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虚空の【セカイ】と魔女 外伝  作者: 白河律
魔法少女マジカルサヨ☆りん
12/20

魔法少女の逆襲

今回は大分、アレです(笑)


     ◇


 敗北した魔法少女達はこれまでと同じように、ビルの屋上――今やコウモリ達の根城ともいうべき場所へと運ばれた。

 そこは怪異の成す魔の世界だった。

 攫われた人々はコウモリ達によって押さえつけられ、また別のコウモリに噛み付かれる。

 人々は逃れようとするが、如何様にもならない。

 僅かな悲鳴と共に血を吸われるだけ。

 夜の闇の中で生まれた魔は、人をただの贄へと変える。

 命ある限り、吸われ続けるのだ。

 この場に響く声は終わりの無い苦悶の声と苦痛だけ。

 血と共に生体エネルギーを吸われ、屍の如く倒れる人々の奥に〝それ〟はいた。その存在は他のコウモリ以上に大きく、人と同じ大きさがあった。また、人に近い姿をしていた。


 血を吸う怪人――吸血鬼とも言えたかもしれない。


 それこそがこの怪異の大元であった。

 吸血鬼は――自身の分身たるコウモリ達が、攫ってきた魔法少女達を見て嗤った。魔法少女達から感じる生体エネルギーはこれまでの比ではない事を感じたからだ。


 それに――美しい少女達を見て思い付いた事があった。



 攫われた魔法少女達の身を案じ、事の行く末を不安視する声の上がる街にそれは降りた。

 怪異の大元たる吸血鬼、それを取り巻くコウモリ達。それと――十字架を模した鉄片に鎖で縛り付けられた魔法少女達。

 怪異達は人々が見渡せるような高さのビルの上に降り立つと、十字架を突き立てる。

 それから、街に響くような声を上げた。


 ――何が、いったい何が始まるというのか?


 人々の関心は否追うなしに集まった。


 ――そうして始まったのは凌辱であった。


 

