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WAR IN THE SPACE~Called Blood Dead Rain~  作者: 天瀬 はじめ
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 時は1970年代。アメリカ合衆国とソビエト連邦の間には第二次世界大戦以来のとげとげしい傷のようなものが残っていた。そこで激しく競われたのは宇宙へ飛び出すためのシャトルの打ち上げ合いだった。中には、発射直前に爆発する悲劇も生まれていた。


さらに経済面においても、火花を散らし合うようになっていた。時としてその間に中国が介入することもあれば、長き孤独から解放されて新たなる一歩を踏み出そうとしていた古き頭の国・日本も先進国の一国と呼ばれるようになっており、間に挟まれるようにも


なってきていた。

 1980年代。それは国と国とがぶつかり合う小規模な戦争が中東では起きていた。そこでは歴史では記されることない影の戦争。つまりアメリカ合衆国とソビエト連邦の戦争が起きてもいた。

 両者は長くの間睨み合っていた。

 だが実際にはけちのつけあい同然のような事も起きていた。しかしそれも表面上の事。着実に戦いの場は宇宙へと移ろうとしていた。

 1990年代、ソビエト連邦の崩壊。ドイツの統一。

 日本では阪神大震災、地下鉄サリン事件。

 2000年代、9・11テロとの戦い。

 2010年代、東日本大震災……

 時計をどれだけ進めても戦いの舞台は辛うじて宇宙に求められる事はなく、人々はどんな苦難や災害に遭おうともしぶとく生きようとしていた。

 だが一瞬にしてその願いにも祈りにも似た仮初めの平和は握り潰される事となる。


 2024年8の月。人類の半数はたった一本の兵器『インドラ』により死滅した。

 以来、世界は宇宙革命軍・ファナリアリア=ザーグによって掌握される事となり人々は何事にも恐れを抱きながら生きる事となった。

 だがその事態を誰も想定、危惧していなかった訳ではない。

「発射よぉぉぉい!

 ……てぇい!」

 翌2025年6月、秘密裏に動いていた地球連邦および軍はファナリアリア=ザーグに宣戦布告する。人々はそれを第一次宇宙戦争と呼んだ。

 英雄のいない戦争。

 そもそもそれが引き起こされなければならなかった理由は何だったのか。今その問いに対して明確に答えられる人物は一人しかいない。

 気づけば珍しく背広を着ていた彼女の背中には銃口が向けられていた。

 戦争が始まる三カ月前。とある研究施設にて。

「大人しく手を上げて頂けますか? 湯上谷さん」

「あつぬ…… 随分な歓迎のされ様ね。私の提唱する技術に少しは興味を持った……

 という訳ではどうもなさそうね」

 その悪魔とも絶望とも呼べる兵器の元を造った人物。

 計画の発案者ともされる一人の女性。

 政府の上層部の者も極秘資料を手渡されて初めて知った事が多く、まだ信憑性に欠ける部分が多々あったが妖艶な笑みを見るだけで十分だった。

「湯上谷 冴子。

 貴方を国家機密法第一条の違反者として拘束させて頂きます。

 異論は?」

「……別にない、わ。

 どうせあなた達TIKSの裏側にいるのはどうせ林首相の坊っちゃんなんでしょ。とりあえずは一旦従うわ」

 日本最高機密国防機関。TIKSティクス

 特に名前には何の意味も由来もなかったが、機関自体は彼女にとって壮大な計画の中の一コンテンツに過ぎなかった。

 ただその力は年々少しずつ蓄えられ彼女は当然の如く影の中心人物となりそれを操っていた。

 戦うための知恵と力は秘密裏に政府へと提供されていった。

 しかしその思惑とは反対軸に事を仕掛けられたのは想定内の想定外の事でもあったし、目の前でまざまざと見せられたその残虐とも呼べる成果は自ら警鐘を鳴らそうとしていた出来事そのもので冴子は苦笑する以外なかった。

 情報が何者かによってリークされ誤った方向で発展させられ爆発させた。と考えるのが正しく、この出来事によって真っ先に疑われるのは自分だという事も自覚していた。

 微笑んでいたのは全てが誰かによって弾かれた計算によるもの。

 それに対する賞賛以外の何者でもない。

「厚沼さん。わかってると思いますけどいろいろとお願いしますよ」

「わかっている。黙って前を歩いてくれ。

 本当はこんな事はしたくなかったんだ」

「それを聴けただけでも十分です」

 湯上谷 冴子は誰が見てるかも知れぬ虚空をきっと睨んで、弟達に想いを馳せた。

「ここまで結構苦労してるんだから後は頼んだわよ」

 危険な存在は排除される。それはどの時代においても変わる事はない。

 かくして政府は難なく宇宙用戦闘飛行機を手にする事となる。


 さらにその三年前、まだ日本という国があった頃。

 新島 浩司、高岡 久の両名は自衛隊空軍第一飛行部隊に配属され、秘密裏に宇宙機用のトレーニングを積まされていた。

 それがどういった意味や趣旨があるか知らされないまま。

「なあ、上は一体何を考えてるんだろうな?金銭的な問題で止むに止まれぬ事情で何か仕掛けたい…… んだろうか。

 決してこの国がかつての大戦で犯した罪が精算されていないというのも理解した上で」

「さあな。そんなの知るか。

 俺たちに与えられた任務。それはいつか出来るだろう宇宙機をまず安全に飛ばす事だ。

 集中しろ。脳味噌筋肉馬鹿」

「高岡さん…… もうちょっと言い方ってモンがあるでしょ。

 ま、いいや。喧嘩してもしょうがねえし飯でも食おうぜ」

「おう」

 二人がこれから所属するTIKS日本国宇宙機搭乗員養成学校は今、住んでいる宮城から遠く遠く離れた鹿児島にある。

 そのため今まで居があった寮からもすべて荷物を運び出し、あとは明日の出発を待つだけとなっていた。

 夕方には盛大に送別会が開かれどんちゃん騒ぎ。

 それでも寝付けなかった二人は何故か誰もいないはずの食堂へと足を運んでいた。

「あれ? おばちゃん。まだ寝てなかったの?」

「いや、さ。お前んとこの世代の秀才と一番の問題児が離れるとなるとちょっと淋しい気もしてね。ひょっとしたらひょっこり来るんじゃねかと思って……」

「おばちゃん、サイコーだぜ!アンタ」

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