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虚空の【セカイ】と魔女 外伝  作者: 白河律
魔法少女マジカルサヨ☆りん
11/20

魔法少女の危機


     2


 今宵も夜は来る。

 光ある所に闇はある。闇がある所に光がある。

 どちらかだけでは世界は成り立つことは無い。


 ――陰陽たるが世界。


 昼が正しき世界なら、夜は悪たる世界なのだ。



 その夜も、街に怪物が出た。

 巨大なコウモリにも似たものが多数。

 コウモリ達は空から人を襲っては攫い、巨大な街のビルの屋上へと集めた。

 攫った人々の首筋に噛みつくと、僅かな血と共にそこから生体エネルギーともいうべきモノを吸い出した。

 それはコウモリ達が自身を増やす為の行為であった。

 エネルギーを吸われた人々は気を失い、倒れていく。

 この状況に人々は恐怖した。

 何故なら、それに抗う力が無いからである。

 警察も人々を避難する誘導を掛ける事しか出来なかった。

 街を絶望が襲う。

 人々は求めた――夜に輝く一筋の光を。

 この絶望を切り裂く希望を。


 しかし、その希望に成りうる存在はと言えば――魔女たる少女達は頭を抱えていた。


 よくもまあ、今回はこれだけ大事になりやがったなあ。


 実はこの事態、既に魔女を纏める組織が想定し、用意したものでは無かった。昨日のカニもそうであったが、この事態を造り出したのは他でもない人々自身でもあった。

 人々が日々抱える不満や怒り、悲しみ。それはあくまで個人のものであった。だから個人の記憶の刈り取りで済んでいたとも言える。

 だがこの事態には、これだけの大事には二つの要因が絡んでいた。

 ひとつ。人々が抱えていた昏い想いが怪人、怪物という〝形〟を得た事でそういったイメージで発露させる事になった為。これは昨日の情欲の形を取ったカニがそうである。

 ふたつ。それを退治する魔法少女の存在が知られ、人気を獲得した事でその活躍を望む人々が増えた事。


 要約するのであれば、知らずの内に怪人を生み出してしまったヒーローショーの観客達が、ヒーローの登場と活躍を望んだといった所である。


 みんなお祭り事好きね、少女達はただ冷静にそう思うだけであった。

 「君達の気持ちも分かるけど、今はこの事態を止めないと!」

 そんな少女達にアランポーは声を掛ける。

 やらなきゃダメか、少女達は諦めの溜息を吐いてから叫んだ。

 ヤケクソ気味に。


 「「魔法礼装変換(マジカルドレスアップ)――!」」


 その言葉と共に少女達はカラフルな情景に包まれ、身体のシルエットだけを露出させながら変身をする――リボンとフリルの付いた華やかな衣装に身を包んだ魔法少女へと。

 変身を遂げた少女達は互いの服装を見る。

 本当に露出が多い。

 まずは膝上のスカートの丈。この短さで空なんて飛んだら見えてしまう事は確実だが、考案者の千鶴母によれば絶対に見えない補正が掛かるらしく、事実ネットに上げられた画像や動画に映り込んだ事はない。

 その事に対する一部から寄せられた、失望のコメントに対しては忘れる事にした。

 次に開けた胸元――千鶴は小夜の胸元を見て、少し不機嫌になる。

 (コイツ、また大きくなってない?)

