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かろてん。 - 過労死して異世界に転生したら魔族のお姫様になっていた。  作者: 瑠璃色はがね
第I部 - 第0章:過労死して異世界へ
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#0003_そして異世界へ_02

「では、改めてご説明致します」


「ふぁい」


 顔面が腫れあがって、返事をするものちょっと辛い。


 天使さんに心の中でセクハラ三昧を決めていた俺は、心を読まれていた天使さんから「神罰」と言う名の「体罰」をしこたま浴びた。

 顔が変形するほどのビンタとか、昨今の日本だったらモンペやPTAが黙ってねぇぞこれ。

 もう後半ビンタっていうかデンプシー平手打ちみたいな勢いだったし。


 あ。いやなんでもないです話を続けて下さいごめんなさい。


 天使さんが怖い顔をしてコチラを見下ろしていたので、心の中で俺は詫びつつ進行を促す。

 でもこういうキツイ目をしても、この天使さん美人。


「美人といえば何でも許されるとか思わないでくださいね?」


 はい。


「ではまず、身元の確認を行います」


 はい。っていうかなんだその警察の取調べみたいな進行。

 天使もある意味、お上(神様)に仕える役人みたいなものなのだろうか?

 まぁその辺はどうでもいいか。

 しかし、声を出すのがちょっと億劫なので、心の声で応答すればいいのは楽だな。

 もしかしてそれがあるから遠慮なくビンタしたのでしょうか?


 まぁいいや、とりあえず話を進めてください。


「はぁ……お名前は『比良坂 ひらさかいずみ』さん。年齢は享年30歳。お間違いないですか?」


 間違いないです。


「一文字足すと「黄泉比良坂よもつひらさか」になるんですね」


 そうですけど、今その情報必要ですか?

 むしろここがまさにその黄泉比良坂なんじゃねぇの?って思うんですけど。


「いえ特に他意はありません。ただ気になったのでつい口に」


 左様ですか……俺が言えた義理じゃないですけど、天使さんうっかり口滑らして降格とかされないよう気をつけて下さいね。


「ご忠告ありがとうございます。本当に貴方にだけは言われたくないです」


 ぐうの音も出ませぬ。


 天使さんはため息交じりに手元の書類というか、どうみてもタブレットらしき機材を操作していく。

 ていうか、あの世に電子機器とかあるんだ。

 もっとこう、クラウド上のゴッドからオンラインでお告ファイルを脳内にダウンロードするみたいなシステムではないのね。


「昔はそうでしたが、世界に人が、天界にも天使が増えた事でより正確に、より効率的になる様、あの世も日々進化しているのです」


 日進月歩なのですよと、妙に得意気になる。

 個人的には、死後の世界という感動が薄れてしまうので、天界の産業革命みたいなのは知りたくなかった。

 でもシステム屋的な心は「いいですね効率化」とも感じている。

 この職業病、死んでも治らなかったなぁ。


 ひとまず、個人情報については間違いないです。


「では話を続けますね」


「はい」


 心なしか痛みが引いてきたので、俺はちゃんと口頭で答えることにした。

 そもそも死んだはずなのに感じるこの痛みとかって何なのだろう。

 まぁいいか。今それほど重要な事でもない。


「アナタには現在、選択肢があります」


「選択肢……ですか?」


 何かを選ばせてくれるらしい。

 死後に突きつけられるif文の先には果たしてどんな数値が放り込まれるのだろう。

 いやこの場合、死んで初期化、生前のカルマ的条件で選択肢が変化したりするかもしれないからfor文かな。

 

 ……やめよう。

 あの世に来てまでなんで条件分岐を脳内にめぐらせないといけないんだ。


 とりあえず選択肢をくれるって事は、ここで過去の罪云々から人生の点数を付けられて行き先決定。

 とかいうわけではないみたいだし、今はその事に安堵しておきたい。


「まぁ本来なら天使に不敬を働いた罪で速攻地獄送りなんですが」


「先ほどの事は心から謝りますので、脚でも虫でも糞でも何でも舐めますので」


「そんなに卑屈になられるとむしろ私が罪の意識を感じてきますね……日本人のDOGEZA凄いなぁ」


 ドン引きしているのか感心しているかはわからないが、とりあえず地獄行きだけは許してもらえそうだ。

 日本人でよかった。


 ここで「罪の意識を感じているならオッパイを1揉み」などという愚行は繰り返さない。

 俺はちゃんと学習する男なのだ。

 同じミスは二度と繰り返さない。


「それを心に思いもしなければ完璧だと思いますよ?」


「しまった! 罠か!?」


「もういいです、先に進めます」


「はい……」


 とうとう天使さんが完全なお役所対応へと切り替わった。

 塩対応どころではない岩塩ばりのガッチガチなシステム応答である。

 まぁ変に感情的になられるよりは、このほうが有難い。

 変に親身になられたりすると、この人に恋をしてしまいそうだ。

 俺はチョロいからな!



 で。天使さんの説明によると、俺に与えられた選択肢というのは以下の4択らしい。



 ---------------



①:このまま天国を通り、来世に輪廻転生する。

 転生先は選べずランダムで何処かの新生児になる。時代も結構未来(50年後とか)での転生。

 ただ、現状の俺では「良くて人間、最悪は猫か犬」になる。

 この辺は生前に成した事の量、要するに積み上げた徳の数によるらしい。

 大体は殺人など悪事を働かず、80歳まで普通に生きれば人間への転生が保障されるそうで。

 何かこう、年金の説明を聞いてるみたい。



②:転生をせずに、輪廻そのものから消滅する。

 人によっては「転生したってどうせまた同じ様な人生だうわぁぁぁん!」と駄々をこねて、転生を嫌がり天国に居座ろうとする人が近年は多いそうだ。

 その為、自主的な消滅という選択肢が新たに西暦2000年くらいから施行されたらしい。

 ちなみにコレを選ぶと事実上の消滅なので、もうその後に何らかの措置は一切とれない。



③:地獄体験ツアーの後に転生。

 ツアー化とか商魂逞しいなあの世。

 と思ったがそういうわけではなく、なんでも生前の悪い行いの量次第ではゴキブリへの転生とかもありえるらしく、少子化が進む日本では人口減少を抑える一環として人に転生できる範囲まで「罪を洗い流すサービス」をやっているのだと。

 1年ほどかけて一通りの地獄を体験する事で人間への転生は保障されるらしく、案外このコースは人気があるそう。

 天使さん的におススメらしいが何か私怨まじってね? とは思う。



④:異世界への転生。

 マジであんの!? と思わず声をあげてしまったが一応存在するらしい。

 異世界実在するのか!と感動していたが、どうやら「異世界の何」に転生するかはランダム。

 最悪の場合「異世界のバッタ」とかになるらしく、意外と人気が無い。

 まぁね。異世界転生キター! と喜んで転生したら「バッタでした」はかなりハードモード。

 チート能力のサービスがあっても、たどり着けるのはバッタ人間くらいじゃね?

 いやでもそれはある意味異世界でバッタのヒーローとかやれそうで少し憧れもある。

 正義の味方、仮面バッター。


 うん。無しだな。

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