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かろてん。 - 過労死して異世界に転生したら魔族のお姫様になっていた。  作者: 瑠璃色はがね
第I部 - 第1章:王女バレンタイン
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#0009_これは魔法ですか?いいえ科学です_01

 転生から6年目。


 近年毎年色々やらかしては自分の仕事を増やしている俺だが、この年は本当にやらかしてしまった1年だった。


 この世界には魔法がある。

 ファンタジー万歳!いつかメドローアみたいなエグい魔法使えるようになって魔王らしく「それはメラゾーマではない、余のメラだ」とか言ってやるぜ!

 と、当初は意気込んで色々な魔術書を読み漁ったものだ。


 でだ。6歳にもなればそろそろメラの一つでも放てる様になるだろうと思っていた俺は、未だに魔法の魔の字も実現出来ないでいた。


「魔力ってなんなんだ……」


 魔法。とりわけ魔術を使うには魔力が必要である。

 これは鉄板の設定であり、ゲームでもMPとかSPとか必須のステータスである。

 RPGをやった事がある人ならば万国共通のシステムとさえいえる。

 でもさすがにこの世界はステータスウインドウが出現するみたいなお手軽便利設定チートワールドではない為、魔力というものに明確な指標がない。


 一応、魔術師であるアコナイトによれば魔力があるのは間違いないのだが、どうもその魔力を自発的に外に出力するセンスが俺にはないらしい。

 できる事は色々試してみたが、6歳になった現在でも魔法が使える気配は微塵も感じられなかった。

 色々と学んでいく内に突きつけられた方法が「考えるな、感じろ」というロジカルさ皆無の手段。

 いやいや俺ブルースリーじゃねぇんだからってなるでしょ。


「概念というか物理現象として、ふわっとしすぎてて全く糸口がつかめない……」


 自室で1人、魔術書を眺めながら今日もあれこれ試してみるものの、やはり何も起こってはくれないわけです。

 呪文か?呪文のせいか?と、黄昏よりも昏きものに等しく滅びを与えようぜって頼んでみたり、心の中に宇宙を感じられるか星座の軌道を描いてみたり、光の白刃放とうとしてみたり、かめはめってみたりしたけど、案の定どれも駄目だった。

 むしろサブカル知識のどれかが合致してしまったら、それはそれで色々な所からお叱りを受けそうなのでちょっとホッともしてる。


 一応魔術書に記述されている「ルーン」という魔法専用の言語?についてはある程度形状も意味も理解しているつもりなのだけれど、理解できていても行使はできていないのだ。

 例えば「火のルーン」が刻まれた炎の魔剣という「魔道具」なる物は既に存在しており、魔術への適正があれば魔力量に応じて剣に火を纏わせる事が出来るらしいが、なーんも起こりやしない。

 それこそ革の表面に火のルーンを描いて魔力を流し込めば子供でもポンっと簡単な火を起こす事が出来るのだが、なーんも起こりやしない。

 アコナイトにも「さすがにそれが出来ないとなると、適正が無いとしか……」と匙を投げられ気味である。


 この国において、魔術師とは奇跡を行使できる特殊技能を備えた専門家の事を示す。

 魔法というか魔術の行使には生まれながらのセンスが必要であり、たとえば剣術の様に反復練習で習慣化して鍛えられる物でもないと言われた。

 要するに、使える人は何もしてなくてもある日ポッと使える様になるし、使えない人はどれだけ頑張っても死ぬまで魔術は使えない。

 生まれながらの才能が全てを決めるって余りにも不公平じゃねぇか!と言いたくもなったんだけど、お姫様なんぞという環境の不平等の象徴みたいな立場に転生した自分がそれを口にするのは駄目だよなと、漏れそうになった愚痴は心の奥に閉じ込めた。


 ただ、魔力というものは世界中に溢れているし、人の中にも大なり小なり必ず存在はしている。

 それこそ空気の様に当たり前にそこらにも浮いてるのが魔力だそうで。


「異世界なのだから、生まれ持った才能イコール出来る事。という可能性だって確かにある」


 だが。そう、だがしかし。

 体内に限らず大気中にも溢れてるならば魔力とは何らかの物質であり、また魔術も何らかの物理現象によって発生しているのは間違いない。

 ならば、それを行使する方法論の一つがあの「ルーン」であって、そこには確実に「法則」が存在してしかるべきである。

 この世界の物理法則が適当に設計されていなければ、エネルギー保存則による等価交換は必ず起こっている。


「魔術を使う、ではなく、魔術が物理現象として発現する原因を探す……の方が可能性は高そうだな」


 自分の内にあるものに限定せず、大気に満ちているであろう魔力も含め、魔法というものがどういった方法論でこの世界に出現するのか。

 システム屋らしく、俺は魔法という物理現象の「ソース」が何かを探そうと頭を切り替える事にした。


 パッと見だと魔術は、何も無い虚空に火や水を出現させてる物理無視のビックリ超能力の様にも見える。

 だがさっきも言った様に、魔術には「魔力」という対価を支払って魔術師達はあの現象を起こしているのだ。

 つまり魔力という謎エネルギーをどうにかこうにかして魔術という物質へと変換している。


 これは立派な物理現象であり、物理現象ならば必ずそこには「質量とエネルギーの等価性」が存在しているはずだ。

 この世界が物理法則の全く異なる世界……というなら根底が覆ってしまうけど、少なくとも今日までの6年を振り返るに、その可能性は限りなく低い。


 重力や引力は当然ながら、慣性、発火現象などの基本現象において地球との差異はないと感じている。

 空気を多く送れば火は強まるし、空気を遮断すれば火は消える。水も冷やせば凍るし、陶器のカップに冷えた水を放置すれば結露する。

 アインシュタイン博士の理論を含めた地球の物理学が通じるなら、俺の前世の記憶から答えを探す事はきっとできるはず。

 だったら必ずどこかに答えはあるし、既に「ルーン」と「魔術師」いう手がかりは存在している。


 ならば俺がやるべき事は明白だ。


「トライアンドエラーはシステム屋の本懐。いっそ研究室みたいな部屋を父上に強請ってみるか」


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