 昔はそんなに変わらなかったのに。大きければいいとは思わないが、なんとなくプライドが刺激される所ではあった。

 「何かあるの、千鶴?」

 「何にもないわよ!」

 意地で誤魔化した。


     ◇


 悲鳴、怒号、失望、恐怖――そんな人々の昏い想いが満る空に彼女達は現れた。


 「――身に纏う黒は怠惰の証、日々が面倒くさい、やる気無い。漆黒の魔法少女マジカルサヨ☆りん。ここに推参」


 空中でのひと回転の後で、右手を差出してポーズを決める。

 その動きはゆったりと、しかし崩さずに言葉と共に怠惰さと優雅さを示す。


 「――身に纏う紅は嫉妬の証、燃えろ、みんな燃えろ!紅蓮の魔法少女マジカルチズ☆るん。ここに参上!」


 こちらは右手で顔を覆った後で、サヨ☆りんと逆方向に一回転。最後に右手を払うように振る。その動きと言葉には力があった。



 「「おお――――!」」

 ふたりの魔法少女の登場に街からは希望の声が上がる。

 それは人々が待ちわびた者達だった。

 美しく、可憐で、強く、ミステリアスなヒロイン達。

 空に輝くふたつの光。

 だが、当の本人達は気恥しいばかりだった。この前口上や決めポーズ、当初はイメージ付けやインパクトの為に行っていたが、最近は定着してきたのでしない事も多かったからだ。


 今はそれよりも――少女達は意識を切り替える。

 ふたりを脅威と感じたコウモリ達が殺到する。


 「「心象刃(ソウルブレイド)――!」」


 少女達の手に不可思議な刃が現れる。

 サヨ☆りんは蒼白い三日月の鎌のような刃。

 チズ☆るんの手には血のように紅い日本刀のような曲刀。


 「「斬撃(スラッシュ)!」」


 刃を振るう少女達。

 彼女達に近づかんとするコウモリ達が切り裂かれて、地面に落ちていく。

 コウモリ達に斬撃は届いていないのにも関わらずである。

 見ている人々は勿論、切り裂かれているコウモリ達も知る術はないが、これは魔法のひとつ。

 刃を通じて斬撃を飛ばすイメージを形成する事で、攻撃の間合いを延長させているのだ。

 攻撃を受けて、次々とコウモリは倒されていく。


 しかし――なかなかその数が減る様子は無い。


 そのことで人々から焦りが生まれた。幾ら少女達が強くても多勢に無勢。持久戦に持ち込まれれば不利なのはどちらなのかは、目に見えている。

 何故、数が減らないのか?

 魔法少女達には目星が付いていた。

 恐らく人々が攫われたビルの屋上にこれらのコウモリの最初のオリジナル、最も力を持った存在がおり、ソイツが今もコウモリ達を増やしているのだ。逆に言えば大元であるコウモリを叩かねば、終る事の無い戦いとも言える。

 昨日、小夜と千鶴が別れて刈り取りしていたのは末端だった。その事で群れの中核である大元の存在は予知していたが、これ程の規模とは思っていなかった。


 問題は――この多勢に無勢を突破して大元まで辿り着けるか?


 サヨ☆りんがチズ☆るんに目配せをする。

 それに対してチズ☆るんは頷いた。


 「炎爆弾(フレイムボム)!」


 チズ☆るんが刃を持っていない方の手を掲げて意識を集中し、空間が爆発するイメージをする。

 すると、コウモリ達が飛んでいた一帯の空が爆発した。

 彼女達を包囲する一部のコウモリ達が焼け落ちる。

 その崩れた包囲網を縫って、サヨ☆りんが空を奔る。

 この隙に大元のいるビルまで、突破を図る計画であった。


 だが――


 後少し、後少しという所でコウモリ達の攻撃を、体当たりを受けるサヨ☆りん。

 「――っ!」

 それでも進もうとするが届かない。

 やがて力尽き意識を失い、空を堕ちる。

 そんな彼女をコウモリ達は攫う。

 「――小夜!」

 その事に気が付いたチズ☆るんが、救援に入ろうとする。

 その事で攻撃の手が緩んだ瞬間を、コウモリ達は見逃さない。

 チズ☆るんにも攻撃が押し寄せる。

 その事で彼女の抵抗空しく、気を失い捕まる。


 魔法少女達の――敗北の時であった。


 しかし、敗北した少女達の口元は歪んでいた。

 それに気が付く者はいなかった。


敗北の魔法少女達。

これがね、18禁作品だとね、だとね……酷い事になるね。うん。

どうなるかは、お楽しみに!

なんか違うか?

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