表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃墟漁りの探索者達  作者: リュート
3/3

通称『空飛ぶ吟遊DJ』

「ただのシステム音、いらない。ボイスメモは確保、ホームビデオ……? ポルノビデオか、これも確保。んー……他はゴミデータばっかかな?」


 廃墟に埋もれていた個人情報端末からデータをサルベージする。

 ボイスメモの類は当時を知る資料として取得した座標のデータとセットで『管理局』がそれなりの値段で買い取ってくれる。ポルノ映像の類も娯楽の少ないこの時代ではそれなりの値段で売れる。こんなの誰が見るんだよっていうようなエグい奴の方が高く売れるんだけど、今回のは割と普通っぽかったのでそんなに高くないだろう。

 残念ながらこの端末には私が目的としている音楽データの類は無かった。残念。

 一応当時の書類データとしてよく使われていた拡張子のデータも一通り浚ってコピーする。

 そこで私の腕からピピッとという電子音が鳴った。タイムリミットのようだ。


「収穫はそれなりかな」


 回収したデータの他に食料や医薬品も見つかった。武器弾薬の類は見つからなかったけれど、戦果は上々と言えるだろう。いや、別に今回は戦ってないけど。

 荷物をまとめて廃墟を抜け出す。廃墟とは言ってもそんなに大規模なものでもないので、警戒しながらでも二十分足らずで脱出できた。まだ全てを探索しきってはいないので、放送の後にもう一度潜ろう。街から離れているから同業者に先を越される心配もあまり無さそうだし。


☆★☆

「はぁい、みんなのエンジェル『空飛ぶ吟遊DJ』ことレイレイです。今日は新暦314年3月17日、皆さんどうお過ごしですか? 私は今しがた廃墟漁りから戻ってきました。収穫はそこそこかな? やろーどもの大好きなポルノビデオも拾ったよー。そのうち管理局経由で出回るだろうからバンバン買って思う存分シコって私の資金源になってねー。今日の最初のナンバーのタイトルは不明、多分旧世界のアニメの主題歌か何か。割とかっこいい系で最近私のお気に入りを流していくよー。ではどうぞー」


 私の愛車から電波に乗って旧世界の音楽が流れ始める。私が言ったように多分旧世界のアニメの主題歌か何か、だと思う。曲のタイトルも由来も遺失してしまっているので仕方ない。

 漁ってきた保存食糧のパッケージを開き、その中身を貪る。現在流通している一般的な合成食品よりも遥かに味が良いのは流石旧世界産と言ったところだろうか。この豆や肉、野菜のようにしか見えないものがプランクトンから合成されたとは到底思えない。

 現行品は安いのは良いんだけど、材料がちょっとねぇ……普段食わないようなゲテモノクリーチャーが原材料ならまだ可愛い。たまに人間とか亜人の死体を原材料にしてるのが出回ることがあるから怖いんだよね。

 前に食わされた後に聞かされて吐いたね。あとついでにそいつをぶん殴ったね。

 確かに死んじゃえば人間も動物もクリーチャーも等しくタンパク質の塊なんだろうけどさ。なんというかそこに抵抗を無くしちゃったら色々終わると思うんだよ。

 これでこの旧世界の合成食品も材料が人間の死体とかだったら笑えるけどね! まぁパッケージにはプランクトン100%って書いてるし信じておこう。


☆★☆

「はーい、次はお便りのコーナーです。受信したメッセージを簡単に紹介していくよーじゃあ一つ目、えーと『レイレイたんはぁはぁ、今日もレイレイたんのサルベージしてきたポルノで抜いてます。今度一発ヤらせてください』うん、私が持ってない音楽データを十本くらい持ってきてくれたら考えようかなー? 一個でも重複データがあったら額に新しいケツの穴を空けてあげるからよろしく!」


 目ぼしいもののサルベージを終えた私は愛車を転がしながらラジオ放送を続ける。この辺りの旧世界の高速道路は未だ健在で、定期的にメンテナンスマシンが巡回して走行するのにベストなコンディションを保ってくれている。

 よって、私を始めとして乗り物持ちの人々がよく利用するのだが――それを狙った賊も結構な頻度で出る。たまには安全で優雅な旅をしたいものだが、残念ながら前方にバリケードが築かれているのが見えてきた。銃で武装した賊らしき人影もある。


「ったくめんどくさいなぁ」


 折角気分良く放送をしていたところにこれだ。文句が出るのも仕方ないだろう。選択肢としてはいくつかある。

 一つ、バリケードを迂回する。

 高速道路から外れて大きく迂回するという案だが、これは妙案に思えて一番の悪手だ。相手もそれを見越して車両をスタックさせるために穴の十や二十は掘っているだろう。車が動かなくなったらあとはじわじわ嬲られるだけだ。

 二つ、正面突破。

 実は迂回よりもマシな手だ。このご時勢、旅をする車両は当然のように分厚い正面装甲を施していることが多い。この車だってそうだ。

 それにメンテナンスマシンが巡回している高速道路ではあまり手の込んだバリケードは作れない。何故ならメンテナンスマシンに排除されてしまうからだ。

 旧世界の高速道路のメンテナンスマシンは反体制勢力によるインフラ破壊に備えて偏執的なほどの重武装を備えている。ぶっちゃけ抵抗しようものなら文字通り光の速度で抹殺される。多段レーザー砲で。

 なので意外とああいうバリケードというものは見た目以上に脆いことが多い。とは言えリスクは迂回するよりも幾分マシという程度だ。

 私の場合は? 第三の選択肢を取る。まぁプランBの変形みたいなものだけど。

 私はアクセルをべた踏みで踏み込み、愛車の速度を上げる。賊らしき人影はぎょっとした様子で武器を構え始めた。

 激突まであと三秒、というところで私はハンドル横のレバーを引く。


「ひゃーっ! あいきゃんふらーいっ!」


 愛車に備え付けられた半重力ユニットが全力稼動すると同時にロケットブースターが点火、一気に高度を上げると同時に慣性が働いて一気にバリケードを飛び越える。

 ガクン、と口をアホみたいに開いた賊どもの顔がおかしくて笑える。


「『空飛ぶ吟遊DJ』舐めんな! くたばれファッキンバンデッド!」


 テンションが上がってついつい口汚い言葉が出てしまう。いけないいけない。

 徐々に半重力ユニットの出力を下げて再び高速道路に着地。スキール音を響かせながらアスファルトの路面を掴み、再び愛車は母なる大地を走り始める。


「さぁ、私の行く手を阻んだバンデッドどもの頭上をひとっとびした所で次のナンバーは何にしようかな。えーと、意外と人気の高いオールド・クラシック音楽で行こう!」


 電波に乗って今度は管弦楽団による重厚かつ繊細な音楽が流れ始める。

 意外と落ち着く、食後に昼寝するのに良い、などとそこそこ評判のナンバーだ。これがまた旧世界ではありがたがられていたのか、意外と残っているデータが多い。

 問題は、私が自身が聞いてもどれがどれだか聞き分けられないことだったりする。これなんて名前の曲だったっけなー?

腰が、腰がぁ……_(:3」∠)_(死

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