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かろてん。 - 過労死して異世界に転生したら魔族のお姫様になっていた。  作者: 瑠璃色はがね
第I部 - 第0章:過労死して異世界へ
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#0005_そして異世界へ_04

 異世界に転生して最初に分かったのは「前世の記憶がある」事だった。


 ………………あれ?


 天使さん記憶なくなるって言ってなかった?

 ビックリするくらい残ってるんだけど?

 だって俺、自意識として『ヒラサカ イズミ』って名乗れちゃうよ!?


 まさか、お役所仕事定番の「ヒューマンエラー」か!

 終盤完全に天使さん「雑務」をこなす感じで話してたし、これ転生失敗したんじゃ?

 半端に効率化とか進めるからこうなるんだよ!

 元IT系の人間として神様達に物申す。

 半端なシステム革命ならやらないほうがマシだと!


 OK。とりあえず落ち着こう。


 こうなってくると、俺が本当に人間種に転生できたのかも怪しくなってきた。

 あの天使の事だから、間違えて結局バッタとかにされてる可能性もある。

 前世の自意識があるバッタとかもう、地獄どころの話じゃない。

 一応、正義の味方仮面バッターを目指す選択肢を再度出現させておかなければならない。


 俺はまず、人の身体である事を確認する為に手を動かしてみる。


 うむ、手のひらはある。

 指もある。

 よかった、虫系の手ではない!

 ちゃんとした人間の手だ! 五本指だ!


 だが、妙に重いというか、動かしにくい。

 少し気合を入れて動かそうと、力んでみる。

 お、動いたぞ! 俺の腕が動いた!

 当たり前だけど、こいつ動くぞ!


 前世の記憶である俺が感動していると、視界には1本の手のひらが映りこんでくる。

 それは、とても小さく、か細い、いわゆる赤ん坊の手だった。


 そりゃそうか。よく考えたら転生だったなこれ。

 天使さんも新生児からスタートって言ってたな。


 あれ……ちょっとまてよ? と言う事は、だ。


「おお、見て下さい! お嬢様が手を掲げられておりますぞ!」


 ………………


「まぁ、生まれたばかりだというのに! 将来が楽しみだわ!」


 周囲から聞こえてくる男女の声。

 ふと、俺の視界に一組の男女が映りこんだ。

 

 一人は、20代くらいの若い綺麗な女の人だ。

 白い肌に、雪の様な白い髪、紫色の瞳をした、まごう事なき美人。

 しいて違和感をいえば、頭にどうも「角」っぽいのが生えている事くらいだろうか。


 もう一人は、60代?はいってそうな初老の男性だ。

 こちらは、やや浅黒い肌に青みがかった銀髪で、綺麗な金色の瞳には横長の瞳孔があり、やはり頭に「角」っぽいものが生えている。

 というか間違いなく角だろう。

 羊と人間を足したらこんな感じだろうか。ちょっと怖い。


 天使が言っていた人型種の中に「魔人」というのがあったはずだ。

 多分俺はその魔人、要するに魔族っぽいのに生まれ変わったと思われる。


 結構いいんじゃないか? 魔族。

 まだわからないけど、もしかしたら羽と尻尾も生えていて、空も飛べるはず!

 おお、これはアタリかもしれない!


 などとワクワクしていると、女性の方が俺をそっと抱きかかえてくれる。

 豊満な胸に包まれながら、ハンモックのような揺らぎに心地よくなってしまう。

 多分この人が俺の母親なんだろう。

 美人で巨乳のママン、いいね! 悪くないスタートだね新人生!