 吸血鬼は意識を失い、鉄片に張り付けられた少女達の身体に服越しに触れ始めたのだ。


 まずは赤いドレスの少女から。

 横から大き目の胸に触れる。

 「あ……」

 気を失いながらも声を零す。それを確認した吸血鬼はその手に力を込め、少しずつ強く大きく胸を揉みしだいていく。

 「ん…んん…あっ……っふ……」

 胸は手の動きのままに形を変え、声は零れ続ける。

 一度、胸から手を離すと今度はスカートから伸びる足に、太ももに触れる。

 健康的で瑞々しい太ももに触れると、ゆっくりと指を這わせていく。あくまでも柔らかいタッチで。

 「んっ…ん、ああ……」

 暫く触れた後、正面に立つとしゃがみ込んで、明らかに人間のそれよりは長い舌でしゃぶるように舐め始めた。舐められた太ももは唾液で濡れて、てらてらと滑り気を帯びる。

 「ああ!んんん!んっ……!ふぁ!」

 激しく吸い付くように舐めあげられていく。

 零れる声が高く、激しくなる。それに合わせて身体を、特に足を振り払うように震わせるが縛られていては防ぎようが無い。

 「あっ!ああああ!んんん――!」

 それは両の足に、更には少しずつスカートの奥の足の付け根まで続いた。

 「あ…あ…はぁ…はぁ……」

 しかし後、一歩という所で止まる。吸血鬼が離れていく。

 止まった後で少女の零す吐息には、明らかに昂ぶった女の色気があった。



 次は黒いドレスの少女へと向かう。

 後ろから両の胸をわし掴む。人よりも明らかに大きな膨らみが揺れる。

 「んっ……!」

 強めの力に唇から苦痛に似た声が漏れる。

 そのままいきなり強く、たわわに実った胸を激しく絞り上げていく。

 「んん!やああ……あああっ!」

 赤いドレスの少女のものよりも大きい双丘は、その手には収まりきれずにはみ出す。

 怪人の手にも余るそれは、視覚的にも大きく弾みながら触れる者の思うままに弄ばれていく。

 余りに大きく跳ねるので、開いたドレスの胸元から零れそうにもなる。

 「あああ!ああ…はあ……んん――!」

 少女は胸に与えられる刺激から逃れるように、身体を反らすがどうする事もできない。

 それをいい事に足の付け根付近にも、手を伸ばすと胸と合わせて触れ始めた。

 「んん…んんん……ああっ、はああ――!」

 留まること無く続く刺激に、少女の身体は激しく揺れる。

 自身を縛る鎖を激しく擦る音を立てながら。

 更に首筋にも舌を這わせる。くちくちと水音を立てながら。

 これから自身の贄として血を吸うのだと言う事を示すかのように。

 「やあ、やああ…ああ……あああ――!」

 少女の唇から響く声には、深い艶を感じさせるものがあった。

 行為は終わる事なく続いた。



 魔法少女達が魔によって凌辱され、犯されていく光景。

 それは少女達を希望として見ていた街の人々に、深い絶望を叩きつけた。

 この隙に他のビルに囚われた人々の救出、吸血鬼の狙撃を警察は試みたが、他のコウモリに阻まれ失敗に終わった。

 もはや、誰も何の声も上げない。

 誰も抵抗しない、できない。

 そればかりか一部の人間からは、魔と少女達のより深い交わりを求めるような劣情の入り混じった空気すらあった。


 それこそが――怪人の望んだ事。


 その為に見せつけるように少女達に触れて、その身体を弄んでいるのだから。

 その事には血を吸う前に、感覚を高ぶらせる事でより深く生体エネルギーを吸い出す目的もあったが。


 この怪人の生まれた元となった想いは――他者からの略奪。

 希望が奪われていく。



 希望を誰もが失いつつある街で、ひとりの少年――殻木田順平は奥歯を強く噛んだ。

 怪人が少女達を犯す光景に言いようのない感情を覚えて。

 繰り返される凌辱に見ていられず、最初は目を背けていたが黒いドレスの少女に怪人が触れてからは――自身の中に深い、黒いモノが湧きあがるのを感じた。


 実際に自身の目で初めて見た魔法少女達が、特に黒いドレスの少女は――自身が普段、付き合いのある魔女の先輩に酷く似ていたからだ。

 そのひとは、あの魔法少女に劣らない程に綺麗で。どこか浮世離れした雰囲気があるかと思えば、ただ怠惰な面倒くさがりで。けれど、自分には優しくしてくれる。

 時間で言えばそれ程でもない。けれど、その少女は少年にとって大切な――それよりも大事なひとになりつつあった。


 そのひとに似た女の子が何者かに、その身体を触れられる光景は耐えがたいものだった。


 ふらり、と近くに転がっていた鉄棒を拾い歩き出す。

 目指すのは吸血鬼達のいる所。

 それを見た少年の友人は、彼を止めた。

 「殻木田君、君はそんなの持って、どうするつもりなの?」

 「あのひと達を――あのひとを助けに行く」

 「無茶言わないで!僕らみたいな普通の学生が行っても、死んじゃうだけだよ!」

 「とめるな――」

 その声は低く、酷く冷たい声だった。

 心無しか、瞳が色を無くしているようにも見えた。

 少年の友人である山岡響(やまおかひびき)は知っている。

 この友人はお人よしで――普段から他人の頼み事を引き受けたり、生徒会の役員でもないのに、その手伝いなどもしている。

 けれど、本当はただのお人好しなどではないのではない、とも思っている。

 彼は昔、家族を事故で喪っている。

 そこから抱え込んだ複雑な想いが、彼をそんな風にさせているのではないかと、感じていた。

 なんでこんな事になったんだろう?ただ、ふたりで普段のように帰り道に遊んでいただけなのに――山岡はそう強く思った。



 少女達をたっぷりと舐った吸血鬼は、いよいよ頃合いだと思った、

 その血を吸い、今夜の舞台を終わりにしよう。

 嗤う。

 あくまで――今夜の舞台だ。

