしをしている。

お母さんは――もういない。


「あなたの手料理が食べてみたかったのよ、一度」

ソファに横になったまま先輩が言う。

「俺は別に料理上手ではないですよ?お金を降ろして、外で食べてもよかったんじゃ……」

「外食はもう飽きたのよ」

先輩が呟く。その呟きが少し寂しげに聞こえた。

先輩の部屋には、お手伝いさんがたまに来る。

でも、家族はいない。


「分かりました。なら召しあがって下さい!」

ソファの前のテーブルの上に、ラーメンを置く。

すると先輩は起き上がる事なく言った。

「お願いがあるの、殻木田くん。その……食べさせて欲しいの。最初の一口だけでいいから……」

俺を上目遣いで見る。

その仕草が可愛らしくて、つい甘やかしてしまいそうになった。


それでもなんとか堪えて言う。

「自分で食べてください!」

「私は今お腹が空いて全然、動く気力が出ないの。その、だからお願い……」

先輩は時々、俺に少し意地悪だ。

でも今日はなんだか――やっぱり寂しげに見えて。

「いいですよ。今日だけ、ですからね」

そう答えると、先輩は柔らかく微笑んだ。


「先輩、そのいきますよ?」

「え、ええ……」

ふたりの間に漂う奇妙な緊張感。それを乗り越えて先輩に所謂、『あーん』をする。恥ずかしさに死にそうになった。

でもそれは、先輩も同じようで頬が赤い。

先輩に食べさせると、満足そうに笑う。

「殻木田くん……」

そんな先輩が見たくて、結局殆ど食べさてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