 俺は母親に抱きかかえられた事で、視界が一気に開けることになった。

 ここはどうやら、彼女の寝室のようだ。

 周囲には大きな天蓋付きのベッドと、先ほどまで俺が入っていたであろう揺り篭? らしき物がみえる。

 チラチラと視界を動かしていくと、高級そうな内装に、高そうな調度品などが上品に飾ってあり、部屋自体も20畳くらいあるのかな? 相当に広い寝室だと思われる。


 おぉ……結構裕福な家の子に生まれ変わったらしい。

 天使、いい仕事したよ。疑って悪かったよ。

 前世の記憶がマルッと残ってる事については問いたいけど、不問に処すよ!

 少なくとも経済面においては前世をぶっちぎりで超えるスタートラインだ!


 魔族に生まれ変わった俺が天使の事など考えていて良いものなのかは分からないが。

 とりあえずはお礼を述べておこう。

 サンキューエンジェル。


 そんな事を思っていると、突如ばーん! と大きな音を立てて部屋の扉が開かれた。


「遅くなってすまない! おお、無事生まれたか! パパでちゅよー」


 なるほど、お前が親父か。


 ズカズカと歩み寄り、俺の頭を撫でながら言うのは、巨大な身体をした褐色の男性だ。

 年齢はイマイチ分からないが、母と同じく真っ白な髪に、燃えるような真っ赤な目をしている。

 ルビーよりも更に深く、それでいて濁りのない透き通った炎の様な真紅の瞳。


 いいねパパン、ビジュアルだけでいうとかなりカッコいいぞ!

 その遺伝子は転生前なら嫉妬するくらいに憎い!

 筋肉隆々なゴツいマッチョながら、漂う気配には何と言うか「騎士」を思わせる気品がある。

 どこぞの征服王に角生やしたみたいなダンディズムが溢れてる。

 ファンタジー世界だし、この部屋から考えても俺は貴族スタートかな?

 うむ。よきかなよきかな。


 どうやら、先ほどのご老人は執事か何かの様だ。

 抱き上げられて全身をみてみると、燕尾服っぽいものを身に着け、オカンの傍らで1歩下がって畏まった様子で佇んでいる。


 多分、俺の爺やになるんだろうな。

 言葉が話せるようになったらそう呼んであげよう。

 名前がセバスチャンとかベタな名前で無い事だけ祈りたい。


「わたしにも抱かせておくれ!」


「勢い余って殺さないでくださいよ!? ただでさえ馬鹿力なんですから」


 おっとそうなのか? 頼むぜマイファーザー。

 転生してすぐ父の手により死亡とか嫌だぞ?

 確かに「誰かに殺される立場」を選びはしたけれども、死ぬのはもうちょっと生きてからがいいよ?

 てか実の父にうっかりで殺されるとか悲しすぎて自縛霊まっしぐらだからな!?

 夫婦の寝室で毎晩枕元に立つ位には呪うよ?


「わかっておる、初の愛娘だぞ! 花を愛でるよりも優しく接するわい!」



 ………………………………


 

 いや、うん。

 さっきも無意識にスルーしたんだけど、もう無視はできないな。


 ちょいとパパさん。

 お前さん今なんて言った?


「本当に気をつけてくださいね、この子は将来この地を収める魔王になるんですから」


 へいへいママさーん。マイマザー?

 アンタも今、なんつったよ?


 魔王? パードゥン?


「この子は強くなるぞ。魔界最強の女王になるかもしれん。なんせ生まれたばかりだというのに、泣きもせぬ強き精神! 更にこの角……必ずや大物になってくれる事だろう!」


 いやまぁ、中身は30歳の成人なんだけどね?

 精神年齢だけなら既にかなりデカいのが内包されちゃってんだよね。

 その事実をいずれ知ってもガッカリしないでね?


「お二人の特徴を見事に受けついた、素晴らしき姫様でございます。さぞ強く凛々しい方になられる事でしょう」


 ………………へへっ。


 執事の言葉で、俺は現実逃避するのをやめる事にした。


 そう、俺は生まれ変わったのだ。

 魔界のお姫様。



 すなわち「女の子」に。



 あの巨乳天使いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!


プロローグ終わり。次から1章がはじまります。

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