 これからも夜な夜な魔法少女達を嬲り、血を吸い出していけば街は完全に自分達の物になるだろう。

 皆が恐怖に怯え、思考を放棄した家畜のようになる。

 そうなれば、自身達こそが悪でありながら正義のようにもなる。


 世界は反転する――正義と悪が。光と闇が。


 嗤う、嗤う。

 そのためには一部の人間の劣情に応えて、本当に犯しながら吸うのもいいかもしれない。

 最初は痛みしか感じないかもしれないが、やがてはそれを快楽として受け取り、物欲しさに懇願するように調教するのもいいかもしれない。

 さあ、さあ、愉悦はこれからだ。

 少し悩んでから黒いドレスの少女から血を吸う事を決めて、その首筋に顔を近づけようとした時だった。


 ――苦しげに昂ぶりの吐息を洩らしていた筈の、少女の目が見開かれたのは。


 その事に吸血鬼は激しく動揺した。

 何故だ。激しい刺激を与えたとはいえ、確かに気を失っていた筈。

 目覚めた少女――サヨ☆りんはそれだけでは終わらない。縛られていた筈の手を振る。

 しかもその手には――彼女の武器、不可思議な青白い刃があった。

 吸血鬼は慌てて、羽ばたき空へと飛ぶ。

 刃は僅かに掠り、空を切った。

 「外した――」

 サヨ☆りんが忌々しげに舌打ちする。それから、赤いドレスの少女、チズ☆るんに声を掛ける。

 「これだけ時間を掛けたんだから、流石にもう仕込みは終わったでしょうね?」

 「当たり前でしょう!」

 チズ☆るんもまた目を開ける。

 それからふたりは最初から拘束などされていなかったように、十字架を降りた。

 ビルの屋上に降りたふたりの表情には、先程までの凌辱されていた時の艶など無い。

 あるのはこの状況を見定め、終らす為の冷たい相貌の光。

 「さあ、終演にしましょう――」

 チズ☆るんが手を翳す。その片手には彼女の武器たる紅い刃。

 その事に不吉な予感を覚えて、コウモリ達がクモの子を散らすように離れようとするが遅かった。

 魔法少女のふたりには見えていた。

 このふざけた余興の為に、吸血鬼を護衛していたコウモリ達が空に奔る幾重もの赤い線の中にいるのが。

 「――紅蓮乙女(フレイムメイデン)

 チズ☆るんの声と共に、空が燃えた。

 赤い線を導火線とするかのように、炎が奔る。

 そうしてコウモリ達を炎が囲む様は籠、あるいは檻。

 炎の檻。

 まるで中世の拷問器具のように囲み、覆い、迫って炎は棘と化す。

 そのビルにいたコウモリ達の全てが焼き尽くされた。

 この事態に根城としていたビルから、捕らえた人々を監視していた残りのコウモリ達が救援に駆けつける。

 「もう遅いわ」

 その前にサヨ☆りんが現れて、手を翳して握る。

 「――呪力波動(グラビトンウェーブ)

 空気が震える。圧縮される空間。

 駆け付けたコウモリ達は、見えない壁に押し潰されるようにして消滅した。

 こうしてコウモリ達は全滅した――大元である吸血鬼を残して。


 これこそが魔法少女達の作戦でもあった。

 最初にサヨ☆りんが、目配せをした時から考えられていた二段構えの戦術。

 最初にサヨ☆りんが突撃に成功し大元が刈れれば、そのまま周囲のコウモリの達の殲滅戦を。

 失敗した場合は故意に捕まり、大元の場所を特定する。そこから得意とする魔法の分野、イメージの違いから、より広域を殲滅できるチズ☆るんが魔法を仕込むと同時に大元を刈り取る。その魔法を仕込む時間稼ぎは必要ではあったが。

 最初から魔法を乱発すれば殲滅できた可能性もあったが、それでは大元に脅威に取られ逃亡される場合もあるし消耗も激しい。それらも考慮した上での作戦。

 実際、吸血鬼がふざけた余興をしてくれたお陰で少々算段が狂ったが、概ね成功とも言える。


 これらの事が僅かな意思疎通だけで出来たのは、彼女達が同じ師の元で厳しい手ほどきを受け、互いの思考や実力をほぼ完全に把握しているからに他ならない。さらに、これまでの魔女として組んできた積み重ねもあるからだ。

 この【セカイ】の魔法はイメージだけで行える。その万能性は極めて高い。

 だから例え鎖で拘束されていようと、それは〝手がすり抜ける〟というイメージを投影する事で簡単に対処できた。

 しかし、それは普段から〝常識〟から外れた事を行うイメージと、それを素早く確実に想像するというトレーニングあっての事だ。また、そのイメージにも個性が得意、不得意がある。

 小夜は広域よりも刃を通した直接的な干渉能力に優れ、千鶴は炎を通した拡散的なイメージに優れていた。

 人は人である限り、心ですら万能ではないのだ。



 絶望から一転し、希望と賞賛の満ちる街の空から逃げるようにして吸血鬼は飛ぶ。逃げなくてはいけない。自分さえ生き残れば、また増える事はできる。


 身体は大火傷を負ったが、逃げ切る事さえできるのなら――


 「何処へ行くのかしら?」

 そこに魔法少女は――魔女達は現れる。

 前方を塞ぐのは黒いドレスの魔女。

 「いい加減、往生しなさい」

 後方へと飛び去ろうとするが、そこにいるのは赤いドレスの魔女。

 逃げ道など残されていなかった。

 吸血鬼は玉砕するが如く、黒いドレスの魔女に突撃する。

 夜の大きな月が浮かぶ空を駆ける。

 魔女たる小夜が刃を横薙ぎに構える。

 切り抜けの刹那に、青白い刃は月の光に煌めく。


 「魔法虚空斬(マジカルナイトスラッシュ)――」


 吸血鬼の翼は虚空に散った。


 こうして、街の安寧の夜は再び訪れた。


こんな、泥い戦術を使う魔法少女達。

容赦がありません。


まあ、それでも彼女達も女の子なので。その辺りは次回。

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